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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ガダラの豚

オウム事件の直後に、それに絡めて
宗教書を友人に紹介したことがあった。その一節より。

中島らもの真面目な?長編小説「ガダラの豚」は、エッセイで発揮されている彼の広い知識が活かされた傑作。超能力というものを巡る人間の営みを皮肉な眼で見つめた作品である。TV局の超能力番組に、文化人類学者、元手品師、自称天才エスパーなどが集まる。彼らはインチキの信仰宗教などに関わりつつ、取材の為にアフリカへわたる。そこで彼らは盲目の「大呪術師」に会うが、彼は「牛を空から降らすには、ヘリコプターを使えばいい」などと言い、いんちきか本物かさっぱり判らない。しかし取材陣はある事件で彼の実力を知り、命からがら逃げ帰るが、TV局はなんと彼を番組に招待するのだ・・・途中から、これ、ホラーじゃん!とわかるのだが、アフリカの呪術師の不気味な力がその風土の描写と共に迫真をもって迫ってくる。それは、アフリカの社会がその「魔法」を社会の中に組み込んでいる、その体制から日本の高度情報化社会というもう一つの体制への挑戦であるのだ。(おお、我ながら鋭い)
元奇術師が、前半ではインチキ宗教をあばく頼もしい存在でありながら、後半は頭の硬い頑固者に、自称エスパーがその逆になるところが象徴的である。中島が間に挟むギャグや雑学が息抜きとなって、その分恐怖が倍増する怖い怖い小説。