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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

9.5ゴッチ追悼大会、前田吉朗がフランス戦士と対戦

http://www.pancrase.co.jp/tour/2007/0905/index.html

……ホアン・ジュカオ・カルネイロがブライアン・ラフィーク(ジュカオ・アシル・チーム/bodog)に続き自信を持って送り込んできたフランスの若きグラップラー、ジョニー・フラシェ。
(略)

前田吉朗のヨーロッパ制圧・第二章開幕!

アジアからのヨーロッパ制圧。
モンゴルがワールシュタット会戦で欧州キリスト教連合軍を撃破し、オスマントルコのスレイマン大帝がウィーンを包囲して以来ということになるなあ。ならんならん。
というか武士道で前田はアメリカに制圧されちゃってないか、とかは言ってはイケナイ(笑)

まあ前田、北岡悟川村亮と現有勢力で最大限のものが投入されて、カール・ゴッチ追悼興行としてはまあまあの陣容になった。ゴッチゆかりの鈴木みのるが挨拶なりなんなりで来場してもらえるなら尚よい。

しかし、フランス(というか欧州大陸)のMMA界はやっぱり規制とか何とかであまり大きな渦にはならないようだ。オマー・ブイシュとかを北欧から呼んだ時もよくこんなの見つけたな、と思ったが、こういう形でMMA発展途上国に種をまき続ければ。

ある出版関係者にライトノベルやSFのことで雑談した

先日、タイトルにあるように、出版とか本の流通に携わる同世代の人と食事して、いろいろと雑談した。
この人は仕事がらみで毎回ライトノベルを読まなきゃならないという、うらやましいんだかうらやましくないんだかのポジションにいる。
この人から聞いた、周辺事情。

一人の超大物作家の著作権が今年9月消滅!

だれかというとこの人。世界SFの父、H・G・ウエルズ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/H%E3%83%BBG%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%BA

一般的には50年で切れるけど、日本はたしか太平洋戦争中の権利停止期間がどうのこうのといろいろあるらしく、今年9月に著作権終了となるらしい。

あ、だからこの前ハリウッドで「宇宙戦争」が映画化されたのかしら。
前もちょっと書いたけど、このウエルズのおっさん
・宇宙人の地球侵略
・透明人間
マッドサイエンティストが作った改造人間
・星と星との衝突
・タイムマシン
異世界に通じた扉

などなどのSF界の「基礎工事」をライバルのヴェルヌとともにほぼ作っちゃった人。
もしタイムマシンとか地球侵略というアイデア自体にも権利が認められ、一回につき一セントもらっていたらウエルズの一族はアラブの王様より金持ちになっていただろう(笑)。

このへんの傑作は間違いなく面白さが現役で、これが今の時代に合わせた分かりやすい翻訳がたぶんいくつも出るだろうと思うとうれしい話だ。
フェビアン協会にも所属した、社会・文明評論家としての仕事も再度紹介されるだろう。

補足・ブックマークコメントで「消滅は来年元日からです」「いや、もう消滅してるかも」などの議論を頂いています。あとで調べないといけないかな。ただ、会話の相手は取り合えず知る立場にはいるので、少なくとも「一部業界内では、9月に消滅するという前提で動いている」ことは事実


外国での人気漫画は、日本独自の風習も内輪受けもものともしない、という話。

これは会話体で。話した相手は翻訳権のいろいろにも詳しい。
アメリカではたいてい日本の人気漫画は訳されているな」
「ほうほう」
「『あずまんが大王』とか」
「ああ、よつばと!の評価が高いのは知っている。その作者のってことで興味を引いたんだろう」
(註:http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060730#p2
経由で
http://d.hatena.ne.jp/ceena/searchdiary?word=%a4%e8%a4%c4%a4%d0%a4%c8
などを参照)

「いや、その逆。まず、あずまんがが人気で、その作者のだってよつばとが紹介された」
「んな、あほな。だってあれが外国で通じるとは・・・」
「つっても、事実なんだからしょうがない。相当に受けたんだぞ」

アメリカ人、あなどりがたし。

ライトノベルの現在に関して

まず、ライトノベルってものも、今外国への翻訳がだいぶされ始めているそうだ。
どう翻訳するのかな、と思って聞くと、「●●みたいな」とかで文章に出てくる(日本でなら通じる)固有名詞にはかなりびっちり註をつけるらしい(笑)。それは大変だらうな。



ここからは後で詳しくエントリを書きたいので議論の展開は大幅に飛ばしますが、要は自分はこういうことを言ったのだ。

「自分は銀英伝とかまでなら分かるが、年代的に、今のライトノベルを読み続けて、銀英伝に匹敵するような面白い作品を見つけるような体力はもはや無い。
だからといって『今のライトノベルは一読にも値しないクズ本』とか言い出すのは知的退廃。
おそらく、数学的にもこれだけたくさんの書籍が出るなら、SF史や文学史に残るような傑作は一定の割合で出続けているのではないか。それを知らないだけだろう」


職業的にライトノベルにかかわっている相手は「然り」と賛同してくれた。
問題は、その傑作が非ライトノベルな人々・・・「世間」にどう浸透していくかだ。総合格闘技やプロレス人気に通じるし、アントニオ猪木が「環状線の外側に届けなきゃいけない」とも力説していたね。
日経のようなお堅いところが年に一回、紹介ムックを作っているのはいいかと思う。つーか私もそれを拾い読みするぐらいしか情報源はない。もう現役の人とは5周遅れ10周遅れだが、逆にそういう場所での情報の受け止め方は、詳しい人から見ると何かの分析のタネになるかも。


でその、情報不毛地帯が受信した情報とは。

「なんでも、今は図書館がテーマのライトノベルが人気らしいな。戦乱の国家の中で、各地の図書館は武装勢力の拠点にそれぞれなっている、そこで残された人類の英知をめぐって、奪い合いが・・・」
「いや・・・図書館が舞台のライトノベルはたしかに人気だが、話の筋はまるで違うぞ」


図書館戦争

図書館戦争

というのだそうです。ファンの皆様、大変失礼しました。
ウィキペディアでもフォローします。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E6%88%A6%E4%BA%89

なんと内容は私の予想を超えてはるかにラディカルで、敵役はあんた、「言葉狩り」を戯画化したような組織だというではないですか。それはすごい、読んでみなければと心動かされました。


そして思い出したのが、評伝も大きな賞を受賞して最注目されている、星新一

白い服の男 (新潮文庫)

白い服の男 (新潮文庫)

です。表題作は、言葉狩り・・・いわゆる人権や平和、良識の側から悪の表現を規制する、ということの逆説的な恐怖を描いた先駆的な作品といえるでしょう。
こちらの側も、図書館戦争を読もうと思ってますから、逆に今、このシリーズに熱中する現役ライトノベル世代も、逆にこの星新一の寓話を手にとってほしいものです。相互交流は双方を豊かにするはず。


あとね、私はこういう・・・なんとジャンル名をつけていいのかわからんが、
「文化、記録を後世に残そうと努力する人が、文化抹殺をもくろむ敵や権力と戦う(物理的に闘うというのとはまた違うよ)」という話が好きなんだ。
これについては二回書いている。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050727#p5

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070701#p4


スピンオフ、シェアワールドについて

ライトノベルでは世代的に一番良く分かる、前述の田中芳樹について、相変わらず遅筆だとか、このまえはてなダイアリーで「10分で分かる銀英伝」が評判になった( http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070817#p5 参照)こと、アルスラーン戦記の続刊が出たときの業界の反応、なんで文庫からノベルスになったか、角川書店とは・・・などなどについて盛り上がったのだが、あの「灼熱の竜騎兵」を敵前逃亡して若手に請け負わせるという暴挙についても話が及んだ。

彼は「でもシェアワールドなんだからかまわんのでは?」
そっから、ひとつの世界観のもとでいろんな作家が分担して書く話や、一人の作家の書いた別の作品が、実は同じ世界観で通じていた、という作品の話になった。
自分はこういう遊びは好きだからね。


で、何が元祖なんだろう(伝統の神話伝説的なものは除き、個人が意図的に作った世界観)、ということになって、クトゥルー神話だろうか「ハインライン未来史」だろうか、日本の漫画ではやっぱり松本零士だろうか、なんて話題になったが結局は不明である(だれかご存知の方がいたらご教示を)

それでですね。
「今そういうシェアワールド(この用語にはあまり馴染めないなあ。分かりやすいからいいか)は、何かあるかね」

「厳密なシェアワールドとは違うが・・・あるひとつの事件、事象を別の視点から書いて、しかも別の雑誌で同時進行させるということをやっている作家がいる」

「おお、それが成功するかはともかく試み自体はすごいな。何というんだ」
「それはXXXXXXXXXという」


・・・・・・・・・・・すまん、聞いたのだが作者とタイトル忘れた。
後日の宿題ということで。
なんでも、片方はとある国の公安警察の視点から、もう片方は…軍だっけか?刑事警察だったか?外務省だったか?公安のほうはインパクトが強いので覚えていたのだが。


なんにせよ、これはけっこう必然性のある同時進行だと感心した。
ひとつの事件の時、公安と他の組織がまったく違うアプローチでその全貌を究明していき、その結果協力して大きな成果を生むこともあれば、最後は決定的に利害や今後のあるべき姿が対立し、深刻な事態に陥ることもある。

やっぱり、若い世代にもちゃんと才能は生まれているのだなあ、と感じたのでありました。



おしまい