−−本日はお時間割いていただき、有り難うございました。よろしくお願いします
「おう、何でも聞いてくれや。俺も何でも答えるからよ。ついでに何でも注文するからな、ガハハハハ! お前もまずはビールだろ?それとも焼酎いくか?」
−−いえ、仕事ですので。
「こっちも仕事だよ!!酒飲むという、一番の仕事をしてるんじゃねーか。わたしゃプロの酒飲みですよ。酒・時々、ウルトラマンのとこでファイトのアルバイト。ガハハ」
−−は、はあ。今回はその、ウルトラマンで大活躍したころから、その後のことまでいろいろとお伺いしたいのですが。何しろレッドキングさんは、ウルトラ怪獣の第一人者として、バルタン星人らをも超えた初代ウルトラマンの圧倒的なライバルでした。その存在感の秘密をお伺いしたいと思います。
「ほらほらほら、舌を動かすときは潤滑油が必要」(ジョッキを聞き手に押し付ける)
−−じゃ、じゃあちょっとだけ頂きます。んぐんぐ。
「遠慮するなよ、お前のおごりだ。ガッハハハハハ!」
−−ぷはっ。え、えーとですね。まず生い立ちというか、デビューの話なんですが、最初にウルトラマンと戦った多々良島がお生まれの場所ですか?
「おおよ、いいところだろ?うちの何代か前が、鉱山の仕事の募集であそこに住み着いたらしいんだがな」
−−多々良島・・・すなわち「たたら」、製鉄の島でしたね。同時に怪獣があちこちから流れ着く島・・・。レッドキングさんは、あの島で「たたら」、製鉄の神として、伝説の怪獣レスラー「ヤマタノオロチ」が活躍してたという話を知っていますか?
「そりゃ、あの島でしらねぇやつはいねえさ。おれたちゃヤマタじいさん、って呼んでたがね。小さいころは映画やテレビを見る代わりに、、あのジジイの昔の自慢話を聞いて育ったもんさ。」
−−へえ!どんな昔話をしていたんですか?
「『俺は強すぎて、ベビーフェイスのスターにジョブするにも普通にファイトしたら不自然になる。だから酒を飲みすぎて寝ているときにやられた、という”クイック”のフィニッシュを考え出したんだぜ』とか言ってたな」
−−あっ、そういえば・・・。
「『クサナギっていうタイトルとチャンピオン・ベルトも、俺の考案で、その後何千年も王者が続いている。また、ベルトとは別にそのリングネームを受け継ぐやつもいるが、こいつらは『酒を飲みすぎて酔い潰れる』というキャラクターまで俺のコピーをしているぜ』とかも自慢してたなあ。」
−−は、はあ。私もちょっと聞いたことがあるような気がします。
「まあ、あのジジイも本当に酔っ払いでな。あの年になっても時々酔い潰れては路上で脱皮して『脱皮して何が悪い!』とか言って島の駐在を困らせてたな。一緒に飲んでも、俺も手を焼いたもんだぜ」
−−「一緒に飲んで」・・・あれっ?ヤマタノオロチさんの話を聞いてたのって子どものころじゃないんですか?
「ん?そうだけど(普通に)」
(インタビュアー註 ヤマタノオロチと「たたら」の関係はこちらの資料をご覧ください
http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/nnp020602.htm
http://www.dobuita.org/denki_0101.html
−−・・・とりあえず、スルーして先に行きます。で、とにかく島には怪獣もたくさんいて、そこではヤマタノオロチさんの伝統もあってプロレスがさかん。ローカル団体が複数あって、そこでウルトラ出演以前にも大暴れしたと資料にはあります。
「まあ、ローカル団体っていってもよ、大抵はそれこそマジにアルバイトとお祭りをかねてたようなもんだぜ。俺はぞのころ本業は、鉱山の採掘夫よ」
−−プロレスは、家族の生活を助けるために?
「てな大層なもんじゃねえけどな。俺はお前、このとおりのカラダだから穴掘り石堀りの仕事も人の何倍もできたさ。ただ親父がバクチでこさえた借金が多くてな。まぁプロレスっていっても、半分はそういう鉱山夫の集まっての、トーナメントの賞金総取り試合よ。おれはそっちの方に主に出てたんだな」
−−重要な話としてその点を再確認したいんですが、この島ではプロレスのほか、そういう怪獣トーナメントがあったんですね?その試合の、何と言うか、性質についてなんですが
「あ、その例のアレ聞きたいわけね。ならそう言やあいいのに。トーナメントのほうはガチだよ(あっさり)。おれはそっちのほうがずっと好きだった」
−−シュート志向ですか・・・その理由を伺っていいですか?
「だってよお、あんな本職のプロレスのほうの、あっちは最初やられて何分後にそっちが逆転して・・・とかよ、あんなの覚えるの面倒くせえじゃんか。ガチなら目の前に立ってるやつ、そのままぶん殴りゃあいいんだからよ。だからチャンドラーとの試合もそうやったんだよな」
−−その話の前にお聞きしたいのですが、ファンの間でいまだに謎となっていることがあります・・・。レッドキングさんは、別に体の色は赤くないのに、なぜ「レッドキング」なのか。この長年の謎の真相を、ご本人の口から説明いただきたいのですが。
「ああ、それはな、俺が炭鉱で組合の親方(※委員長)やってたからな。だからアカってことよ(あっさり)」
−−はぁ?そ、そんな理由なんですか!いや、というかレ、レッドキングさんと組合活動ってのがまるで結びつかないんですが。
「俺も結局なんだかわかんねえうちにならされてたんだよ。まあ俺は炭鉱でも気にいらねぇことがあれば偉いさんでも何でもぶんなぐってきたからな。そしたら組合ってのができた時に、しらねぇうちにそこの親方やれって言われたんだよ。でも組合っての、入ってみると偉いやつを殴れないんだよな、ガハハハハ」
(インタビュアー付記。たしかに調べてみると、この当時の組合リーダーは左翼的インテリではなく、現場のたたきあげから選ばれた人が多かったようだ。高度経済成長を支えたひとつの風景かもしれない)
「そういや、その時この多々良島の組合にいたのがジェロニモンってやつだったな」
−−え?あの怪獣酋長ジェロニモンですか?
「おうよ。あいつは俺と違って頭のデキがいいからな、ぜんぶあいつに任せてたようなもんだ。あいつはそういう政治とか好きだから、あとでその酋長の選挙に出て当選したんだな。その時、秘書みたいな感じで上京したのがピグモンさ」
−−あっ、ピグモンが多々良島の話にもジェロニモの話にも出たのは、そういうことなんですか。
「あいつもかわいそうでなあ。やつの親父(ガラモン)が早死にして苦労したんだが、頭のいいやつでな。人間界のほうにあこがれも強かったから、そっちのほうで勉強したかったんだろうな。島の連中がみんなで応援してジェロニモンと上京して、やつからは離れたけど最後は成功して人気者になってなぁ、よかったよ」
−−話を戻して、多々良島の試合の話です。この時代、島のプロモーターが権利を売却して、島全体がウルトラプロモーションの傘下に入ったんですね。それでウルトラマンさん(初代)がこの島に遠征しての初興行。ですがチャンドラーという選手、記録が正直不足しているんですが、多々良島の地元の選手じゃなかったらしいですね。ふつうすんなり、地元のヒーローのレッドキングさんが挑戦者に決まると思うんですが。
「あー、よく覚えてねぇけど、確か俺がさっき言った組合の件でプロモーターからにらまれてたせいじゃねえかな?あとあのチャンドラーって野郎、なんかこの業界ではいいところの後押しがあったそうじゃねえか。ウルの字(※ウルトラマン)のほうの先輩格に親戚がいて、その顔も立てなきゃいけねえとかなんとか」
−−あっ、ペギラさんのことですよ、チャンドラーの叔父に当たる。南極プロモーションのプロモーターだし、「Q」のスターですから発言力もあったでしょうね
「チャンドラーってやつ自体は無口だがなかなかハードボイルドな男で、俺は好きだったけどな」
−−で、それでどうなったんですか。
「俺は正直、他のカードでもなんでもギャラがもらえりゃあよかったんだけどよ、他の怪獣レスラーが・・・ピグモンとかスフランとかが納得しなくて揉めてたんだよな。それでカードが決まるかきまらねえかって話になったんで、俺が面倒くさくなって『だれが強いんか、はっきりさせりゃいいんや!ガチでやって勝ったやつがウルの字とその後戦えばいいだろうが』って言ったんだよ。そしたらプロモーターもウルの字もいいかげんだよな、そのまま決まっちまった、ガハハ」
−−よく考えたら無茶な話ですよね(笑)でも、つまりはチャンドラーさんはそれを受けたんですよね。
「おう、あいつも男よ。いつか酒を一緒に飲みたいもんだな・・・もうどこにいるかもわからねえけどな」
[asin:B001DCDS4Y:detail]
−そして、ウルトラマンさんとの初試合となるわけですが。正直に、いいますと…あっさりした試合です、よねえ。
「チャンドラーもガチガチのやつだったからな、実際のとこあの勝負は歩いているだけでもやっとなんだよな。だれかリザーバーを…と思ったら、そのリザーバーなんかピグモンしかいやしねえガハハ。うん、まあ本当なら、この豪腕パンチ(腕をさする)をやつのどてっぱらにぶち込みたかったな。」
−−これは、ガチンコじゃない・・・
「んだけど、決めちゃいねえな、アレやれとかコレやれとかはよ。最後におれが寝る(負ける)ってことだけは当然決まってたけどよ、俺はさて、元気いっぱいのところでやってたらどうだったかな。最後に負けりゃいいんだろって大暴れに暴れて、そしたら相手が立ってなかったってことも何度もあったからな(ニヤリ)」
−−ははは。でもウルトラマンさんのほうも、ものすごい投げを見せました。
「やつの言い方も振るっててな。最後にあいさつに言ったら、『こういうときは逆にあっさり、秒殺したほうがいいんだよ。そうすれば出会いがしらだ、最初の試合のダメージのせいだとお客は逆に期待してくれるからな。次のビジネスになるぜ』ってよお。そりゃそうかもしんねえけどよ、『だから急角度で投げといたから。まあお前なら大丈夫だろ』だぜ!!信じられねえよな、ゲハハハ!!」
−−エグいですねえ(笑)。でも実際、相手のタフさを見極めてウルトラマンさんは技の角度を変えていた、とはよく言われますから。ただ、「ダブルヘッダーのハンデで勝てなかった」というアングルを怪獣側から提案されて、ウルトラマンさんもよく承知しましたよね。
「普通なら認めねぇだろうな。ただ、いきさつがいきさつだからな。そのチャンドラーとの一件ってのは例の南極のほうだか、プロモーターだかを通じてあっちにも伝わってたんだ。で、ガチだとか聞いてウルの字、大笑いしたらしいんだってよ。ひざを叩いてOKしたついでに『勝利者賞を出してやる』とか言って相当なのをプロモーターに預けたそうだぜ、ガハハ。勝手にプロモーターはそれを出場怪獣ぜんぶのご祝儀にしたんだがよ」
−−エレキングさんやキングジョーさんに、セブンさんのガチ志向の話は聞いたんですが、初代マンさんも同じようにガチへの志向、というか許容度はあったんですね。
「おうよ、そのへんはウルトラがでっかい団体になってからおんば日傘でそだったヘナチョコたあ違わあ。80とかな(普通に)」
−−あわわわ、そのへんのことはもうちょっとソフトな表現で・・・
「そうそうソフトクリームみたいに歯ごたえがねえやつだった!おめぇ、うまいこというな、気に入ったぜ!!」
(※インタビュアー註。このくだり、最初はカットしたのだが、ゲラ刷りを送ったところ、他には一切文句をつけなかったのだが、この部分だけ名指しで「あのソフトクリームうんぬんってえのはどうした?」と言われてしまった・・・)
−−えー、話を戻して(大汗)。ということはウルトラマンさんは敢えてレッドさんの商品価値を守ることを考えて、アドリブで秒殺したと。そのとき、日本アルプスでの再戦の日程は決まってたんですか。
「少なくとも俺はしらなかったな。だけど確かに、まもなく日本アルプスのプロモーターから声がかかった。俺のほうだって、いやも何もねえ。あのへんの日本酒もうめぇし、トランクひとつでの旅よ」
−−で、こちらでも怪獣同士のバトルをやってらっしゃいましたね。2回登場して2回とも、まず怪獣同士でバトルしてそれに勝利する。見ていたわれわれも、そのスペシャル感が非常に印象に残るわけですが。多々良の評判を聞いた地元のプロモーターが、その試合をブッキングした、とも聞いていますけど。
「それは違うな。俺が地元の2人に声をかけたんだ。で、またガチをしたわけよ、3人でよ」
−−(ポカーン)。
「たしか、少し前に地元入りして、前評判をあおるために何度か試合して、ついでに酒を…いや逆だったかもなガハハ。酒を飲むついでに試合してると、いやでもそこの連中の評判がわかるもんさ。ギガスってえのはそこのポリスマンだったんだ。実力は相当のもんだったが、アピールもしねえし、自分のポジションをあげるようにも言わねえで黙々とバーベルを持ち上げて練習していたんだ。あの肩の筋肉、すげえもんだろ。1にジャミラ、2にギガスって言われたもんだぜ。ところがウルトラシリーズってのはここだけの話、サル系の怪獣にはチャンスをくれねぇんだ。ハリウッドのチャンプ(キングコング)を東宝は馬鹿みてえニゼニ積んで呼んで、引き分けブックで大喜びしてたろ? それにウルトラの団体は反発しててよ。それは俺も賛成だが、だからってギガスとか、そういういい選手をサル系だってチャンスをやらねぇのはおかしな話さ。それでじゃあ任せとけ、って俺とやることをちっと強引にプロモーターにアレしたわけよ」
―−はっきり言わせてもらいますけど、無茶です(笑)。(※このころは無理やり飲まされて、相当酔ってました)で、ドラコさんのほうは・・・・
「それがよ。ドラコというやつは、あれは地元のやつじゃないんだな。あいつは・・・あれだ、武道家なんだよ本来は」
−−あ、それは自分も調べてまして、今言おうと思ってました。なんでも宍戸梅軒創始の鎖鎌の流派を本格的に学んでいたとか。
「何を間違ったか、怪獣プロレスは修行の一環だったとか言ってたな。で、まあプロレスの何だな、『お仕事』のほうに我慢できないってことでいろいろとあったみたいなんだよ。それでプロモーターが解雇だなんだって騒いでやがったんで・・・・・」
−−例によって「めんどくせえ、まとめて俺とやるぞ!」ですか(笑)
「まっ、そういうこった(笑)。さすがにウルトラもあきれてたみたいだけどな。それでも付き合ってくれるんだから立派なもんだよアイツも」
−−でもまぁ、要は二人の強さを認めていたと。それで日の当たる場所に出してやろうと・・・でもあんたが二人やっつけちゃ意味無いじゃん!!(※聞き手もかなり酔ってます)
「あっ、そういや」
−−40年、それ考えてなかったんかよ!
「そうだなぁ、まあしょうがねえや」(グビグビ)
−−・・・・・・
「ぷはー、お前も次はウォッカにするよな?」
【インタビュアー補遺】
この件に関してはもう少し知りたいと思い、後日、他の当事者2人にインタビューをしてみた。
ギガスさんに関しては今、アルプスに2店を持つちゃんこ屋だ。
「レッドキングさん?いやあほんとに感謝してますよ。私は結局アルプスでは芽が出ませんでしたけどね、全力を出し切って一瞬だけでも輝いたあの試合は、私の宝物ですよ。はずかしながら、あの時の写真を本店には飾っています。」
ドラコさんは、マスコミには意識的に登場しないようにしているそうだが、その世界では知る人ぞ知る、門弟3000人の実戦武術の道場主だ。「銅鑼国斎」と改名したこともあまり知られていない理由だろうか。
「彼らとの試合について私が今、申すことは無い。要は私の『武』が、レッドキング殿の『侠』に及ばなかったということですよ。そういう点では、今の道を自分が拓くしるべとなったことに大きな恩がある。あの試合についてもう少し詳しく語るのは、弟子たちがレッド殿のような侠をも超える武を身に付けたときだろうな・・・そんなに遠くは無いと思う」
「そこからウルの字とはバチバチとやったな。こん時はなんつうか、怪獣同士の試合だってチャンドラーの時と同じぐらいしんどかったんだが、体が動いたなぁ。前日一斗ほど酒を飲んでたから、燃料補給ができたたんだな」
−−普通逆ですよ!!・・・んで、その後は80、マックスなんかに出てましたねぇ。さっき80の評価はあんまり高くなかったようですけど。
「あいつはなぁ、教師あがりだからケンカをするんじゃなくて止めるほうなんだよな(笑)、そんなんじゃうまかねぇだろよ。ま、呼ばれたからそれなりに試合したってだけで、大して覚えてるわけじゃねえな。あと一人のマックス、こいつは筋がよかったな。怯むってことがねえ怖いもの知らずなところが気に入ったぜ」
※ここで、「ブラックキング」が店に入る。
ブ「義姉さんに聞いたらここだっていうから。取材なんだってね。家のほうに、うちの菜園で採れた野菜を置いといたから」
レ「おおそうか、まあ取材ついでにちょっと座れよ。記者さん、こいつにもいろいろ聞いてみな?」
ブ「いやいやいや、兄さんの取材でしょ」
−−でも、ブラックキングさんにお会いできて光栄ですよ。知る人ぞ知る、大物兄弟怪獣ですからね
レ「おふくろは違うんだけどな。だからこいつは、こんなに立派な角がある」
ブ「ふふっ、少々複雑な家庭でしてね・・・だから昔、私はかなりグレましたね。闇の社会につながってたんで、付いた名前がこの『ブラック』。」
−−えっ?そういう理由だったんですか?
ブ「私の体、たしかに黒っぽいけどブラックっていうほどでもないでしょう。悪い連中とつるんでたときの名残ですよ。だから、このプロレスのほうでも、最初のジムというかマネジメントが、あの悪名高いナックル星人だったわけです。だいぶ搾取されたし、いやそれはいいんですが、とにかくやり方が汚くてね・・・でも、そう簡単に別れることもできなかったんですが、そこに兄さんが入ってきてのしちゃったんです」
レ「いや、名前がナックル星人だからよお、やっぱり説得はナックル(拳)だろうってな、ガッハツッハ!!(この日一番の笑い声)」
ブ「その後、兄さんは、私を大学にいかせてくれましてね・・・わたしが今あるのは、兄さんのおかげで」
レ「おいおい、つまんねぇこと言うない」
ブ「記者さんには、リングの暴れん坊である兄さんだけでなく、そういう部分も見てください。・・・では失礼しますよ」
レ「なんでえ、もう帰るんかい」(むくれて)
−−さて、もう(酔っ払って)限界なので、最後の質問でふ。そういう試合をし続けてて、何か後輩の怪獣にメッセージはないですか?
「いまの怪獣にあれやこれやいうほど野暮じゃねえさ。だけどな、俺だけのこだわりでいうと、光線って俺は嫌いなんだよな。あれは男の技じゃあねえよ。男なら結局はこれ(拳)で語り合うもんだろうさ。たれ流すのはションベンだけで十分だ、ガハハ」
−−でも、ウルトラシリーズの花でしょ、光線って。それを否定するわけにも・・・
「だけどな、初代はよお、俺の意気を汲んでくれて、光線は岩に当ててただろ。あれは最初に、俺が言ったんだよ。光線ってえのは大嫌いだってな。プロモーターは『お客は光線を見ないと納得しないぞ!』って大反対だったけど、俺とあうんの呼吸で、ああいう形になったんだぜ。アルプスのほうでも、光線じゃなくて光輪だったろ?『お客の関係でやらざるを得ないが、まだこういう手ごたえのあるこれをぶつけるなら、お前も我慢できるだろう』ってウルがいうからなぁ、じゃあどーんと受けてやろうじゃねえかと、真正面から受けたってわけよ。あれは効いたなぁ!でも光線とかのいやな痛みじゃねえよ」
−−そう言えば、光線は打つのもお嫌いですねよ
「よる年波と観客ニーズに合わせて、溶岩を吐き出すとかそういう芸当はやったりもしたけどな。でも光線だけは出さねぇ。一度、ウルトラを名乗った弱小インディーの『ザ・ウルトラ』なんとかいうやつに、俺のコピーがいやがったが、表面だけ似せるのはかまわねぇんだが光線を口から吐いててなあ。腹が立ったからぼこってやった」
−−一貫したポリシーなんですね。
「あ!!そういや俺は昔、ゴモラとこの話でもりあがってなぁ、『おれたちゃ死んでも光線は使わないようにしような』って男の約束したんだが・・・(ニヤリ)・・・やつはタイ遠征で、ここならバレないと思ったのかね、角から光線だしてやがった(笑)!!・・・それ以降、ゴモラはこの話を出すと俺に頭があがらねぇやな。国際スターのゴジラ御大みたいにゃなれねぇけど、光線無しの怪獣界では、俺、レッドキングさまこそが、キング・オブ・キングスってわけよ。ベルトはもらえねえけどな、ガッハッハ・・・」
付記。私はこれを最後に記憶を失った状態。店内で次の日の朝に目を覚ました。味噌汁を作ってくれていた店主におそるおそる会計をたずねると「え?すでにレッドの旦那から頂いてますが」との答えが返ってきました。
=レッドキングさんインタビュー・完=