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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「現代アラブの社会思想-終末論とイスラーム主義」

アマゾンコム
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061495887/250-3974200-2478637


おさらぎ次郎論壇賞の受賞作。
アラブ・イスラーム世界を知的に開く、重要な鍵がこの作者・池内恵によって初めて日本にもたらされた。今、アラブ世界で展開されている論争・ジャーナリズムの話題、流行歌、あやしげなオカルト、陰謀論の噂・・・つまりはアラブの「大衆」「時代の気分」が、我々の眼にさらされたのだ。

それはコーランを字句どおりに読んでも、またはオイルの需給や地政学をにらんでも出てこない、複雑かつ多様なものだ。
そして、結構しょーもない(笑)。


かつてナセル主義、パン・アラビニズムとイスラーム主義が葛藤や相克しているという話ならいいんだが、例えば


p19「エジプトのイスラエル人観光客射殺事件でも『実は被害者はスパイだった』という説が定説のようになっている」


p26「彼(ダイアナの婚約者で一緒になくなったドディ・アルファイド)は、かつてイギリスの元皇太子妃の心を虜にすることによって、大統領やノーベル化学賞受賞者と同等の国民的シンボルとして位置づけられているのである」


p235「偽救世主の出現が近づいた---シオニズムとサタンの下僕がバミューダ・トライアングルから空飛ぶ円盤に乗った偽救世主ダッジャールを準備している」(エジプトで売られている本の書名)


反西欧ナショナリズムや被害者意識、イスラムの過激主義、神秘主義などがまぜこぜになった、あの社会というのはかなり厄介だ・・・われわれの社会が厄介であるのと同様に。
しかし、それを知らないでアラブと付き合うことはできないのは明白。良書である。

↑続き。サブカル分析の系譜を継いで。

あとがきで著者は、「本書に書かれた内容も大部分は大学院時代に行った調査と資料収集に基づいている・・・」ん?大学院???
彼はいくつなんだろうと裏表紙のプロフィルを見たら・・・うーーん、若い。

「彼はヤング・アンド・ストロングだ」(フランク・シャムロック風)


さてさて、そこで気になるのだが、サブカル文献を幅広く狩猟、分析し、そこから社会的な思想を抽出するという方法論が、ある時期・・・おそらく90年代に非常に多く出てきた。

例えば「偽史冒険世界」の長山靖生氏。
ナチスが戦後日本のサブカルで、どう扱われたかを検証する本も数年前に出ていたはずだ。(調べれば書名分かるので、後で検証しよう)。

そして、と学会「トンデモ本の世界」の連載は宝島30の創刊(1993年)と共に始まった。

そんな手法は前からあった、という指摘もあるだろうがマア置いとけ。


いやね、ぶっちゃけた話、この大仏次郎賞受賞作からは、「トンデモ本の世界」と同種の感覚を味わったのよ(笑)。で、世代を考えるに、その影響が実際に著者にあるのではないかなあ、と。
岡田斗志夫さん、唐沢俊一さん、山本弘さん、彼をなんとか対談とか鼎談に引っ張り出せませんか。