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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061495887/250-3974200-2478637
おさらぎ次郎論壇賞の受賞作。
アラブ・イスラーム世界を知的に開く、重要な鍵がこの作者・池内恵によって初めて日本にもたらされた。今、アラブ世界で展開されている論争・ジャーナリズムの話題、流行歌、あやしげなオカルト、陰謀論の噂・・・つまりはアラブの「大衆」「時代の気分」が、我々の眼にさらされたのだ。
それはコーランを字句どおりに読んでも、またはオイルの需給や地政学をにらんでも出てこない、複雑かつ多様なものだ。
そして、結構しょーもない(笑)。
かつてナセル主義、パン・アラビニズムとイスラーム主義が葛藤や相克しているという話ならいいんだが、例えば
p19「エジプトのイスラエル人観光客射殺事件でも『実は被害者はスパイだった』という説が定説のようになっている」
p26「彼(ダイアナの婚約者で一緒になくなったドディ・アルファイド)は、かつてイギリスの元皇太子妃の心を虜にすることによって、大統領やノーベル化学賞受賞者と同等の国民的シンボルとして位置づけられているのである」
p235「偽救世主の出現が近づいた---シオニズムとサタンの下僕がバミューダ・トライアングルから空飛ぶ円盤に乗った偽救世主ダッジャールを準備している」(エジプトで売られている本の書名)
反西欧ナショナリズムや被害者意識、イスラムの過激主義、神秘主義などがまぜこぜになった、あの社会というのはかなり厄介だ・・・われわれの社会が厄介であるのと同様に。
しかし、それを知らないでアラブと付き合うことはできないのは明白。良書である。