(下の)ジェット・リーはAI絵が問題になるずっと前、映画『マトリックス』のセラフ役のオファーを断った理由を「企業が私の知的財産を所有してしまうから」と節枚していた。武道家の動きをデジタルライブラリに保存しコピーする。撮影が終わってからも自由に使われてしまう。https://t.co/7yNs7R9yCa
— こりま (@korimakorima) October 9, 2022
「撮影期間は3ヶ月、アメリカン達が私と共にいる期間が9ヶ月。6ヶ月かけて私のモーションを記録する。デジタルライブラリに入ったジェット・リーの動き方、技を使う権利はワーナー側にある。私はずっと修練を積んできた。私たち武道家は年をとる。彼らは知的財産として永久に私の動きを所有する」
— こりま (@korimakorima) 2022年10月9日
”知的財産として永久に私の動きを”残すためにも、最晩年のイップ・マン葉問は息子に8㍉映画で詠春拳の基本の型を行う姿を撮らせたんですが…まあその前に葉問が弟子のブルース・リー李小龍からの撮影の申し出を断った時の心持ちに近いのかなあ、りんちぇさんは…?https://t.co/MHoqHAS9ky
— HKmoviefan💉💉💉💉 (@HKmoviefan) 2022年10月9日
初めて聞きました。凄いですねジェット・リーは!!
— 曼陀羅・μ・アート (@mandala_art) 2022年10月9日
武道家としてもそうですが、知的財産の本質を昔から理解して、辞退していたんですね。
確か振り付けも著作権無いですよね、記述する言語や記号を作れていないから。
— むーなか (@ZgCG6SXtnQy2ff3) 2022年10月9日
その点、音楽は幸運と言うかよくぞ記述して残せるようにしたものですな。
で、ぼくの感想。
その権利がどこに所属すべきかは交渉や裁判を待つとして、まず今までだったら年齢、衰えと共に「消えるだけ」だった【武道家/格闘家/その他アスリート、アーティストの体の動き】がデータとして保存される、ということ自体が感慨深い話ではある。https://t.co/aAsgoa6cAe
— INVISIBLE DOJO (@mdojo1) 2022年10月9日
そう、これも【記録する者たち】案件でさ。
これまで武道家、剣術家、ダンスや舞踏、バレエのパフォーマンスは、どこをどうやっても、その人個人の100%所有するものであり…そして老いと死によって、永遠に失われていくものだった。
もちろんNHK「映像の世紀」のタイトルの通り、20世紀初頭から動きを記録する「動画」の技術が生まれ、ここでものすごい飛躍があった。ルイ・アームストロングの演奏や歌声も、ルー・テーズやカール・ゴッチの技も、双葉山の土俵も、沢村栄治のピッチングも画質や分量はともかく、かろうじて残っている。
こういうのがどんなに画期的か、といえば、レスリングのテクニック「トルコ式股裂き」なんかも、むかしは相手に国際大会で一回二回やられたぐらいじゃ、どこがどうやって技を決められたのかさっぱり見当がつかなかったのだ。
そこに「8ミリ」が持ち込まれて、それで変わった。技術は飛躍的に進歩し、それが共有された。
ただ、まだ8ミリがそうそうスポーツ大会に持ち込めない高級品だった時、いわゆる「カメラアイ」、映像記憶を持つ選手が一人いると、それだけでその国の競技レベルが爆上げになる…そんな時代すらあったのだ。
この記事でそのへん、詳しく書いています。
m-dojo.hatenadiary.com
「笹原にはシットの(新技の)動きは見えない。周囲で見ていたコーチや選手の記憶を頼りに、実際に組み合って技を再現しようと試みた。シットが自分に何をしたのかを笹原が完全に理解できるまでには3カ月を要した。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120806/p1
日本レスラー列伝1 合気道を実戦化した”宮本武蔵”笹原正三
(略)…意外なことか、今でもそうかはよく分からないけど、柔道からの転向組が多いせい?で当時の日本は「投げは強いが寝技は弱い」とされていた。しかし笹原は、東京選手権で対戦したトルコ選手の技を再生し、その上でさらに改良を加える。
この技〜「股裂き」は、英語名を「ササハラレッグシザース」というのである!!
当時の寝技の習得というのは今と違い・・・貴重な八ミリフィルムでも使わない限り(ソ連では使った)試合の映像なんて残せない。複雑な寝技の、ちょっとしたこつを、映像抜きで相手から盗むというのが今より何百倍も難しかったのだ。
笹原も、トルコの技の再現のために「3カ月」を要した、とある。
これは、いわゆる「視覚記憶」「映像記憶」というものにも通じるかもしれない。未完の柔道漫画「からん」では、キーとなる少女選手が、まさにこの映像記憶を持っているという面白い設定があったが・・・笹原も。笹原の優秀な頭脳には、自身が見た世界のレスリングが映像として組み込まれており、笹原はその映像のすべてを自分の身体で再現することが出来た。
あれだな、実戦経験がなくても一流選手の試合を見ていたんで身体が勝手にうごき、ミキサー大帝に勝てたミート君もこの映像記憶の持ち主かもしれん(笑)
この「人の動き」を再現して伝えていく、というのは、以前から難問中の難問でした。
それであっても「伝統の舞」「伝統の職人芸」「伝統武術や剣術」が世界中にあるのは、苦難を乗り越えてそれを伝承するシステムを皆が作ったことにありましょう。
そのシステムのひとつでもある”道場・流派”っていう仕組みは、日本や中国では聞くけど他の国にはあるの?という話を、これまた以前記事にしました。
m-dojo.hatenadiary.com
それでも、なお……
この延長線上で今回の一件を見ているから、やっぱり権利がどうなるこうなるはともかく、ジェット・リー(個人的にはリー・リンチェイと今なお呼びたい)の技がデジタルデータに収録され、それが映画やらアニメやらにデフォルメされてその後も…リーの肉体が老い、天に帰ったあとも、自由に使えるというのは福音にしか見えない。
まあ、そういうスキルを持っていないから気楽に言えるだけかもですよね(笑)
たとえば故「アントニオ猪木」もさ、その試合が真剣かどうか、へちまかは関係なく、あれだけ身体の動きが映像で残っていれば、その後その映像データを何かのAIに食わせれば「アントニオ猪木の寝技」が、たとえばアニメや映画などに応用できたりもするんかね。
大評判の人気アニメ、とはいかなかったが「拳闘暗黒伝セスタス」は、ボクシングの動きをモーションキャプチャーで作った、というのが話題になったね。
www.youtube.com
モーション収録とリアルタイムプレビュー
…非接触のまま収録したデータを後で修正する方法はコストがかかるとわかったため、収録時は元プロボクサー亀海喜寛氏監修のもと、JAEスタッフがスーツ内にプロテクターを入れ、実際に殴っている。
ShougunとMotionBuilderをつなぎ、リアルタイムプレビューできるようになっている。監督や演者は、身体を動かしながら実際のキャラクターの体格での見映えを確認し、演技を決めていった。
収録後、モーションを再生しながらの確認が行われる。収録中のリアルタイムプレビューでは、演者の全身が映る引きのカメラにしているが、モーション再生のプレビューの際は、実際のカメラをイメージした角度から確認したり、片方の演者を非表示にして主観的な絵で確認したりと様々な角度からプレビューが可能。長尺で段取りの多いアクションの場合、再生スピードを変えてプレビューもできる…
polygonote.com
少し前に紹介したけど、古今亭志ん生の落語には音声があるけど映像が無い!というものもあり、それは惜しいと考えた映像会社が、高座をよく見ていた関係者らの記憶を駆使し、山藤章二に作画を担当してもらってしぐさを再現した「ラクゴニメ」ってぇのがあった。
いまから、データをそれこそモーションキャプチャーで取っておけば、大名人のしぐさを単純な再現とかじゃなく、たとえば没後に作られた「新作落語」をシナリオを入力して自動的に演じさせる、なんてのもできるようになるかもね。
音声…落語の喋りは畢竟「リズムとメロディ」(立川談志)なのだから、これの再現はもっとハードルが低いだろう。基本は美空ひばりAIと同じだ。
もちろん名声優の名口調もまったく同じであり、今はそれをやるコストの問題、そして権利やマナーの問題である。声優の組合があれば組合も関係してくるかな??たしかそんな話題もどこかに出てた。
NHKで「新・電子立国」という番組が放送されたのは1995年だけど、冒頭がバットマンの映画で、空中を飛んで着地するまではCG、そこから歩くのは俳優で、どうしても無理な演技にだけ人間の動きはCGで置き換えられると、俳優組合との協定でなっている…と報じられていた。