この話、以前から書こうと思っていたし、類似の過去記事もいくつかあるけど、きのう匿名ダイアリーにこれを指摘する記事を先に書かれちゃった。
■【ニュース】外国人の吹替声優で善悪を演出するのやめろ
ニュースを見てると、ゼレンスキーは良い声の声優を使って、プーチンはドスの効いた声の声優を使ってるように感じる。
邪魔なんだよな。余計な事すんなよ。
つーか、何言ってるか分かんねーから吹き替えするな!字幕にしろよ。
anond.hatelabo.jp
2日午前3時現在、それなりの数のブクマがついている
[B! 声優] 【ニュース】外国人の吹替声優で善悪を演出するのやめろ
当方のコメント
あー、いつか書こうと思っていた話だが先に書かれたね。日本人の犯罪・逮捕ニュースも各声優が逮捕者の発言は悪そうに、被害者などの発言は気の毒そうに語らせてます。『●●党関係者』もそうで印象付けが自由自在
まず、過去記事リンクを。
この番組に限らず、洋画の翻訳はなるべくジェンダーニュートラルでやった方が良いと思う。そうすると男っぽさとか女っぽさのニュアンスが伝わらないと言うかもしれないけど、そういうのは映像や声のトーンなどで伝わるもの。言葉で変に色づけすべきではないと思う。 https://t.co/ARzGAGT4JA
— 想田和弘 最新作「精神0」DVD・最新刊「なぜ僕は瞑想するのか」発売開始 (@KazuhiroSoda) 2019年1月6日
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……『風と共に去りぬ』の中で黒人奴隷はこんな風に話す。「こまりますだ! ビートリス奥さまに叱られるのは、おいら、おまえさまがたがこわがるより、もっとこわいですだよ」
原文ではどうなっているんだろう。黒人は十分な教育が受けられなかったこともあり、文法的におかしい黒人英語を話す人もいる。二重否定が変だったりするのだ。でも黒人が東北弁は話さないだろう。そもそも南部の物語だし。
正確には、この訳文は東北弁でさえない。明治前後に、落語や講談などで語られた疑似田舎弁、まさしく役割語である…
※この箇所は孫引き。もとは
黒人が「こまりますだ!」 翻訳文に見える日本人の差別意識|NEWSポストセブン
www.nhk.or.jp
①オレがナンバー1だ
②記録を出す秘訣なんてないわ
北京オリンピックを伝えるNHKの放送に出た翻訳テロップである。このテロップを見ただけで、日本語を母語とする私たちは、話者について何らかのイメージを思い浮かべることができる。
①は力強さと自信をもっている男性、②は華やかさ、または上品さをそなえた女性、というように。
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(略)…かつて人気を博したテレビドラマに「刑事コジャック」「刑事コロンボ」のふたつがある。この両ドラマ、額田やえ子さんが共に翻訳した…のだが、コワモテのコジャックと人懐こいコロンボではもちろん語り口、口調が違う。
翻訳者は、同じひとことでも、こう翻訳を使い分けた、のだという。一覧表にしよう。
英語原文 コジャック コロンボ Come On! 「早く来い」 「こっちこっち」 That makes sense. 「筋は通ってる」 「ごもっともです」 Let me see that. 「見せてみな」 「ちょっと拝見」 Hold it! 「待て!」 「あ、そのまま」 You gotta be kidding. 「なめるんじゃねえよ」 「ホントですか、それ」
名人の技、ここに至る。
ただ、役割語の問題や、海外の問題のニュース報道で、その翻訳がつかわれるという現象は問題点がはっきりわかるけど、ただ翻訳の場合、「実際にそういうニュアンスなんです。単純に『です・ます』で訳すとそれが伝わらないんです」という主張もあろう。
……ただ、たとえばトランプ大統領の発言なんて、声優にたっぷり演技させて、まさに「役割語」満載で報道する番組もある。
こういうとき、実際に、『トランプの英語は(粗野で傲慢な)ああいうニュアンスなんです。むしろ、このほうが「正確」に伝わっている』みたいな議論も出てくるからややこしい(そしてその真偽は当方、判断できない)
https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/2019/01/07/052326
しかし、自分がニュースを見ていると、そのコメントが日本語だった時も、声優を使って情感たっぷりの”演技”をさせているニュースが見られるようになった。
事件・事故のニュースで、容疑者とされる人物などのコメント(コメント自体はたしかに取材されているだろう、いくらなんでも)をプロの声優・俳優が、いかにも特定の傾向…「傲慢、粗野、狡猾」などを感じさせる口調で語る。
また、以前はあくまで背景資料だった、政界の動きを、氏名オフレコ(発言内容は報じていいが、誰が言ったかは伏せる)での発言メモを紹介する…というコンテンツが、最近はニュースに登場するようになった。
その「政界関係者」「〇〇党幹部」の言葉を、だいたい俳優・声優が演じている。
声優俳優ってのは声としゃべりのプロであり…たぶん、同じ文章を「大多数が反感を持ち、言ってる内容に疑いを持つような、胡散臭い嫌な奴として演じて、読んでください」も「誰もが信頼するような正義で実直なヒーロー風に読んでください」も朝飯前だろう。
そして、ニュース報道のそのニュアンスは声優ではなく、その口調を指示するディレクターの思いのままであるな。
そんな操作が、いま現在されている……のは、間違いない話だ。
ついでに、
この件をパロディ的にしてみた画像をいまつくったので、貼っておきます。