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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ウィッチウォッチで爆笑「英語教科書」ネタ。もしよければ清水義範もこの機会に読んで【漫画小ネタ集】

さて、画像ツイートを並べるか。これはあなたのツイートですか?


総合格闘技でも、アマレス出身者は無意識にタックルにいくし、柔道経験者は足払いでテイクダウンをとろうとする。
「はじめの一歩」でも、意識を失いかけた一歩や鷹村が、それでも日々の地道な練習で体にしみこませたワンツーが自然と出ることで闘える…という話があったね。

で、篠原健太先生の場合、「奇人変人が主人公たちに、へんてこな悩みを持ちかけてくる一話完結の話」が、それに該当するんじゃないかなと(笑)。スケットダンスでさんざっぱらやってきて、読者を驚嘆させた守護神的なネタ。

そしてその源流……創作者としてじゃなくて読み手のほうのそれを辿ると、藤子・F・不二雄とならんで篠原氏が影響を受けてるとおぼしき…それをかつてリスペクト漫画で証明した…「こち亀」の30~50巻台につながるんじゃないだろうか。


秋本治だったら、今回の新登場人物に対して、両さんが最後のコマで「筋金入りの変態だ……」とつぶやいたり、モブの人が「春になるとああいうのが出てきますよ!」とか言ったりしてたと思う(笑)

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こち亀 一話完結型登場人物
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こち亀 ゲストの変人一話完結型

さて、そういうわけで誰でも知ってる「英語教科書の登場人物は、よく考えるとしゃべり方が変」というネタでウィッチウォッチは一本書いたわけだが、これについては吸血鬼のごとく「真祖」「始原」の存在がある。
われわれにとっては当たり前だが、
よく考えたら、世代も変わっていて、この当たり前のことに気づかないかもしれないのでご紹介。

英語教科書でおなじみのジャックとベティが、50歳で再会したとき、いかなる会話が交されたか? 珍無類の苦い爆笑、知的きわまるバカバカしさで、まったく新しい小説の楽しみを創りあげた奇才の、粒ぞろいの短篇集。ワープロやTVコマーシャル、洋画に時代劇……身近な世界が突然笑いの舞台に!

あるんだよ!!こういう小説が!!!!

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清水義範「永遠のジャック&ベティ」

これで一躍世に知られるようになった、清水義範出世作
それから数年は当たるを幸い、出すもの出すものすべてが傑作だった。全盛期の山本KID五味隆典かというぐらいKO勝ち連発。その笑いが「スタンダード」になったのもいくつかあると思ってる。
ある意味で筒井康隆の快進撃は、こんな感じだったのかな、とも思わせた。


ただ、…これは俺の一方的な「個人の印象」かもしれないが…周辺の環境が、本来得られるべきだった権威や地位に就くことを妨げてしまった、という気がする。

本人も、「60過ぎて仕事が減り、勢いがなくなった」と2012年に週刊誌で語っている。

作家の清水義範氏が言う。

「私の場合は50代までガムシャラに働き、60を過ぎて思秋期が訪れました。サラリーマンより時期は10年ほど遅いけど、症状は同じだと思います。仕事が減って、勢いがなくなって不安を感じ、何をやっても面白くなくなった。

 思い出すのは、私の父も定年後、非常に不機嫌で怒鳴り散らす人間になったこと。3年ほど経ったら元の柔和な父に戻った。

 権限や権力を持つとか、自分を中心に物事が回っているとか、そういうことが男の誇りの源泉になる。『俺がいなきゃ困るだろう』と思ってやっていたのが、『いや、もうあなたの役目は済んでいますよ』と突きつけられると、男はアイデンティティを保てなくなって戸惑うんです」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/34399?page=3

自分は、これは清水氏個人が60歳を過ぎた、とか、才能が枯渇した、じゃなくて、いわゆる中間小説誌が存在感を大幅に失い(いま、そんな雑誌って店頭の「目立つ場所」に並んでる?連載小説目当てでそれを手に取ることある?)、そういうところで発表される「爆笑小説」への求心力全体が低下したんだと思う。テレビでもお笑い番組が定着し切ってる中、小説を含めユーモア文章やユーモアコラムの地位全体が揺らいでいる……と思うのです(偏見かなぁ)。
※あと清水氏個人の話でいえば、テン年代以降は、アシモフ宜しく小説より、その文章を生かした啓蒙的エッセイ集に軸足を移したこともあろう。本人がそれを望んだかどうかはわからない。


でも清水義範はそんな中でも、テーマごとに再構成した短編選集が再び発行されるんだから、一段か二段やっぱりスペシャルな存在なんですよ。


篠原健太氏の今回の作品が、そういう清水義範のユーモア短編からヒントを得たものなら、むしろそのアンテナの高さや応用力が賞賛されるべきものだろう。

そして、その機会に、「清水義範のこういうパロディ、ユーモア小説は凄かった!!」というひと世代前の常識を、今のジャンプ読者の何割かが、そのアンテナに受信してもらえばウィンウィンと思うのです。



そういえば、「日本三大ロジカルコメディ作者」の面目躍如で、この話は途中に出てきたほんとに細かい小ネタが”伏線”になり、あれがこうなってそれがそうして…とピタゴラスイッチのようにオチにつながり、それが次回のネタへの導入になる。
これは、すでに驚嘆すべき今回の傑作回に、さらにおまけで付け加わるサプライズ。

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ウィッチウォッチ 英語教科書ネタ

「ロジカル・コメディ」については以下参照
m-dojo.hatenadiary.com
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