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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

『「もったいない」はどこへ?』を問う雑誌アンケート、呉智英の回答がエグすぎる(ノースフェイスvs石油業界に関連して)

はてブがにぎわったこの一件。
www.gizmodo.jp

b.hatena.ne.jp
ちなみに自分は「ザ・ノース・フェイス」なる会社を、
この記事で初めて認識しました。


この記事に、自分がつけたブクマコメントに対してそれなりに反響があったっぽいので、こちらに資料を提示して、もう少し詳しく述べよう。
といっても、雑誌アンケートへの回答文だから、ほんとに1Pちょっとの短文ですよ。全文紹介もできるんだけどさ
ま、抜粋。

マスコミこそ偽善者ですーアンケート「「もったいない」はどこへ行った」に答へる


世の中には、偽善者なのかカマトトなのか、いいかげんな奴があるものです。
(略)
…… このアンケート依頼にも、思はず笑ってしまひました。 あまり売れてゐるとも思へない「ノーサイド」誌では、売れ残った返品誌はどうされてゐるのでせうか。
私は、返品誌は断裁処分になどせず、ぜひまう一度、書店に並べるべきだと思ひます。
だって、これだけ雑誌が多い中にあへて刊行してあるんですから、よほど自信の際 ある雑誌でせう? そんな名誌なら、まう一度書店に並べば、今度こそきっと読者は買ってくれますって。
売れない雑誌が、編集され、印刷され、店頭に並べられ、回収され、断裁され、ゴミにな る。
こんな「もったいない」ことが平然と許され、子供が半分かじったパンを捨てるくらいの のことが許されないことの方が不思議です…(後略)

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雑誌の「貴方の考える『もったいない』は?」の問いに「売れ残った雑誌の断裁」と答える呉智英(サルの正義)

以上、この本より。

サルの正義

サルの正義


ちなみに背景説明

この文章は1992年、文中にも出ているが文芸春秋の雑誌「ノーサイド」のアンケートより。(※だから「MOTTAINAI」が国際語云々、という21世紀の話とは無縁です)
この雑誌は、そのほんの少し前、文芸春秋が「新雑誌の大攻勢」を行って創刊したもの。実は当時、バブル経済の余波で「雑誌に広告を出したい会社が多すぎて、今までの雑誌に入りきらない!」⇒「じゃあ新雑誌創刊しよう」だったのだ。時代の違いがありすぎる…
だが、バブルはこの企画のちょっと前に崩壊。少しタイムラグがあって出版業界・広告業界にも波及。

さらに、当時このノーサイドは先駆的っちゃ先駆的なんだが「高齢者に特化した雑誌」を目指してた。今では否応なく通常雑誌がそうなっているが(笑)、この時代にやるのは早すぎた。
ということで、なんだかんだで既にこの時期、会社にとってお荷物化した雑誌だったのだ。(ちなみに同様に創刊されお荷物雑誌になったのが「マルコポーロ」で……、以下有名な話なので略す。)
この辺の事情、ちょっと枝葉の展開ながら最近出た「2016年の週刊文春」の中でも触れられている。

2016年の週刊文春

2016年の週刊文春



その渦中に「売れ残り雑誌」「返品」「断裁」とかのキーワードを入れて回答する呉智英氏も呉智英氏だが、それを雑誌に本当に載せた文芸春秋社も同社だ(笑)
当時、これを書店で立ち読みしてゲラゲラと笑ってしまい、そしてもちろんこの雑誌を買わなかったと記憶している。たぶん自分が手に取ったその雑誌も売れず、回収断裁となったでありましょう(笑)


この話、このまとめのコメント欄でも語って、けっこうウケてた。
togetter.com