今、1冊のプロレス本が話題を呼んでいる。プロレスラー、TAJIRIの新刊「プロレスラーは観客に何を見せているのか」(草思社)。
25年間のプロレス生活で、世界各国のメジャーからインディまであらゆるリングに上がり、裏方としても制作やプロデュース、新人育成に携わり、プロレス界の裏も表も知り尽くしたTAJIRIが「現時点でのプロレス論」として上梓した1冊。昨年12月に発売されると各書店で軒並み品切れ状態となり、発売6日目に重版が決定した。
(略)
…KENTAが内藤を襲撃。ドーム2連戦がまさかの「悪夢のバッドエンド」で幕を閉じた。
プロレスファンが騒然とする中、SNS上では「TAJIRIの本を読んでいたから、納得できた」や「TAJIRIの本はKENTAの行動を予言していた」といった感想が……
《技は選手の自己紹介のためのツールに過ぎない》《人気が出るキャラクターには共通する要素がある》
世界最高峰のリングWWEからインディー団体まで、日米マット界の「光」と「陰」を知る著者がはじめて明かす熱狂を生み出す「サイコロジー」のすべて。
自身の圧倒的な経験値をもとに綴る、目からウロコのプロレス論!
しかし刺激的な見出しだなぁ。プロレス消滅⁉️→存続のヒントはTAJIRIさんの本⁉️→慌てて購入→Amazon在庫切れ←イマココ これが…サイコロジー?🤔→「楽しいプロレス、クレームの来ないプロレス、嫌われない悪役。そんなプロレスばかりになればいつか世の中から消滅する」 https://t.co/TDNQ1QksLK
— 茂田浩司・ライター (@shigeta_koji) January 17, 2020
なるほど、なるほど……
さもあろう、さもあろう、と読んでないけど、記事に十分納得したんだよ(笑)
なぜかというとね、ここ。
――著書の中で「ここはぜひ読んでほしい」というポイントは?
「全部読んでほしいですけど、あえて挙げるならプロデュース論ですね。正直、この部分は日本のプロレス界が長年抱えている『課題』だと思いますし、逆にプロデュースの仕方を変えて、もっと選手の個性を引き出して光らせていけば、プロレス界はもっと盛り上がるんじゃないかと思いますから」――最後に、今年のTAJIRIさんはどんな活動をしていくのですか?
「ありがたいことに、現在、国内外からいろんなオファーをいただいているので検討しているところなんです。この本のことでいえば、ぜひ英訳本を出したいです。今も世界のいろんな国から試合や指導のオファーをいただいているんですけど、現地に行ってみると『キャラクター論やプロデュースの話を詳しく聞きたいからTAJIRIを呼んだ』ということも多いです。
そう、つまりですね…
21世紀に入り、いわゆる「ミスター高橋本後の世界」になっているこの令和の世。
そこで読みたいプロレス論とは…、俺個人としての好みとして言ってもいいんだけど、やっぱりそこ、「プロデュース論やキャラクター論」を読みたいんですよ。
だけんども。
いくらミスター高橋本後、とはいえ「ここで乱入してお客を盛り上げようと相談した」とか「自分は裏切り者キャラクターを演じるために、ここで敢えて……」とかやってると、それはやっぱりレスラーが今なお内面化している「ケーフェイ」に、少なくとも触れるか触れないか微妙なところをアレしちゃう行為なんだよね、今でも。もちろんキャラクター論やプロデュース論を語りつつセーフな範疇もあって、そこらへんは最近、やっぱり以前よりは皆接近はしてるけど、それでもハードルはまだ高い。
だが、少なくとも自分が雑誌インタビューを読んだ限りでは、間違いなくTAJIRIはそのケーフェイに接近する間合いが、通常のレスラーより3歩か4歩ほど近い。
そして、そういう覚悟の上で、プロデュース論とキャラクター論を理路整然と語れる知性と言葉がある。さらにいえば経験がある。つまりWWE、米国マットでやる以上は、少なくとも新日道場的な「まずガチからやれ」とか「はじめはこのヤローっていう闘志を見せればいいんだ」「本気の憎しみや嫉妬をリング上につなげろ!」という…(これはこれで、素晴らしいものを生み出す一手法である)…そういうやり方より何倍もクリアにキャラクターやプロデュースを考えること、表現することになるだろうからね。
実をいうと、TAJIRIと同等かそれ以上に、雑誌インタビューでその人の発言を聞くと、その2論を理路整然と面白く話すなぁ、って人がいる。シンジャこと、佐藤昭雄だ。あの人も、当然WWEなどのアメリカマットで長くメシを食い、そしてケーフェイ絡みにも見えるその種の発言について躊躇しないタチのようだ。彼だって同じような本を書けるだろうとは思うけど、ただまあ日本でのプロレスラー的知名度がちょっとね(笑)。
そういや、今回これ「草思社」から出てるってすごいな(「銃・病原菌・鉄」や「大国の興亡」出してるとこだぜ)。どんな縁でここからの出版となったんだろう??
ま、何はともあれ、読まないうちからそのへん期待してる(笑)。機会あったらちゃんと読んでみよう。