アニス&シーリーンふたたび! 『乙嫁』帰路編、スミス一行はペルシアへ!
中央アジアを舞台に、さまざまな結婚模様を描き連ねていく『乙嫁語り』。
撮影の旅を続けるスミス一行は、アニスとシーリーンが暮らす町へと戻ってきました。「何もやることがない一日」を描いた前後編、
「猫」や「髪」、「風呂」に「手紙」の漫画など、大小さまざまな9篇の作品を収録。
ロシア軍の南下がうわさされるなか、スミスの旅路に幸あらんことを!
唐突にすっごく一般性のない昔話だが、スタン・ハンセンがアンドレ・ザ・ジャイアントをボディスラムで投げたとき、古館伊知郎アナは「世界で5人目!世界で5人目!」と絶叫したという。
その(当時の)5人とは諸説ございますが、アントニオ猪木、ハーリー・レイス、ブルーザー・ブロディ、…えーと、昔はすらっと言えたんだがなぁ。
もちろん、プロレスがプロレスであるところのアレで、ボディスラムで投げる/投げられるともお約束のうちなのだが、逆にいうとアンドレをボディスラムで投げる、というのは、「超一流の格」をそのまま示すものだったのだ。
はい、めっちゃ遠回りの話だけど………
今回、乙嫁語類12巻の冒頭話は、タイトルが「閑暇」。
圧倒的画力で、「何もない1日」を描くのだ。
あるものは、川を渡ろうとしたら渡し船が休業。再開をひたすら待つ。
あるものは、ひとりでおるすばん。つい即興の歌を歌う。
あるものは、海が大しけで漁に出られず、家にいる。
あるものは、約束した相手が風邪で、予定がキャンセルとなり……
なんだが、何しろ、まんがとは、「おはなし」だ。現実には何もない日もあろうが、おはなしの中で「何もない日」を描くというのは、アンドレをボディスラムで投げる以上に技術としても「格」としても難しい。
それを実際にやれるとしたら、やはり超一流であり、「世界で〇人目!」とアナウンサーが絶叫するであろう。
自分の記憶にある話では、もちろん「究極超人あ~る」の…文庫だと3巻か、「真夏の一日」という作品がある。よくぞこれ、少年誌でネームが通った!そして「あ~る」はスペシャルな作品としての格を身につけた、と勝手に解釈している。
森薫は、その実力とも当然ながら連動しているけど、今は「何でもやってやる!どこまででもいける!」という、「勢い」を備えた無敵状態だと思う。そういう時でないと、こういうのは描けない…というか読み手が認めない(笑)。
まあ、そんな感じの、森薫流「何も起こらない漫画」、12巻収録「閑暇」上下編をお楽しみください
とはいえほんとに、連載漫画や連続ドラマを含めて「何も起こらない回」を描く作品を、皆さんご存知かい?
「よつばと!」にはそれに近い回がときどきあったかと思うが、実は俺も、上に描いておきながら具体的作品を言えとなると、よつばと!とあ~るで種切れだ(笑)
皆さんに広く募集したいところだが、まぁ出てこないだろうな。それはしょうがない(なぜか上から目線)。
【追記】コメント欄より。
ポーの一族「1週間」とかは、「何もなかった」に入りますか。あとアニメですが、マジカルエミのOVA「蝉時雨」は1986年で日常系を先取りしてましいた。
今回は「写真」も重要テーマだが
それについてはまた後日。