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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ハーリー・レイスの思い出

ハーリーレイスが亡くなりました。

togetter.com

この人が NWA チャンピオンであった、 NWA の象徴であった…そんな時代を知っている人ももう少なくはなっているでしょうね。

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プロレススーパースター列伝に出てきたハーリー・レイス
ハーリー・レイス自伝 キング・オブ・ザ・リング

ハーリー・レイス自伝 キング・オブ・ザ・リング

ジャイアント馬場がこのハーリーレイスからタイトルを奪った、そして一週間でベルトを奪い返された両方の試合をテレビで見ていた記憶がある。
でな、もともと子供心に、 このハーリーレイスが NWA チャンピオンだから世界最強であり、そのタイトルにものすごい価値がある…というイメージが残念ながら持てなんだ。

アブドーラ・ザ・ブッチャーミル・マスカラス、スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディ…そういったいわゆる「エース外人」と比較して、ハーリー・レイスが飛び抜けて強い、と思ったことは一度もない。それはリック・フレアーも然りで…

だが後ほどわかったことだが…こりゃニック・ボックウィンクルが亡くなった時にもほぼ同じことを言ったのだが(タイプとして全く同じ類型に属する)「なんだあのチャンピオン、確かに雑魚じゃないけれど、そんな強そうにも見えないし、実際に我らがヒーローに押されっぱなしじゃないか!! 最後は反則絡みの卑怯な手で逃げられちゃったけど、実力じゃこっちの方が上だぜ! 次にタイトルマッチしたら絶対に我らがヒーローが王者さ!!」…と思わせる試合をするのが商売だったんだよね。

これは NWA という組織がローカルプロモーターの集合体で、王者はそこをあちこち転戦してタイトルマッチを地元エースと戦うのが仕事だったから、実はルーテーズの時代からそういう戦いぶりが求められていたらしいのだ。三本勝負という形式が昔は主流だったのは、一本をローカルヒーローに譲って見せ場を作らなければいけないという意味合いもあったのだそうだ。

ハーリーレイスはそういう風潮の最後…ではない、何度もタイトルを取ったり取られたりした間柄のリックフレアーに引き継いだ、昔気質の王者だった。そのファイトスタイルがゆったりもったりに見えるのは古き良き時代のファイターだったというのと同様に世界中を回るハードスケジュールの中で試合を成立させるスキルだったのかもしれない。
流智美の本で読んだ話だと思うが、レイスは若いレスラーがスケジュールがきついとこぼすと「俺は3日で…いや日付変更線を越えたから二日で、タイトルマッチを計3回行ったんだぞ。その試合結果はどうだったか?三試合とも60分フルタイムのドローだった」と、ブラック企業の経営者や 老害みたいなことを言っていたんだ。


ただそれでも、近代プロレスへの橋渡し的なものも持っていた世代で… トップロープ最上段からのダイビングヘッドバット( 相手の額にではなく、肩にぶつけるのが穏健な当時のプロレスだった)、バーティカルスープレックスとも呼ばれた、滞空時間のすごく長いブレーンバスターとかが得意技。「ブレーンバスターは滞空時間が長い方が効き目があるんだ」「どうして?」「…理由はわからん」というような会話を当時友達としていたぞ。


と同時に、ハーリーレイスはシューターであったとも言われる。それも鉄人ルーテーズのいうところの「レスリングやサブミッションの技をたくさん知っているシューター以外にも、『酒場の喧嘩で強い』シューターもいるんだ」という時の後者として、皆が口をそろえていた。男気があって親分肌なので、結構差別がないように睨みを利かせていた…という話も聞かないではない。特に日本から遠征した若手に対してはジャイアント馬場との義理もあって大いに面倒を見てあげて、そして控え室では「おい…あの Japanese、レイスさんと 親しいらしいぞ」「奴にいじわるに当たると、ちょっとまずいな…」みたいな感じで保護を受けた、ともいう。ブッチャーも、レイスとの派手な抗争(=互いに認め合った)は、逆に黒人レスラーの彼が、プロレス業界内での居場所を守ることにつながったらしい。

そして晩年は、そのプロレス界の中での、NWA王者に何度も輝いたというスペシャルな地位を、WWEの中でよくわからない「キング」というキャラクターに変換し、最後の輝きを放った。このキングの地位を「プリンストンガ」に譲って「キングハク」になる、という不思議なストーリーもあったらしいが(リングネームはまた別かな?ただ王冠を譲ると言うギミックは実在した)、これもある意味「控え室の喧嘩が強いシューターという称号を次世代に譲った」と考えることができるかもしれない(笑)

そしてエピローグとして「ベイダー」のマネージャーとして活躍。ベイダーもベイダーでスペシャルな大物だが、そこにレイスがマネージャーでつくというのは、 ロビンマスクウォーズマンのコーチである、ぐらいのインパクトがあった。


そんな思い出が残る、往年の名レスラーであった。

レイスのテーマではなく 「NWA チャンピオンのテーマ」とされていた 「Galaxy Express 」が、この文章を書いている時も脳内に響き渡っていた。

"Galaxy Express" - World Champion Theme 世界王者のテーマ


安らかなれ。