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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

大坂の陣は「14年ぶりの大戦」。73歳の家康は完全に「近頃の若いもんは…」モードだった話(真田丸)

「恒久的な平和なんて歴史にはなかった。だが何十年かの平和で豊かな時代は存在した。要するに私の希望は、たかだかこの先数十年の平和なんだ。だがそれでも、その1/10の期間の戦乱に勝ること幾万倍だと思う。」(ヤン・ウェンリー
http://taketan22.blog72.fc2.com/blog-entry-66.html

と、いうことで。
実のところ、関ヶ原から大坂の陣までは14年の歳月があった。
今の時代感覚から考えてくれ、2002年の話だ。日韓ワールドカップのあったときだ。小泉訪朝と、拉致事件被害者の一部帰国があった。
その前年に「9.11」があった。
そんな前であり、しかも当時は早々と隠居し、息子に家督を譲っている。いくさは力仕事、動く仕事でもある以上、2002年ワールドカップの選手が今も現役か?という話ですよ。あ、プロレスラーで当時もいまも現役のやつは多いか(笑)

ゆえに。


自分もひとつ紹介しよう…といっても当然じぶんは古文書などに直接はあたれんので、司馬遼太郎からの孫引きとなる。


……家康はついに終生、その精神に老化現象がみられなかったという点でめずらしい人物だが、この時期ばかりは
「いまの連中は」
と、そのことのみ罵り、ひとり不快がり、味方の様子がなにもかも気に入らなかった。
たとえば、井伊直孝の部隊である。
家康は先代の井伊直政を愛し、甲州武田家がほろんだあとその遺臣を大量にめしかかえたとき、それをことごとく井伊家に付けた。
井伊の赤備え」といわれるのは、武田の赤備えを踏襲したもの…
(略)
その井伊勢が二条城下を通過したとき、家康は城門の楼上から見ていたが、
「信玄の遺風も衰えたものよ」
(略)
若侍どもである。彼らは天下に誇る赤具足をさらに綺羅にして美々しく作り人形のように美しかったが…
(略)
「ばか者めが」
家康は身をふるわすようにして言ううち、ただ十騎だけ古色に装うたものが現れた。…色目も褪せた古い剥げ具足に、木綿の陣羽織を無造作に羽織り…

彼らを目にとめた家康は、経歴を確認せよと近習に命じる。
はたして甲州のベテラン兵だったそうな。

司馬は、「小早川式部翁物語」から原文を引用している。

「アノ光輝く若者共は何も知らざる奴ばらなり。アノ年寄どもの、しかも古き羽織打ちかけて乗ったる者、武功ある者なり。物見をも心得てすべし。武辺ある者の体は、見てもこころよし。若武者の光り輝くやつどもは、何も知らずして仏彩色したるごときなり。見度くもなきかな」

司馬遼太郎「城塞」より孫引)


ほかにも同書には「冬の陣」に続き「夏の陣」があったことで自前で出陣の支度を整える旗本たちから「軍事費が足りませぬ」「軍備を整えるため、臨時の支給をいただけないか」という声があがり、それをもっともと阿茶局がとりなしたところ、

「金を貰えぬなら出陣の支度がしにくいと申している面々には、心のままにせよ、と伝えよ。出陣する必要は無い」
「みなの性根がそこまで腐りはてたのなら、家康ひとりが上方へのぼる」

と激怒し、

阿茶局、言葉なくて、ただめでたしめでたしとばかり申しあげて退出なり。もちろん本多上野介らの面々、一語も発せざりし也
(村越道伴覚書)

だったとのこと。
はたして、家康が「老害化」していたということか、
やはり14年平和があれば武や軍の記憶など薄れてしまうものなのか、
実際にああいう戦場ではやはりベテラン兵士が若武者より頼れるものなのか……


そういえば、同書には秀忠が関ヶ原のトラウマから行軍速度をすごく早めて、早々に到着したことを
「それじゃ侮られるだろ!天下の将軍ならもっと余裕しゃくしゃくで、武威を示すためにゆっくり行軍すべきなのに…」
と家康が怒った話も出てくるな。


そのへんは分からないが、ともかく「14年」よくもわるくも平和があり、たとえば豊臣秀頼もその中で生き、成長した。それが打ち破られたのが大坂の陣だったと。
「14年間も戦争なかったのに、
また始まるの?」
にがっかり、ガクブルの人もいたろう。
だが…
戦争は、残念ながら「丸山真男をひっぱたきたい。」じゃないが、固定された身分秩序を打ち破る立身出世のチャンスであった。
そして後から見れば或る意味「最後のチャンス」だった。現状に満足しないベテラン兵も老将も、逆に「実戦を良く知らない」若武者も…(真田幸村もよく考えればこっち側であること、今回のドラマでもよく描かれている。)



そんな視点で見ると、あと残りわずかとなった「真田丸」も別の楽しさが出てくるかも。