INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

サウジアラビアに「危険な冒険主義者か、果断な改革者か?」と注目される謎の副皇太子がいる。彼は「日本のアニメにも詳しい」(朝日新聞)/池内恵も懸念

2/5の朝日新聞国際版に、渡辺淳基記者の大型記事が載っていた。あ、これこれ

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12194637.html?
中東の大国サウジアラビアのサルマン国王が即位して1年がたった。イエメンへの軍事介入やイランとの断交など強硬な姿勢が目立つ新体制で、政府の「顔」として頭角を現したのが国王の七男ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30)だ。国防相として軍を動かす一方、経済政策にも影響力を持つ。謎めいた若き指導者…

目立った実績がなかったムハンマド副皇太子の任命は波紋を広げた。ムハンマド副皇太子は国王の息子たちのなかでは珍しく欧米への留学経験がない。人物像は謎に満ち、SNSで「粗野な問題児」と指摘する投稿も相次いだ。昨年3月に始めたイエメンへの軍事介入が長引くと、批判は強まった。国防相を兼ねる同副皇太子の「実績づくり」との指摘が当初から出ていたためだ。
 副皇太子は今年1月、イランとの外交関係断絶に踏み切ったサウジの決定にも関わったとみられ、その姿勢を「独断専行」「冒険主義的」と報じた欧米メディアは少なくない。

 ■聖域にメス、評価も

 だがサウジ国内では、ムハンマド副皇太子を「若き改革者」と評する声もある。
 昨年末、政府はガソリンや電気、水道料金の大幅値上げを発表。年約1千億ドル(約11兆7千億円)を超えるとされるバラマキによる料金抑制を縮小し、痛みを伴う改革に踏み込んだ。
 改革のとりまとめ役を担ったとされるのがムハンマド副皇太子だ。22閣僚を束ねる「経済・開発評議会」の委員長を務め、民間企業の意見にも耳を傾け(略)…「家計や企業に短期的打撃はあるが、長期的には欠かせない政策だ」と

新婚旅行で日本を訪れたことがあり、日本のアニメにも詳しい親日としての顔も持つムハンマド副皇太子。

まあ、ガンダムあたりでしょうか(推測)。神龍とか魔法使いが出てくると偶像崇拝だろうし(偏見)。あ、でも「ジン」扱いすればいいのか?
そもそも記事にこんな情報いるのか、と思わないのでもないのだが、ならばそんな所をなぜ引用してブログに書くんだ、と自分に返ってくる(笑)

まあ彼が、日本のアニメの、どの作品がどのように好きかは置くとして…
そもそも、サウジ要人に「冒険主義者」がいるのがヤバいのはわかるとしても、「改革者」だって危険な面がある。

改革に取り組むムハンマド副皇太子の姿勢があだになるとの見方も出始めている。中東の地政学に詳しいアナリスト、セオドア・カラシク氏は「急激な改革を進め、結果的に国家の崩壊を招いたソ連を思い起こさせる。性急な改革が国民の反発を招く恐れも……

ここで池内恵氏の論考を紹介。サウジの行動そのものより、サウジへの欧米の論調が変わったことに注目せよ

【寄稿】年初のサウジ・イラン緊張について『中東協力センターニュース』に – 中東・イスラーム学の風姿花伝 http://ikeuchisatoshi.com/%e3%80%90%e5%af%84%e7%a8%bf%e3%80%91%e5%b9%b4%e5%88%9d%e3%81%ae%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%82%b8%e3%83%bb%e3%82%a4%e3%83%a9%e3%83%b3%e7%b7%8a%e5%bc%b5%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%80%8e%e4%b8%ad/

ここから経由して

http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2016-01/josei02.pdf
 むしろ今回のサウジ・イラン関係の紛糾に際しては,対サウジの批判的な論調が,欧米を中心とした国際メディアに多く現れたことが特筆される。従来であれば,イランとの対立に関する限り,欧米諸国のメディアは同盟国としてのサウジに共感的であることが多かった。サウジと GCC 諸国は,サウジ系資本のアラビア語衛星放送局アラビーヤやカタール王家が支配下に置くアル=ジャジーラ,あるいは汎アラブ主要紙の『シャルクル・アウサト』など,地域の有力メディアを押さえて好意的な報道と論調を作り出してきた…
(略)
欧米の主要メディアで,有力・著名論客を含め,一斉にサウジ批判と間接的なイラン擁護の論調に転じたことがより重要な点である。『ワシントン・ポスト』紙は1月3日に「サウジアラビアの向こう見ずな政権」と題した社説を掲げ,『ニューヨーク・タイムズ』紙も1月4日にサウジの処刑を「野蛮」と形容する社説を掲載した。同日の同紙の記事の中では,サウジによる批判への反論がPR 会社を通じて伝えられていることをあえて記すなど,サウジの議論の正当性・妥当性に極めて冷ややかな態度…(略)『フォーリン・ポリシー』誌になるとさらに痛烈で,イラン系とみられる論者の「サウジアラビアは中東のジョージ・W・ブッシュ」とこき下ろす論説を掲載し…

……サウジに批判的な論調の多くが,今回の大量処刑や宗派紛争の刺激といったサウジの個別の行動への批判にとどまらず,サウジの体制の性質そのものに対して疑問符を呈するものになっている点は興味深い。従来であれば,個々の行動ではなく体制の性質を問われていたのはイランだったからである。そして,サウジの体制の性質の問題が,サルマーン国王の子息で国防相であるムハンマド副皇太子の台頭とその権力集中という問題に集約されて議論されている


サウジアラビアって存在は、もとより…たとえばイランと比べたら民主化の度合いが低いこというまでもない。しかし、石油がシェールオイルによってアメリカがまかなえるようになったら、論調がガラッとかわる…というのもなんだかだよね(笑)。

でも、サウジ王制は内部の権力争いやイランとの「中東冷戦」も重要だが「欧米メディアのサウジ評価」も重要だ。サウジは各国の大手広告代理店、PR会社と契約もしているのだが、そろそろめくれちまいそうである。NYTのように、逆に「あいつらは大手PR会社とつながっている」をネガティブキャンペーンに使うこともできる。
ある国のイメージが、広告代理店の暗闘によってがらりと変わり、それが大きく世界情勢を動かす…という話は名著

をごらんください。

サウジには「アメリカを離れてロシア中国と組む」という選択もある。石油も「安値競争、やるなら来い」戦略もある…

サウジは「基本的価値観をアメリカと共有」した同盟国ではないから、もしアメリカとイランとの関係が改善されていくなら、サウジは中国やロシアと組むという選択は、日本や韓国と違ってとりやすい。
また、サウジが一番苦しいのは結局原油安のせいだけど、「ソ連を最終的に倒したのはサウジ国王」といわれる、「安値にかまわず増産してれば、先に倒れるのはほかの産油国だ」という武器もある…いつまで持つかな?