INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

最近のとある報道で「催涙スプレー」の持ち歩きは合法らしい、と知った。

この前の痛ましい事件の報道で知った「防犯スプレー」と法

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015082702000116.html

大阪府寝屋川市の中一女子の死体遺棄容疑で逮捕された山田容疑者は、スタンガンが警察に見つかった際「護身用」と説明、任意提出を拒んだ。犯罪に使われれば危険な凶器となるが、専門家は「正当な理由があれば所持自体の違法性は問えない」と取り締まりの難しさを指摘する。
 「ちょっと変だな」。事件二日前の十一日午前零時十五分ごろ、東京・秋葉原をパトカーで巡回中の警視庁の警察官が、路上にいる車をいぶかしんだ。男性二人が乗った大阪ナンバー。「ちょっと遊びに」。運転していた山田容疑者らは職務質問にこう答えたが、ボストンバッグからはスタンガンや手錠、注射器が出てきた。
 警察は直ちに最寄りの警察署へ任意同行し、薬物の尿検査を実施したが、結果は陰性だった。スタンガンについても、正当な理由がない凶器の所持を禁じた軽犯罪法違反に当たるかどうか検討したが、最終的に「法令違反は問えない」と判断し、約三時間後に山田容疑者らを帰した。
 元警視庁捜査一課長の田宮栄一さんは「犯罪に使用される明確な根拠がないと、法的に身柄確保まで踏み込めない。無理な摘発は人権侵害に当たる可能性もある」と対応の難しさを強調する。

これは判例があるとか。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37481

平成20(あ)1518
事件名  軽犯罪法違反被告事件
裁判年月日  平成21年3月26日
法廷名  最高裁判所第一小法廷
裁判種別  判決
結果  破棄自判
判例集等巻・号・頁  刑集 第63巻3号265頁
原審裁判所名  東京高等裁判所
原審事件番号  平成20(う)872
原審裁判年月日  平成20年7月9日
判示事項  1 軽犯罪法1条2号にいう「正当な理由」の意義及びその存否の判断方法
2 軽犯罪法1条2号所定の器具に当たる催涙スプレー1本を専ら防御用として隠して携帯・・・(後略)


小型の催涙スプレー1本を入手した者が,これを健康上の理由で行う深夜路上でのサイクリングに際し,専ら防御用としてズボンのポケット内に入れて携帯したなどの本件事実関係の下では,同隠匿携帯は,同号にいう「正当な理由」によるものであったといえる。

「カッターナイフ所持で逮捕 in 秋葉原」を再度考える

格闘技をよくテーマとして論じる当ブログだが、今回の事件をきっかけに「催涙スプレーの持ち歩きは問答無用で違法としろ」「もっと”正当な理由無く凶器を持ち歩き”の範囲をガーンと広げよ」とはとても言えない。

場所が秋葉原だった、というと、まさにその問題が何度も勃発したところなんだよなあ。
例の、カッターとか十徳ナイフとか、そういうやつね。


あ、この話を体験談や判例ブログから探そうと思ったら、警視庁が先回りしてこんなのを作っていたよ!!!!!
「よろしい わかりやすくご説明しましょう」
「警察もななかなかアジなマネを…」(こち亀風)

刃物の話

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/hamono/hamono.htm

 明日は新作ゲームソフトの発売日。AくんとBくんは、前の日から徹夜でゲームを入手するために電気街に行く相談をしています。
 
Aくん 絶対新作ソフトを手に入れるぞ!そのために、バイトも休んで明日に備えるんだ。
 
そうそう、こういうのは発売日にゲットしてこそ、その価値があるってもんだよね。
 
Aくん でも知ってる?新作の発売日には、みんな金持ってるから、強盗や恐喝にあいやすいんだって。
 
オタク狩りというやつだね…。
 
Aくん 護身用としてカッターナイフを持って行こうかな。いざとなったとき役に立つかなあ。まっ、パッケージを開けるのにもカッターナイフは役に立つし、いろいろ使えるよね。使えるって言えば、このツールナイフも、アクセサリーとしてもオシャレだし、いろんなツールがあって楽しいよ!
 
ちょっとちょっと、Aくん、それ、やばいよ。カッターナイフもツールナイフも持っていたら、取締りの対象になることがあるんだぜ。
 
Aくん えーそうなの?でもツールナイフは買ったとき、お店の人が…(後略)

刃体の長さが6センチメートルを超えていなくても…


 一方、軽犯罪法第1条2号では、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者は、拘留又は科料に処する」とされています。

 つまり、上記銃砲刀剣類所持等取締法に該当しないものであっても、取り締まり対象となる場合があるわけです。正当な理由がなく、刃物などを隠して携帯することは、人の殺傷などの犯罪に結びつきやすいことから、そのような行為が禁止されているのです。


これが駄目でスプレーはOKです、という状況にん?と考えないでもないが、それが法というものの何か、なのであるのです。
関連過去記事あり。

「スイスアーミーナイフ(十徳ナイフ)を持つと銃刀法違反なのか?」と朝日新聞「窓」。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111029/p3
 
「少女バッグ拉致未遂事件」であるコメンテーター「スイスでは子供に皆(十徳?)ナイフを持たせてる」(ミヤネ屋) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120906/p2

「自衛の権利」や「武器所持の権利」について

つい最近、フランスの「ライシテ」を含む各種の宗教政策についての議論を聞いたのだが、フランスのかなり特殊な対宗教政策を聞かれたフランスの出席者が

「権利は国の歴史や伝統で違う。たとえばアメリカは銃を持つ権利がある。フランスには無い。そんなもんだ」


……まあ、まったくその通りだと思うが
「人権は、最高存在や造物主が全人類に平等に与えたもの」というフィクションを尊重する気がカケラもないな、と思ったりしたものでした(笑)。全人類は平等だが、認められている権利はその国の憲法、法律によって違う。
その自由の国のひとつアメリカで、銃の所持や携行が認められる伝統とは…。
過去記事参照

「3Dプリンター銃」、本当に怖いのは、実物以上に(アメリカの)開発者の”思想”だ…昨年の記事を再掲載。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140509/p2
 
「武器によって、強者と弱者(例えば男女)は平等になる」という、とある信念 -
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131109/p4

格闘技と護身と武器。

これは以前じっくりと書いたので、それでいいつくしている。

『最強論議』に結論⇒「社会的に携行可能な武器の使い手が最強」。〜では、今の日本では? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150617/p1

携行スプレーがOKなら、護身の体系もそれによって変わってくるかもしれない。
『柔道で寝技が「30秒で押さえ込み一本」なのは、30秒なら押さえ込んだ相手の頸を脇差しでかき切って討ち取るのと同じだからだ』
という、本当かどうか確認できない嘉納治五郎、ほんとに言ってるの?)話があるが、そのひそみにならえば、格闘技や護身術も、これからは
 
「相手の打撃をかわして、ポケットの携帯スプレーを取り出して至近距離から顔面に噴射するまでの型」ができたり、

「相手を押さえ込んで、一度道着のポケットに手を突っ込み、顔面にかざしたら(携帯スプレーを相手にぶっかけたのと同じと見なして)一本勝ち」とか、そんなふうに変わるのかもしれません。

コメント欄より

id:machida77 2015/08/31 09:29
くだんの催涙スプレーの判決ですが「これといった必要性もないのに,人の多数集まる場所などで催涙スプレーを隠匿携帯する行為は,一般的には「正当な理由」がないと判断されることが多いと考える」とあり、危険を感じ、身を守る必要性がある状況ではないのに持ち歩くことは正当な理由とみなされないようです。要するに犯罪の危険性がない場では持ち歩けないわけで、制限があると考えたほうが良いです。
(ナイフの場合は殺傷力の問題もあってまるでダメ)
で、技術的な話をすると催涙スプレーは至近距離で使うものではないので、護身術としては使用時のテクニックはどういう局面で使うかという話になりがちです(そういうテクニックのDVDもあります)。逆に犯罪者に使われた際にどうするかという技術や知識を教えている例もあります。