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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「もし中世にインターネットがあったら?」…ある訳無いけどさ、魔法で代用できたら?

まず、こんなtogetterの紹介を。

インターネットを予見したようなSFについて - Togetterまとめ http://togetter.com/li/797205

おっさるとおりに、ネットを予言したような「電話網の進化」というSFは多かったが、惜しむらくは「2001年宇宙の旅」のような進化した人工の知性が、人間に叛乱を…的な方向に行くことが多かった。


まあ、インターネットという便利かついろんな問題を起こす環境、だけでSF小説を書くのはちょっと難しかっただろう。
ちなみに自分もちょっと心がざわついてコメント欄で連投してますけど(笑)、そのテーマをふたつに分けて再論します。

まず最初のほうの話。少し補足して再掲載。

最近読んだ歴史本の中に「宗教改革の)ウィクリフヤン・フスがインターネットを知ったらどう思うだろう」という一節があった。で、ファンタジーの中には、「設定上、無線に相当するものがあったほうがいいな」「飛行機相当のものがほしいな」と、魔法で交信する水晶球とか人が乗れる翼竜とかを登場させる手法ってじゃないですか。「舞台は中世だけど、魔法でインターネット相当のインフラがある社会」のファンタジーというかシミュレーションをだれかに書いてほしいな。

まず、ある歴史本というのを紹介しましょう。

インターネット上においては 基本的に個人の意見が検閲を受けずに自由に発表できるのである。しかも個人でパンフレットを作成するなどという場合と根本的に違うのは、極めて容易にコストに悩まされることもなく 世界に向かってあまねく主張をのべることができるという点だ。。
こう言えば もうおわかりだろう。これは人類が一度も達成したことのない、極めて革命的な状態なのである。

中世におけるキリスト教宗教改革マルティン・ルタージャン・カルヴァンの功績だが、彼らは最終的に成功したから、歴史に名をとどめた。
しかし、それ以前、悲運に倒れたイギリスのジョン・ウィクリフボヘミアヤン・フスらが、もしインターネットの事を知ったら何と感想を漏らしたろう。
「これさえあったなら」というに違いない。

(※注意 この1巻の本題はエジプト、中国の古代文明です。上の記述はヒエログラフやパピルスの話から派生した脱線話。)


ちょっと面白いのは、井沢氏がこのことを考えるに至ったのは、ある読者から「テレビでXXXについて語ったとき、先生は持論のXXXXを語ると期待していたのに、触れませんでしたね。失望しました」という投書を貰ったことだったという。
そのことについては「しゃべったけど編集された」という井沢氏は、大いに不満だったのだが「そうか、今はインターネットの存在で編集でカットされるということが実感されない世代が言ってるところの【全文革命】が証明された、とも言えるな。
まあ、それは枝葉なので、興味あるひとはこっちにでも。

【全文革命】
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100305/p6
http://togetter.com/li/386371
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20111128

宗教改革ルネッサンスがグーテンベルグ活版印刷と大いに関係していることはいうまでもないですな。「考え、情報が存在する」⇒「それを広める」の間に「技術的制約」「物理的制約」があることもまた、いうまでもない。
しかしアフリカや南米の津々浦々に、携帯、スマホが普及した今、「考えや情報を伝えるコストや制約があたうかぎりゼロに近くなった社会」という言い方をしても、確かにそう間違いではないような気がする。


そんな社会が21世紀にようやくやってきて、フスやウィクリフの時代には無かったのは、歴史の必然か偶然かは分からないけど、現実にそうであった。


おおそうだ、ミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」のメイン曲はこういう歌詞だったじゃないか。

http://aplac.info/thisweek/essay605/605.html

Every time I look at you I don't understand
Why you let the things you did get so out of hand.
You'd have managed better if you'd had it planned.
Why'd you choose such a backward time in such a strange land?
If you'd come today you could have reached a whole nation.
Israel in 4 BC had no mass communication.
いつだってあんたを見ていて、俺には理解できなかった。
どうして、自分のやってる物事をコントロール出来ないところまで持っていこうとするのか?
もし最初から計画立ててやってたら、もっと上手く出来た筈だ。
どうしてこんな勝手も知らない土地で、しかもこんな昔の時代を選んだんだ?
今だったら国全体を巻き込むことだった出来ただろうに、
紀元前4年のイスラエルにはマスコミなんてものはないんだからね。

なら、そこをばっと飛び越えるのが「SF的想像力」。
「そういう技術が、中世社会にいきなり実現していたら????」という想像、なかなかおもしろそうじゃないですか。



その例として、「ドリフターズ」の「水晶球=無線」とゆうガジェットを挙げる。

いまだ全貌が見えないドリフターズだが(あれだけ休載すりゃ当たり前だ!)、平野耕太氏の構想するこの作品では、軍事描写的に「無線」は欲しかったのだろう。しかし、このファンタジー世界に無線はちょっとそぐわない。そこで無線と同じ役割を果たす水晶球、を登場させ、しかも異世界の住民は発想が違ってこれで軍を連携させることは思いも付かず、軍事的存在のドリフ信長がそれに気付く…という。
こういうのが、やっぱりSF、ファンタジーの醍醐味っすよね。
平野ワールドは「空戦」もやりたいらしく…というか連合艦隊の海戦を再現したいらしく、戦闘機、爆撃機代わりに「人が乗れる怪鳥」が存在している世界ということにしている。


【追記】「パンプキン・シザーズ」と「皇國の守護者」
コメント欄より

バイト 2015/03/21 22:09
ドリフでは軍事的側面に焦点が当てられていました「皇国の守護者(小説版)」では導術=テレパシーが皇国の経済的優位の理由の一つ(ドリフと同じ伝達速度から為替や先物が発達)であり同時に弱兵の皇国の唯一の強み的描写がされていました。帝国では導術が宗教的理由から禁じられ皇国と貿易赤字が発生し侵攻の理由になっていましたが、ISILは普通にTwitterとか異教徒の技術を活用してるので、現実はわりと身も蓋もないですw
id:mondojirou 2015/03/21 23:48
gryphonさんはパンプキンシザーズはどの辺まで読んでますか?今ちょうど無線とかその辺のテーマを、漫画なのに文字たっぷりで語ってて面白いです。

そうだ、そうだった。
 
パンプキン・シザースの世界は「技術の進歩に不自然なアンバランスさがある」のが特徴で、そのアンバランスさが実は一つの謎解き、テーマの一つであります。
さらに興味深いことに「科学の超・大大大天才は、本質的に『未来から来た男』と同じなんじゃないか?」というちょっと面白い問いかけもあったりします。だがそれは別のエントリに譲ろう。
その世界では「電信」はそれなりに使われているけど、慣習的にまだ公的な使用がはばかられ、まだ一般的には普及していない。そんな中でも「無線」や「電信が完全に一般に普及した社会」は<SFとして想像されるぐらいのリアリティがある>という世界なんです。それを巧く使ったエピソードは秀逸でした。


そして「皇國の守護者」。舞台は基本的に日露戦争の時代より少し前ぐらいの技術水準、ライフル銃が珍しいような世界…だが、ここで”皇国”側には「導術」という、、無線通信機とレーダー・ソナーを併せ持つ超能力者が部隊に配置されている、という設定があります。
しかしその術は、術者の体力を著しく後退させるという弊害が出ました。
その中で、情報をどうやって集め、参考にするか…




つまり、こんな感じで…。
まだ電気も内燃機関もない中世だが、何かの魔力によって、通信というか、情報を広める仕組みだけはインターネットと同様のパワーを持つ何かがある中世社会。
そこでの宗教改革の進め方は……というIf。
ウィクリフのフォロワー25万人。フスのフォロワー32万人。ルターのフォロワー100万人。ローマ教皇からはブロック(笑)……』。みたいな。

あと、こういうのもいいかな。魔力によって広く主張を無検閲で広めることができるのだけど、その魔力は夜10時から翌朝5時までが無制限で、それ以外の時間は制限されていた(笑)。だが大魔術師ソーンの大魔法で、24時間この魔法が使えるようになった、とかね(笑)。たとえが古いよ!!!


逆に、古い時代をみて「この時代のインターネット/メディアに相当したのは何だろう?」と考えるのが好きです

「まおゆう」では吟遊詩人、「相国のアルタイル」では旅芝居をメディアとして、プロパガンダを喧伝するという話があったが、それをどこまで意図的にやっていたという史実があるのかね。ちょっとフィクションという感じもするが、フィクションでもまた楽しいかな。


ほかに、江戸時代の蘭学者とネットワーク、コミュニケーションについてこういうのを書きました。

■18世紀の「人力検索はてな」。建部清庵杉田玄白(「風雲児たち」関連)http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070927#p5

雑誌の投稿欄、読者欄がインターネットに近いコミュニケーションを生んでいたあのころ、を書いた

は傑作。


ここに、インターネット以前に一番インターネットに近かった「アマチュア無線」のことでも付け加えれば完璧なのでしょうけどね。



余談。「星新一のインターネット予言作品」列伝

最初のtogetterのコメント欄より

あと、「インターネットを想像したSF作家」つったら星新一ショートショートほうのうでも、、タイトルは忘れたが自分認定では4つもあります。

gryphonjapan @gryphonjapan 1時間前
1:防犯カメラがすべて自宅のテレビと接続、いながらにして世界中の風景がみられる。暇人の主人公はそれを一日中見て、貴重な休日を潰す…

ごたごた気流 (角川文庫)

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2:株取引もデリバリーもすべてが電話で済ませられる時代。暇人が声帯模写を覚えて(これも電話の通信教育で習う)『成りすまし』も駆使してビジネスまで行う…(おれおれ詐欺まで予見してるじゃん!)
(何に収録だったかなあ?)


3:作曲、映像製作、印刷などの機材がすべて一般人も自由に、楽に使えるようになった時代。それはいいんだが、素人がわれもわれもとコンテンツを作り出し、皆が皆の作品を義理でみて、義理で褒めなきゃいけない辛い社会になる(笑)【これは「未来いそっぷ」収録と覚えている】

未来いそっぷ (新潮文庫)

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4:テレビ局でいきなり「来た人間が外に出ることが出来ない」というハプニングが勃発。そのアクシンデントはそのまま放送され、臨場感たっぷりでダダ漏れのこのコンテンツが大受けになる(ニコ生だ)。…インターネットそのものじゃないけど、ネット周辺の出来事を一番的確に予言していたと思う、星新一

さまざまな迷路 (新潮文庫)

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