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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

3/10、東京大空襲の「東京都慰霊堂」「法要」に「首相」が初参加…「政教分離」との関係は

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015031002000261.html
 一夜で約十万人が命を落としたとされる一九四五年三月の東京大空襲は十日、七十年の節目を迎えた。遺骨が安置されている東京都慰霊堂墨田区)では追悼法要が営まれ、遺族らが犠牲者の冥福を祈り、平和を願った。

 安倍晋三首相は追悼の辞で「過去に謙虚に向き合い、悲惨な戦争の教訓を深く胸に刻みながら、世界の恒久平和のために貢献していく」と述べた。主催した都慰霊協会によると、首相の参列は初めてとみられる。
(略)
 法要には約六百人が出席。舛添要一知事は「平和の祭典である五輪の開催都市として、今日の平和を次の世代に引き継いでいく責務を果たす」と語った。秋篠宮ご夫妻も参列し、焼香された

要点は太字にしてある。

さて

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

これと、上記事の関係だが、…「各自調査」。

いや、すまんね。でも実際、検索しても、この東京都慰霊堂で行う空襲被害者の「法要」(仏式)や、築地本願寺で行われる関東大震災犠牲者の「法要」と、公共機関の関係というのは実は当方、よくわからないし、検索した限りでもこれは!という資料はあんまり出てこないのです。


ではこの機会に、「東京都慰霊教会」について

http://tokyoireikyoukai.or.jp/kyoukai/

公益財団法人東京都慰霊協会は、東京都内の災変遭難者及び公共功労者の永久的総合祭祀を行い、永くその至誠を感謝し冥福を祈り霊を慰めるとともに、過去の震災・戦災を教訓として風化させないよう広く後世に引継ぐことを目的として設立しました。


本会の主な事業
指定管理業務
1.慰霊納骨堂の維持運営事業
年間(但し、12月29日から翌年1月3日を除く)をとおして、開堂、清掃及び供花を行い、毎月2回慰霊供養のための読経を執り行う。
 
2.慰霊大法要の執行及び慰霊供養施設の管理
慰霊大法要(年2回)
遺族、皇族、東京都ほか関係団体・協賛団体の参列及びボーイスカウト東京連盟墨田地区等のご奉仕を得て開催している。
春季慰霊大法要(毎年3月10日 午前10時〜11時)
秋季慰霊大法要(毎年9月1日  午前10時〜11時)

ああ、もっと端的な論文があった。

http://religiouslaw.org/journal/wp-content/uploads/2014/02/201309.pdf

関東大震災先の大戦末期の東京大空襲の犠牲者を、今なお仏式法要によって慰霊している東京都慰霊堂のケースを紹介する1)

東京都墨田区横綱町公園の一画に、仏式大伽藍の東京都慰霊堂がある。この慰霊堂は、現在、東京都が所有しており、その管理は、昭和20年9月に設立された財団法人「東京都慰霊協会」に委託されている。
この慰霊堂が建設された経緯は以下の通りである。
大正12年9月1日の関東大震災における犠牲者は10万5千人余にのぼったが、そのうち5万8千人の遺骨を納める慰霊堂が、官民有志多数の協力と浄財とによって建設された。総面積は1413平方メートル、総鉄骨鉄筋コンクリート造りの大伽藍で、昭和2年に着工、3年後の昭和5年9月1日、大震災8回忌の当日に完成した。そして「震災記念堂」と命名された。
その後、さらに昭和20年3月9日、10日の東京大空襲の犠牲者ら総計10万5千人も併せて祀られることになり、名称も昭和26年9月に「東京都慰霊堂」と改称された。
慰霊堂の祭壇内には、両遭難者の霊位牌が祀られ、祭壇奥の納骨堂には、引き取り手のない遺骨が奉安されている。
「都内戦災殉難者・大正震災遭難者慰霊大法要」は毎年3月10日と9月1日に営まれているが、法要は東京五山(護国寺増上寺浅草寺寛永寺、本門寺)の住職が輪番で大道師を勤めている。そしてこの仏式の慰霊法要には、皇族方や東京都知事、都議会議長らが参列して追悼の辞を述べ焼香するが、式典には東京都職員が公務として関与している。


どーなんですかね、今の憲法的には、公益財団法人が法要、読経などの事業を行い、その行事に首相や知事、皇族が出席して、焼香などの儀礼を行ってもOKなんですかね。



自分がもし、憲法解釈に関係なくこういうのに公人が参加していいのかどうか、という話を決める立場なら「ああ、別にいいよっ」てな話になる。つまりフランス的な厳格な「ライシテ」はやっぱりとらないのだな。もちろんキリスト教のミサでもOKよ。
宗教儀礼をもっと混沌として、いいかげんで、相互矛盾した軽いものにする「作りかえる力」(芥川龍之介)ことで牙を抜く日本流だ。


本当に「一切の」政教分離ーライシテを求めるフランス派はあんまり日本にはいないのだろうね。

村山富市首相から安倍晋三首相まで、さまざまな歴代首相が行っている「伊勢神宮参拝」は、問題になってないわけじゃないが、非常に反対の声は小さい。

安倍首相の伊勢神宮参拝をめぐる宗教学者のやり取り - Togetterまとめ http://togetter.com/li/434116 @togetter_jpさんから
 
赤旗】首相、伊勢神宮参拝/11閣僚も 政教分離に違反 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-06/2015010602_03_1.html
  
首相の伊勢神宮参拝に対する抗議声明
(註:文書がダウンロードされます)
www3.ocn.ne.jp#:#http://www3.ocn.ne.jp/~nikkits/yasukuni/130105abekougi.doc

首相の伊勢神宮参拝に対する抗議声明. わたしたち日本キリスト教会靖国神社問題特別委員会は、歴代内閣に対して、内閣総理大臣並びに閣僚は憲法第99条で憲法を尊重し擁護する義務を負う立場であることから、憲法20条の「政教分離原則」を厳格に ..


実のところ、「関東大震災東京大空襲の仏式法要と、公権力のかかわり」について自分が知ったのは、大原康男氏の指摘によるものだった。

「靖国神社への呪縛」を解く (小学館文庫)

「靖国神社への呪縛」を解く (小学館文庫)

ここの文章を引用すればよかったのだが、現在行方不明。
まあ、今回見つけた資料で十分じゃろうね。もちろん彼らは「こういうのがOKなんだよね?なら靖国神社と公権力者の関わりも(少なくとも「政教分離」の視点からも)OKだよね」ということを言うために指摘しているのだ。


実際、どうなんだろうか?
というか本当に、神、仏、神のひとり子、預言者…などなど、すべての宗教儀礼との関係を(可能な限り)徹底的に公と切断する「フランス型政教分離」の支持者が日本にどのくらいいるんだろうか。

そっちへの興味も兼ねて、昨日行われた「公の支援を受けた、公的な、仏式による東京大空襲犠牲者の”法要”」を注目してみた。


法的な議論の論文などがネット上にあったらさらに読んでみたいところ。

追記 コメント欄より

manji_ex001 2015/03/12 10:10
靖国参拝を巡る文脈で出てきた話なのですが、西部邁氏の解説によると、「政教分離」の憲法の原文は「レリジアス・アクション」なんだそうです。「アクションaction」というのは「ある意志を持って意図的に行う行動」なんだそうです。だから例えば「国民精神を洗脳するような積極的な宗教活動」がこれに当たるんだと。英語には、「アクション」とは別に「ビヘイビアーbehavior」という言葉があって、こちらはどちらかというと習慣的な行為を指すもので、典型的なものは「儀式」などだ、と。つまり、「宗教アクション」は憲法で禁じられているけれども、「宗教行動behavior」はその限りにあらず、なんだと。一意見としてご紹介します。