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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

平井和正氏逝去。「エイトマン」時代のある挿話を紹介

【訃報】『幻魔大戦』などで知られる作家・平井和正さん逝去 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/771329


自分は残念ながら、平井氏のいい読者ではまったくなかった。
たぶん、アンソロジー「日本SFベスト集成」収録の作品ぐらいじゃないかな?(だから「楽屋落ちSF」という斬新なコンセプトの(笑)、「星新一の内的宇宙」が私にとっての氏の代表作だ)

自分のちょっと上の世代が、ある意味で「平井和正直撃世代」なんだよね。自分はアニメ映画になった「幻魔大戦」のパンフレットとかを見て「こわいよー」と思った世代。


ただし、自分のその時代は既に、戦後SF作家の第一世代が「自分たちの若い頃はこんなふうでねえ…」と自伝やエッセイで振り返る時代にあたっていて、いわゆる「戦後SF世代」の活躍や交流はそれ自体を物語として当方は受け止めていたのですね。

簡単にいうと、「トキワ荘」のエピソードが浸透しすぎると、森安なおや氏や寺田ヒロオ氏の作品を読まなくても、すっごく親しい人物のように思えるでしょ?


自分にとっての平井和正はそういう存在でした。


そして、そういう、自分にとっての大きな「戦後SF作家物語」の元ネタ的な作品が、豊田有恒の「あなたもSF作家になれるわけではない」、その後、別のタイトルに改題されたはずだったがな…?何度か過去に紹介したはずだす。


今も一応、E―文庫で読めるけど…。



と…ああ!!!これから記憶だよりに紹介しようとしたエピソードが幸運なことに「立ち読み可能」になってたわ! 一部引用し、そして…

あなたもSF作家になれるわけではない

http://www.ebunko.ne.jp/anatat.htm


 平井和正さんと「エイトマン」のシナリオを書いていたころです。判らない人がいるといけませんから、親切に説明しておきますと、「エイトマン」というのは、平井さん原作のSF漫画で、のちにテレビ化されることになり、筆者もシナリオを手伝うことになったのです。
エイトマン」は、まぎれもなくSFです。これは、定義にこだわるまでもなく、判るはずです。
 したがって、テレビのシナリオにも、いろいろなSF的アイデアが、盛りこまれました。平井さんといっしょに仕事をしていると、おたがいカッと来やすい性質ですから、つかみあい寸前という場面が何度もありました。
豊 「ここで、サイボーグを出すことで、絵になると思うんだが」
平 「まずいな、そんなとこで、安易にサイボーグなんか、出すなよ」
豊 「なにが安易なんだよ」
平 「もっと、小道具を、大事にしようぜ。もともと、エイトマンだって、NASAで開発されたスーパー・ロボットだっていう、根拠づけがあるからこそ、リアリティがでてくるんだ。安易にサイボーグを出すと、話がチャチくなるんだよ」
豊 「あんた、おれのプロットを、チャチいって言うのかよ?」
平 「ここで、サイボーグを出せば、そうなるって、言っただけだ。文句があるのかよ?」
豊 「ひとのプロットにケチをつけておいて、文句があるのかとは、なんだよ?」
平 「なんだとは、なんだよ?」
 そこで、二人とも、座を蹴って立ちあがりました。数年来の友情も、もはや、これまでかというとき、なにげなしに、二人とも、そばでおろおろしているプロデューサーのメモに、目をやりました。
(続きは製品版でどうぞ)

……すまん、そこで興味を引いて購読させようという意図はわかるが、自分はもう別のところで書いちゃったし、追悼でもあるので、原文じゃないけどオチを書かせてもらうわ。

そのプロデューサーのメモには…

『細胞具』

と書かれており、それを見た両者は思わずへなへなと脱力、双方吹き出してケンカは治まった。…のだという。


「それほどSFが浸透していない環境で、僕や平井はやってきたのだ」と豊田有恒氏は、懐かしさと自負を込めて回想している。

「そういえば、きのうも、おとといもお宅にいましたね。そんなに会社を休んで、大丈夫ですか?」
「いえ、会社勤めをしているわけではありません。自由業で、ものを書いています」
「はあ、ものを書いていらっしゃる。すると、作家ですか?」
「ええ、まあ」
「なにを書いているんですか?」
「はい、エ(SFと言いかけて、やめる)、いや、人類の未来を書いています」
「はあ、人類の未来ねえ」

「あなたもSF作家になれるわけではない」キンドル版とか出ないのだろうか??


平井和正は評論本「高橋留美子の優しい世界」を出していた

ただ、自分が「現役作家」としての平井和正で覚えているのは、上記のような本を出していたこと。

ふーむ。自分は地元図書館にあるような「マンガ研究本」を呉智英なども含め読んでいたけど、ほとんどの研究書は手塚治虫とかそういうものを話題にするもので、そのときホントに現役第一線のバリバリ、一般人気と評論家の評価を兼ね備えていた「高橋留美子」の研究本を、一流作家が出す、という発想はすっごく型破りなイメージがあった気がする(そうでもないのかもしれないが、個人の感想です)

自分はそこまで留美子ファンでもなく、たしかちょっと立ち読みした程度だったのだが、「ああこういう本を出す人なんだな=精神が若く、こういうサブカルチャーを現役で追っているんだな」と思ったものでしたよ。


平井和正と宗教の関係

積読荘の住人
‏@tsundokulib
平井和正がいなかった場合、GLA幸福の科学オウム真理教はいまのようなかたちで存在したろうか、ってのは考える意味があるんではなかろうか。
https://twitter.com/tsundokulib/status/556696686806855681

たぶん自分が平井和正のことを深く知らないのはこれも影響していて・・・自分の断片的なイメージだと

・平井氏は「幻魔大戦」とかで壮大な異世界体験、精神世界、ハルマゲドン、超能力などのイメージを書いた

・その際にGLA?だったか?どこかの新興宗教の教義と、どっちが影響してどっちが影響されたのか、とにかく微妙に通じ合う世界観ができてしまった。

・その結果、平井氏は信者とはいえないが、シンパと言われても仕方ないような存在になり、作品にもそのプロパガンダ臭が出てきた。


・古くからのファンは苦笑しつつ、批判もしづらく「まあ、あの人も昔は面白かったけどね…今は、うん、あんまり関わらない(読まない)ほうが・・・」みたいな感じに。


たぶん、自分はそのにじみ出る「今はあんまり…」「かかわらないほうが・・・」の空気を感じていたのだ。たぶん創世記の「トンデモ」クラスタ周辺からだったのかな・・・


その事実関係を確認しないままで今まで来ているのだが、平井氏も逝去されたことだし、ウィキペディアでもあとで見てみるか・・・一応張っておく。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E4%BA%95%E5%92%8C%E6%AD%A3



しかし、一小説家の奇想が新興宗教に反映されるということは、けっこうままあるものらしい。というか既存宗教のイメージだって、提唱当時はお馴染みすぎるものであって、そんなにそこだけ突飛過ぎるような概念はないのだろう。
新興宗教は「ネタバレ」してるだけで。



しかし、そんなことも含めて、戦後SF界を彩った巨人の一人であった。
彼のアイデアの子孫は、今もテレビを、ゲームを、マンガを賑わせている。
安らかなれ。