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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「今こそ読みたい児童文学100」(赤木かん子)から、気になった作品をメモする

図書館に返す前にメモシリーズ、その2

内容(「BOOK」データベースより)
誰でもタイトルは知っているけれど、ちゃんと読んでいなかったあの名作も。現代的なテーマで今こそ読みたい、図書館に埋もれたあの作品も。物語の世界にひたれて、どんどん読めて、読後感がいい―そんな児童文学の選りすぐりの百冊を紹介します。
 
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
赤木/かん子
児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1981年、法政大学英文学科卒業。1984年に、子どもの頃に読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍している。図書館の改善運動にも積極的で、近年は特に小中学校の図書館の活性化に努めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


写そうかと思ったが、それはたいへんなので、さらに要点をメモする形で

コウノトリと六人の子どもたち

・オランダが舞台です。この村の学校には子ども6人
・幸運の印であるコウノトリを、村に呼ぼうと子どもたちが思いつく。そのため、昔コウノトリを見たというおばあさんに話を聞いたり、屋根に工夫をしたり…
・そうやって子どもが動くことにより、脚を無くして自暴自棄になった元漁師や、ひ弱であることで漁師村でバカにされていたインテリなど、孤立していた人々が、村の中で新しい関係や役割を得ていく…

魔女ジェニファとわたし

魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)

魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)

・周りの大人たちに不満だらけ、でも何もいえない「いい子」のエリザベス。
・そんな彼女がかっこいいと思うのは、いつも一人ながら泰然といているジェニファ(黒人)。
・彼女は自称「魔女」。エリザベスに「課題をこなせば貴方も魔女見習いにしてあげる…」

(評者赤木氏は語る。「あとがきには浮いているジェニファを健全なエリザベスがまともにした、と書いてあるけど逆! 自分を縛っていたエリザベスを賢いジェニファが解放してあげたんですよ」)

バレエダンサー

バレエダンサー〈上〉

バレエダンサー〈上〉

バレエダンサー〈下〉

バレエダンサー〈下〉

・一流のバレリーナを目指し挫折した女性は、一人娘をバレリーナにしようと奮闘する。厳しくバレエを仕込み、夫も、その子の弟も目に入らない。
・ところがその弟、男の子こそバレエの天才だった。
・だが自分の代償行為としてのバレエだった女性は、娘でなく弟が天才バレリーナであることを受け入れない。娘自身は頭がいいので、そのことに気付いたのだが…
・母親に無視された弟だが、彼の才能を認めた街のバレエ教室で…

マツの木の王子

マツの木の王子

マツの木の王子

・森の「松の木の王子」はシラカバの娘と身分違いの恋に落ちる。
・彼らは「駆け落ち」する。といっても木は動けない。で、一緒にきこりに切られて町へ出る。同じ木工所で、王子(マツ)は木馬に、娘(シラカバ)はシカの模型になる。
・ずっと同じところにいられれば幸福だったが、哀れ二人はメリーゴーランドの木馬として変われる。一緒にいられるといえばいられるのだが、二つは正反対の側に設置された(笑)。来る日も来る日も、相手をちらっと見ることしか出来ず…
・それでも長い年月、その愛はさめることはなかった。そして…

(※私が要約すると、なんかギャグみたいだね(笑))

光草

光草(ストラリスコ) (Y.A.Books)

光草(ストラリスコ) (Y.A.Books)

・中近東のある領主の息子は「光アレルギー」で外へ出られない。
・その息子のために、領主は画家を雇い「息子のためにいろいろな絵を描いてくれ」。
・しかしその画家はただの絵を描かなかった。極めて利発なこの子とともに、「物語」を描こうとする。
・二人は一心腐乱にこの作業に没頭し、一部屋だけでなく次の部屋、また次の部屋へと物語は広がっていく…

(赤木氏評「人間にとって物語とはどういう存在なのか…一度読んだら忘れられない独特な余韻)

パティの宇宙日記

パティの宇宙日記 (文研ブックランド)

パティの宇宙日記 (文研ブックランド)

・ある星に地球から移住することになった宇宙移民。
・荷物制限のため、本は一人一冊のみだった。みな厳選して本を選んだ
・しかし、パティという子の「本」は真っ白なノート。その時、人々は笑った。
・だが移住後、人々はその本を貸し借りしていくが…移民たちにすべての本は読みつくされ、飽き飽きするようになった。
・しかし集会場で、パティはそのノートを開く。そこに移民の記録が書かれることで、誰も読んだことのない「自分たちの歴史」が始まる…

(赤木氏によると作者ウォルシュは「人はなぜ物語るのか」というテーマが得意らしく
「死の鐘はもう鳴らない」という本も、それを描いた傑作とのこと。)

死の鐘はもうならない (現代の文学 (6))

死の鐘はもうならない (現代の文学 (6))


ぬすまれた宝物

ぬすまれた宝物 (児童図書館・文学の部屋)

ぬすまれた宝物 (児童図書館・文学の部屋)

・ガチョウのガーウェインは、尊敬する王様のために宝物蔵の番人を引き受け、鍵の管理をしている。まじめに勤務をしていた。
・それなのに!宝がいくつも消えていく。ガーシェインは逮捕され、裁判になる。
・彼は身に覚えが無く、無罪を確信していた。だが、有罪宣告を受け、後ろを振り向くと、今まで自分の友達だと思っていた仲間がすべて顔をそむけ…
・ガーウェインは絶望し逃走する。その一方で真犯人も、ここまで大事になると思わなかったのでびっくりして…

ねずみ女房

ねずみ女房 (世界傑作童話シリーズ)

ねずみ女房 (世界傑作童話シリーズ)

・あるお屋敷にねずみの夫婦がいた。妻はいつしか「こことは別の世界があるらしい」と思うようになるのだが、だんなねずみは「チーズさえあれば幸せなんだ」と、その妻の好奇心を抑圧する。
・そんな折に、家には野生の鳥が飼われるようになった。ねずみ奥さんはその鳥から「外の世界」の話を知る。
・ねずみ奥さんは、「自分はここに一生いて、話を聞くだけで幸せだけど、この鳥にとっては檻の中は不幸なのだ」と気付く。
・彼女は、自分の危険を顧みず、その檻をかじって鳥を助けようとするが…

(なんだこの不倫ラブストーリー…と思いきや、赤木氏「これを不倫物語なんて、程度が低い!わかっちゃいないよ!!」と(笑))

白銀の夜をこえて

白銀の夜をこえて (あかね世界の児童文学 26)

白銀の夜をこえて (あかね世界の児童文学 26)

・冬の大陸横断鉄道にひとりで乗りこむ少年ポール。
・お母さんを亡くしたこの少年は遠くの親戚が引き取ることになったのだった。見捨てられたという思いや不安からふてくされるポール。
・ところがこの列車、大雪のためロッキー山脈で立ち往生。明かりは消え、暖房もなくなり、食べ物もなく…
・そんな中、たまたまポールは持っていた脱脂粉乳で赤ちゃんを救えた。それをきっかけに、守られる側から守る側に。少年が危機に際し、一人の男になっていく…

(何か、いろんな作品に影響を与えたっぽいね)

ニュー・モンゴメリ・ブックス

アンの仲間たち (ニュー・モンゴメリ・ブックス)

アンの仲間たち (ニュー・モンゴメリ・ブックス)

赤木氏の感想から書いてみよう。
・自分はアン・シャーリーってあんまり好きではない。バランスに欠けてる気がする
・なので、アンが出てこない、短編集「アンの友達」がむしろ好きだ。
自分が意固地で若い頃恋人を失った「ロイド老淑女」
バイオリンの天才なのに、牧師のおじいさんにそれを禁止された少年「めいめい自分のことばで」
有名歌手が、ひと夏かわいがってもらった人に会いに行く「小さなジョスリン」
男嫌いの女が女嫌いの男性とひょんなことで暮らす「隔離された家」ーーー

わんぱく天使

わんぱく天使

わんぱく天使

ブラジルの作家の自伝的作品。
・七歳ながら、あまりに彼は頭がよく感受性も豊かでありすぎた。
・家の家族は愛情豊かだが貧乏。それより何より、そんな子の「感受性」を理解できない。
・そんな子はある日、ポルトガルから来たお金もちの教養豊かな人と知り合う

(赤木氏評「知的好奇心は食べものと同じで、必要分量はこどもごとに違うのです。彼は知的に飢え、やせて、絶望している子だったのです。知識に飢えている子には、本や知的な出会いが必要なのです」)

イーカロスのつばさ

・赤木氏評「発明家ダイダロスの息子イカロスが、太陽に近づきすぎて翼が溶け、海に落ちてしまったという話は誰でも知っていると思います。
・ではなぜイカロスはそんなことをしたのか?と考えたことはありませんか? 近づきすぎたら蝋が溶けるぞ、とお父さんに言われていたのに…(略)その謎への、痛ましい答えです」

橋の下のこどもたち

橋の下のこどもたち

橋の下のこどもたち

・アルマンじいさんはパリの橋の下にすむ”自由人”。
・ところがある日、「自分の場所」である橋の下にいくと、知らない3人の子が…
・以前の家を追い出されたこの子たちは、当局の福祉に頼るとばらばらに収容されることが嫌で逃げ出した。
・困った爺さんがだが、なにやらそんな縁で孤軍奮闘することに。しかも季節はまもなくクリスマス。「クリスマスにはおうちがほしい。サンタさんに頼んで」と言われたじいさんは…

(とつぜん子どもの面倒をみることになったXXXX、という作劇はよくあるね。)


なるほどクリスマス降誕劇

なるほどクリスマス降誕劇 (1983年)

なるほどクリスマス降誕劇 (1983年)

・とある教会は毎年クリスマスに、キリストが生まれる降誕劇をやっていた。だけどもはやマンネリで、みんな飽き飽きしていた。
・ところがこの年はクッキーに釣られ、近所で浮いていた一家が参加。しかもその長女が「わたしがマリア様をやる」と。弟の世話で、子どもについての経験が豊富だとか。
・ところが劇のストーリーを聞いたこの娘、「えっ?生まれたばかりの子を馬小屋に?」「民生委員は何をしていたの?」とつっこみまくり。
・かくして聖なる神の子の誕生劇が、「周囲の無理解と冷酷さに負けず、若夫婦が必死になってはじめての子を産む物語」になっていく…

(がはははは。こういうの好きだ)



後半部には、誰もが知っている名作の再読、という章もあり、三銃士や若草物語海底二万里なども紹介されている。
ピーターパンの話の紹介もあるのだが、実はあの海賊・フックは有名私立学校出身のインテリエリートで、訳あって海賊になったあとはむしろ「自暴自棄で危険に身をさらしていたことが勇敢だと誤解されて」海賊の頭首となったんだそうだ。

しかし、まわりの粗野な海賊とは話があわないのでフックは気がついたときには絶対的な孤独のなかにいる羽目になり、絶望している男なのです…
頭が悪いのでフックが何をいってもわからない、気立てのよいスミーにだけフックが本音と弱音を吐くところは、おもしろうてやがて哀しき…場面です

ピーター・パンとウェンディ (福音館文庫 古典童話)

ピーター・パンとウェンディ (福音館文庫 古典童話)