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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「ホームズを禁止する法はない」…ビッグデータへの畏怖と不安は、結局そこに根源があるのでは

まず、今朝日新聞で連載中の企画「ザ・テクノロジー」が実に面白いという話。

(ザ・テクノロジー)第2部・AI編:上 人工知能、米追う中国 - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/exnx
 
(ザ・テクノロジー:11)人の知性超える日、現実味 - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/exmr
 
(ザ・テクノロジー:12)料理の戦略、勘よりデータ - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/exwm
 
(ザ・テクノロジー:13)客の好みを細かく分析 - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/exwn

ちょっとだけ抜粋で紹介。

コンピューターが自ら考える人工知能(AI)を巡り、いま世界的な頭脳争奪戦が繰り広げられている。 人工知能のなかで、特に奪い合いになっているのは「ディープラーニング(DL)」と呼ばれるプログラムの専門家たちだ。

 人間は、目に飛び込んできた情報の中から色を感じ、色の点がつながった線を見分け、さらに線に囲まれた形を読み取る。そして、形の中から人間の顔などの図形を認識し、男女などの微妙な差も識別する。「人間の顔」とわかれば、それを「夫の顔」などと判断する。DLは同様に、段階を追って認識していく。

 DLの専門家は「世界でもわずか50人程度」といわれる。その囲い込みに、世界中のIT大手企業がいま、血眼…
 (略)
与えられた情報のなかから「最も特徴的なものを選べ」とプログラム…DLが特徴的だと認識したのは「猫」…
 
機械が猫を見分けたニュースは世界を駆け巡った。ネットに積み上がる文字情報や画像、音声データをDLが自ら認識できるようになれば…
(略)
専門家を巡る世界の争奪戦に、日本企業が参加している様子はない。しかしいま、米大手の影をひたひたと追う勢力がいる。 中国のグーグルといわれるネット大手の百度バイドゥ)だ。昨年、シリコンバレーにひっそりと人工知能研究所を設立。そして今年5月…

そう、東大に受かる人工知能を目指す日本の研究者が今、壁なのはここで…どんな難しい方程式もすらすら駆使できる人工知能が、英語の問題か何かで「お姉さんが手に持っているものはなんでしょう?英語で答えよ」という問いが出たら、手に持っているものや、そもそも「お姉さんとは誰か」を、絵の中から認識するという小学生でもできる第一段階が難しい、というのだから。
その研究者が「世界で50人」で大争奪戦があり、グーグルがその研究者を囲い込み始めたら、フェイスブック百度がその後を追う…という展開も実によろしい。いや日本経済にとってはまた厳しいが、エキサイティングな光景であることは間違いない。


ただ、これは前振りで、本当にうーんと空恐ろしくなったのはこの回。

回転ずしのスシローは、ビッグデータを使い、来店客が食べたいタイミングで、食べそうなすしを出そうとしている。
(略)家族構成に応じ、「着席して1分後に何を食べそうか」「そのあと15分後まで何を食べるか」という予測が瞬時にはじき出され、厨房(ちゅうぼう)の画面に届く・・・(略)来店客が求めるすしを出すようになってから、廃棄率は4分の1以下になった。

 NECは、スーパーの棚の前で、買うか買わないかを迷っている人の情報を分析する技術を開発した。

 まず顔の認識技術で性別と年代を推測。センサーを使って、何秒立ち止まり、どの商品をどう見たかも詳しく把握する。

 例えば店側は、食品の裏側の成分表示を見たら、「健康に気を配っている消費者だ」と判断し、横に備えつけた画面に健康に役立つ食品の広告を表示することができる。「客が立ち止まるものの買わないことが多い」という商品があれば、値引きもできる。

 企業はビッグデータを際限なく集めようとしているように見える。データを、進化する人工知能の力も借りて分析することで、消費者が一番買いそうな商品を目の前に出す。総務省は13年版の情報通信白書で、小売業や製造業など4分野の主要事業で、ビッグデータを最大限活用した場合の経済効果を年7兆7700億円と試算した。

自分はビッグデータをはじめ検索機能や監視カメラ、それらのデータ蓄積の持つ不気味さや危険さ、しかしそれが生む快適さや安心さを【となりのビッグブラザー】という用語でまとめており、ある意味それをタグ代わりにして関連記事を検索できるようにしてるのだけど、その中でも、こういうビッグデータ分析の進歩を指して「ホームズは裁けない」という用語を提唱したい。
いやそう呼んだからって誰が何を得するわけでもないけど。

つまりだ…

http://www.221b.jp/h/sign-01.html

「君はたしか、人間が日常的に使っている物にはすべて持ち主の個性が刻まれ、熟達した観察者ならそれを読み取れると言っていた。私が最近入手した時計がここにある。もし良ければ、最後の所有者の個性や習慣について、見解を述べてもらえないか」

私は彼に時計を手渡す時、心の中で快哉を叫びたい気分だった。なぜなら私の考えでは、このテストは無理難題だったからだ。
 (略)

「彼はだらしない生活習慣の人物だ、 ―― 非常にだらしなく不注意だ。彼は将来有望と見られていた。しかし彼はチャンスを棒に振り、かなりの期間貧しい生活をした。時折、羽振りの良い時期があったが、これは長続きせず、最後に酒に溺れて死んだ。僕が推測できるのはここまでだ」

私は椅子から跳び上がり、物凄く苦い気持ちで、足を引きながらせかせかと部屋を歩いた。

「これは卑劣だ、ホームズ」私は言った。「君がここまで恥ずかしいことをするとは信じられない。君は僕の不幸な兄について調査をしていて、今、ちょっと奇抜な方法でその知識を推理したような振りをした。(略)」

(略)
「ワトソン」彼はやさしく言った。「許してくれ。僕はこの件を抽象的な問題とみなし、君にとって個人的にどれほど辛いことかについて、考えが及ばなかった。しかし保証する。僕は君がその時計を手渡すまで、君に兄弟がいたことさえ知らなかった…(略)…例えば、僕は最初に君のお兄さんが不注意だと言った。その時計の外側の下部を見ると、へこみが二箇所あるだけでなく、全体が擦り傷だらけ…」

と、ホームズは推理の過程を述べてワトソンの「君は以前から私の兄を調べていて、さもいま推理したように言ってるだけでは?」という誤解を解くのだが、さて推理の結果として、今まで知らなかった亡きワトソン兄の個性を喝破した、として…それはそれで不気味ではないかね。
ホームズは依頼人にしょっちゅうこのハッタリをかまして、依頼人は感嘆して仕事を任せられると思うのだが…

http://www.221b.jp/h/scan-4.html
「この覆面はお許し願いたい」奇妙な訪問者は続けた。「私を雇ったさる高貴な方が、使いの者の身元が君に知られぬようにと、望んでおられるのだ。このあたりで打ち明けておいた方がよいかもしれんが、実は先ほど自称した爵位も必ずしも事実とは言えないのだ」

「気付いておりました」ホームズはそっけなく言った。
(略)
「もし、恐れ多くも国王陛下がご自身でこの件について説明いただければ」彼は言った。「さらに良いアドバイスが出来るはずですが」

男は椅子から跳び上がると、動揺を抑えきれず、せかせかと部屋を行き来した。突然、やけになった様子で覆面を顔から引き剥がすと、床に叩きつけた。「その通り」彼は大声で言った。「私がボヘミア王だ。なぜそれを隠さねばならん?」

ビッグデータ?の分析は、このようにプライバシーを侵害するのです(笑)
その他、被害者多数。

自分の浅い推理小説好きの原点は、何度も述べたように中島河太郎氏がポプラ社で出した解説書
推理小説の読み方」
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=51300060

にあるのだが、ここでもある種不毛な議論の典型である「○○の起源は何か?」という調査をしていて…ふつうはポー「モルグ街の殺人」なのだが、神話伝説説話のたぐいに踏み込むという、いつもの不毛パターンを踏襲していて…そこで、何の説話だったか。
ある主人と奴隷だか使用人の話で、そこの馬泥棒?か何かを、足跡から奴隷だか使用人が「犯人は…で、・・・・のような特徴がある男ですだ」と見てきたように語り、そのせいでその男は犯人、あるいは共犯の疑いをかけられる(笑)。
その男は、自分が足跡や痕跡からいかに推理したかを弁明して事なきを得るのだが…実際のところ、ホームズのような推理を「不気味にひとの秘密を暴く、怖いやつ!!」と排斥、というか敬遠する危険性は常にあるだろう。
「名探偵 時代が違えば 魔女裁判
という川柳もある(俺が作ったんだが)。


しかし。
魔女裁判がない近代国家において、ホームズが「鍵穴のまわりについた引っかき傷から、この時計の持ち主が酒飲みであると推定しましたが、それが何か?」と言われたらぐぬぬぬ、である。それは公開情報。そこから分析して、何かを推論することが悪いことであろうはずは無い。
成分表示に注目した人は健康に気を配っている。カメラで認識した、そういう人は40代後半が多い。そこにマーケティングを重視しよう…いっこもわるくない、全部公開情報である。
しかし…

これが「ホームズは裁けない」ということである

そして今は、推理の過程をすっとばして「だって疫学的(統計的に)、Aする人はBな属性なことが多いじゃーん」で、けっこうカタがついちゃう。プロファイリング、ともいうべきか
「オムツが売れる日は、ビールも(なぜか)売れる」
ということが分かれば、購買層の生活習慣や家族構成をそれ以上分析したり、真実はいつもひとつ!と少年探偵のように追及する必要も無い。だまって特売日を一緒にして、売り場を隣り合わせにすればあとは自然と売れていくのだ。

それに規制はかけられるか。
規制すべきか。


もう政治家が「ウソをついているか(嘘泣きしてるか)」は、音声分析で調べられる時代?

http://news.searchina.net/id/1533474
 朴槿恵大統領は19日、韓国珍島(チンド)沖で300人以上が死亡・行方不明となったセウォル号の沈没事故に対して「国民向け談話」を発表、涙ながらに事故対応の力不足を謝罪した。

 記事は朴大統領の談話発表後、野党や国民から「涙は演技だったのではないか」と疑いの声があがったことを紹介し、韓国忠清北道(チュンチョンプクト)のある研究室が朴大統領の談話について可聴周波数による音声分析を行ったことを伝えた。

 記事は、平時の朴大統領の声と涙を流しながら談話を発表した時の朴大統領の声を比較したところ、「朴大統領が談話中に流した涙は演技ではなく、心から悲しんで流した涙である」との分析結果が出たことを伝え、研究室の教授の発言として、「朴大統領の涙ながらの談話がすべて演技であるとみなすことはできない」と報じた…

何度も書いたネタで恐縮だが、
この分析が、スマホでできるようになる時代はきっと来る(笑)
関連記事

綱紀粛正かディストピアか?「警官採用試験にポリグラフ使用」「『小児性愛や痴漢への興味』等を訊く」 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130109/p1

それは、藤子・F・不二雄の「テレパ椎」「耳太郎」という作品のような時代が来る、ということだ(笑)。その作品の内容は各自調査。要は、本当に人の心、本音が分かった時に人はどうなるか、というね…。

詳しい内容は、こちらで紹介されています
http://plaza.rakuten.co.jp/neoreeves/diary/20110918/

そしてビッグデータを、合併させたり譲ったりできるか・・・

■ヤフーがプライバシポリシーを改定、ウェブ閲覧履歴などをCCCに提供 -INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140603_651586.html
「ヤフー株式会社は2日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)との間で相互にユーザー情報を提供することなどを目的として、Yahoo! JAPANのプライバシーポリシーを改定した。」


ビッグデータ「同意なしで提供も可能に」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140609/k10015066701000.html
「政府の検討会は、「個人が特定されないようにデータを加工した場合は本人の同意を得なくても第三者に提供できる」などとした大綱の原案をまとめました」

そして最後にこの本

紹介を書かねば。