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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

STAP細胞の意義と今後の展望を、小説仕立てで分かりやすく解説します

新しい万能細胞作製に成功 iPS細胞より簡易 理研
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/29/stap-cells_n_4690922.html
理化学研究所などが、まったく新しい「万能細胞」の作製に成功した。マウスの体の細胞を、弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化する。いったん役割が定まった体の細胞が、この程度の刺激で万能細胞に変わることはありえないとされていた。生命科学の常識を覆す画期的な成果だ。29日、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された。

理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー(30)らは、新たな万能細胞をSTAP(スタップ)細胞と名付けた。

サルで実験 ハーバード大、脊髄損傷を治療
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140131/scn14013108300003-n1.htm

「STAP(スタップ)細胞」を使い、米ハーバード大のチームが脊髄損傷のサルを治療する研究を始めていることが30日、分かった。人間の細胞を使った作製も研究しているという。
(略)
 現在は論文発表の準備をしているため詳細は明らかにできないものの、「驚くべき結果が出ている」と話し……


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「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している」と酷評されましてね……

小保方晴子博士は、こういうとそっと涙をぬぐった。
これはいい画(え)だ。
TVのカメラマンや記者は、何度目かの合同記者会見で、同じ話をすでに聞いていたにも関わらず、思わず力が入った。クラシックの名曲のように、いい話は何度聞いても視聴者をひきつけるものがある。そして博士もサービス精神旺盛で、いまやトレードマークの割烹着をわざわざ着て、会見に臨んでくれている。


代表して質問するアナウンサーは、こちらも労をいとわず、過去と同じ質問を重ねることにした。


「それでは、このSTAP細胞が、今後人類に何をもたらすか、何の役に立つかをお聞きしたいのですが…」
しばしば愚問と評される、なんの役に立つか、という質問だが、ネットの批判コメントなどは無視できる意志の”強さ”がこのアナにはあった。
「なんでも、まだ詳細は秘密ですが、サルに施したところ『驚くべき結果』が出ているとか?」
別の記者が畳み掛ける。どうせノーコメントだろう、と思いながらも…。
しかし。

小保方博士はほほえんだ。
「ふふふ、知りたいですか?実はその実験のおさるさん、数匹ここに呼んでいるのですけど。さきほどの『今後人類に何をもたらすか?』の答えでもあると思います」

ええっ。
会場がどよめく。こりゃあ日本発世界の、またまた大ニュースだ。ここに来たメディアの独占だ。


小保方氏はさらにつなげる
「実は、『STAP細胞』の”STAP”には、そこにつながる意味合いもあるんですよ。いま初めてお話しますが」

「そ、それはぜひ!!」
初めての秘話、それほどメディアが欲するものはない。しかもSTAPとは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(Stimulus―Triggered Acquisition of Pluripotency)」と説明されていたSTAPには、別の意味があるんだって!!!


「では……。」
と小保方博士は合図を送る。すると、2人の男が一匹のさるが入った檻を運んできた。
2人が人形浄瑠璃の「黒子」のような覆面をしていたのが異様だったが、神戸市に再生科学総合研究センターのこと、浄瑠璃にちかんだ関西風のジョークだろう−−−多くの人がそう考え、そんな瑣末なことより未知のSTAP細胞で「驚くべき成果」の出たサルの観察に興味は集中していた。


「こ、このサルですか?」
「あえて脊髄を損傷させ、そこにSTAP細胞をほどこしたそうですが」
「なにが起きたのか説明してください」
「『STAP』の意味、人類にもたらされるものとは?」


殺到した質問にしばらく耳をすませたあと・・・小保方博士は、さきほどとは打って変わった、地響きのするような低音で、こう声を張り上げた。

「よかろう、教えてやろう!!
このSTAP細胞は、瞬間に増殖、変形し、本来のその生物の特徴を残しながら融合する!!そして、わたしを『科学を愚弄する』と称して追放した学会……そして愚かなる人類への、復讐と破滅をもたらすのだ!!!!


ぴかりとひかる閃光!!
テレビカメラのモニターも一瞬焼きつくその光が収まったとき・・・そこには、STAP細胞を通じて融合した、小保方博士とサルの合成怪物がいた!!!

またさらに、一段低音となった、咆哮とも声ともつかない言葉で、その生き物は語った。

「そうだ、STAPの意味を本当の意味をまだ教えていなかったな。
           STAPとは・・・すなわち『SaTAn Power』の略じゃい!!!」


その後の会場の惨劇は、このつたない文章では描ききれないし、仮に描けたら、それは残酷すぎて人に読ませることはできないだろう。



しかし!!!
この光景を、まばたきもせずにテレビで眺めていた
男がいた!!
「ついに恐れていたことが起きてしまったか……私はこの日が来ることを、根拠は無いが予測していた!!」
iPS細胞の研究者、山中伸弥博士である!!! -


「STAPとiPs…陰と陽、裏と表…。影と光…。ワトソンとクリック…。やはり、二重螺旋のように、ふたつは重なり合い、時には分離し……ついには闘う宿命(さだめ)なのか!!」


第2章

惨劇の起こった会見会場には3人…変形を解いた小保方博士と、黒子の覆面をかぶった2人……そして、あとは無数の肉片が残るだけだった。

「ふむ、いささか疲れたな。あとの始末は、お前たちに任せていいか?」
と小保方博士はいう。

「おまかせください」
2人は息のあった返事をし、覆面を脱ぐ!!
ああ、そこには!!!!!

ES細胞研究の第一人者だった、黄禹錫!!!
iPSの応用技術の革命児といわれた、森口尚史!!!
この、やはりあまりのスケールと先進性、そして悪魔的な知的好奇心の前に、古い体質の学会から追放された二人の異端児が、小保方博士のもとにはせ参じていたとは!!

彼らは両手を突き出すと、胸の前で広げる。彼らの組織の、敬礼のようなものらしい。

「一つの細胞は 全てに!」

そしてその手を握り締め、拳を作る。
「全ての細胞は 一に!!」

森口は笑う。
「これだけの人間の細胞があれば、私の夢見たものが作れる」
黄博士も、クールな表情で応じる。
「少し胚をいじくれば……な」




一方、このニュースが伝わった英国。
Natureの関係者が名指しで批判され、彼女らの組織の「復讐」の標的となったことが分かった英国政府は、こういうときの通常手段をとった。
すなわち、大英帝国円卓会議の開催である。

「はやいうちに、『王立国教騎士団ヘルシング機関)』を動かし、日本できゃつらを叩いたほうがいいのでは?」
「しかしそれでは、本国の守りが手薄になるぞ」
 
「そもそも、なぜNatureは。彼女を学会から追放したのだ?」
「なんでも『ワトソンの、遺伝子予言』に基づくとか…」
「ワトソン?あの二重螺旋の科学者か?アメリカ人の?」
「これは極秘ですが…ワトソンの一族は、19世紀末の、わが国のワトソン博士の系譜につながるとか。このへんはMI6が厳重に管理している情報なので私も断片的にしかしりませんが」
「フーム、なにしろMI6初代長官の弟にして在野のエージェント、シャーロックの親友だしな…」
「知ってるか?わが国のワトソン博士は、アフガンで地獄を見た、精神的にも肉体的にも。だが、まともに日常生活も送れないはずの肩や足の怪我が、…のちには、どうなっているのかわからないぐらい回復したとか」
「それが万能細胞と関係が?」

意見が百出し、迷走気味の議論だったが、そこに届けられた一片の紙片が、会議を終わらせた。

「じょ女王陛下からの直々の勅命です…今回は、これを確認して終わりたい。
『わが国は、ジャパンのヤマナカと共同歩調をとり、協力する。その応援人員は、ヤマナカが直々に希望した、1名とする』…そして、その人物名は、この文書とは別に口頭で述べます」
その人名に、円卓の騎士の末裔たちは戦慄した。



京都大が、こんなこともあろうかとひそかに作っていた地下の秘密貴地に、山中博士はいる。もちろん日本政府肝いりのため、厳重な警備体制が敷かれている。

「先生っ、こうしている間にも、小保方博士の秘密結社は勢力を拡大しています」
「我々も、日本の、いや世界の偉大な頭脳を集め、反撃の嚆矢を放たねば!!」

しかし、山中は
「まずは、あのお方が到着するのを待たねば…」とひとりごち、助手にあることを命じた。その助手は、首をかしげながらも出て行った。



その研究所にいたる秘密通路−−−。もちろん、厳重な偽装と警戒態勢が敷かれている。
しかし、なぜか迷わず、その通路へ一直線に向かう、白人の老紳士がいた。古めかしいシルクハットに、杖をついて、足取りはややおぼつかないが…

「そこの人、止まりなさい!ここは立ち入り禁止だ!」
さすが京大だけあって、警備員も堪能な英語で注意する
「ホッホッ、止まれといわれてもチト困るでな。用があるんで、入らせてもらうよ」
「あっ、秘密の入り口を!!」

無線で警備員が、屈強な精鋭を1ダースも呼んだ!!
「ム、ムッ、実にあやしい爺さんだ!多少は手荒くてもかまわん、取り押さえろ!」
隊長の命令でとびかからんとする特殊部隊の猛者たちだったが…

その老人は、ステッキを軽くひょいと挙げると、指をパチリと鳴らした。
刹那!!!!!!
鍛え抜かれた精鋭たちが、合成した隊長ごと、床にはいつくばった!
「な、なんだぁ!!」
「か、体が鉛のように重いっ!!!!」


「悪いな、チト諸君らの質量をいじらせてもらったわい。用事が済んだら元に戻してやるから、辛抱しとくれ」

そして、山中教授の待機する部屋に入った。
驚愕する山中の助手たちを尻目に、その老人はヤマナカに語りかけた。
「フー、この老体には極東までの長旅はちと堪えるワイ。一杯紅茶をもらえんかな?それと3杯のスコッチウイスキーもな」

山中は笑う。
「たった今買ってきたところですよ、ヒッグス博士



……この後、世界の科学者、数学者などを二分し、後の歴史学者に「第一次スーパーノーベル大戦」と呼ばれる戦いの幕があくのだが、今回はここまでにて。



おわり

保護者のみなさまへ
このおはなしは わかりやすく かがくのおもしろさを おしえるため ほんのすこし じじつと ちがうところがあります。 どこがちがうかは おこさまに よくせつめいしてください。
 

過去の関連記事「科学者スーパースター列伝」

科学者スーパースター列伝とは? & 諸注意
 
科学者スーパースター列伝は、筆者がノーベル賞の報道に接したり、なにか悪いものを食べたりすると突発的に誕生します。過去の記事はイカの、いや以下の通りです。

■科学者スーパースター列伝・元素の魔術師!メンデレーエフ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080919#p1
■科学者スーパースター列伝 電気の神様!マイケル・ファラデー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101007/p4
■科学者スーパースター列伝  夢のPC砲!パスツールとコッホ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111005/p2
■科学者スーパースター列伝「大王の狩人(イェーガー)!! 窪寺恒己」〜副題:青いジャングル
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131008/p1
この前に、ほんの少しだけ描かれた「第0回」が発見、復刻されました。

■科学者スーパースター列伝(第0回)放浪の数学者!ポール・エルデシュ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130414/p1

よくわかるヒッグス粒子 (図解雑学シリーズ)

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