INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

今だから読みたい、猪瀬直樹著作リスト(かなり個人の好み入り)

ジミーの誕生日の件、心配です」焼け跡の記憶もまだ醒めやらぬ昭和23年12月初頭、美貌と奔放さで社交界に知られた子爵夫人の日記は、この謎めいた記述を最後に途絶えた。彼女はいったい何を心配していたのか。占領期の日本にアメリカが刻印した日付という暗号。過去と現在を往還しながら、昭和史の謎を追う

毎年3日後、天皇誕生日というか天長節というかの日には、これを恒例で紹介していたが前倒しで今日紹介しよう。

ごく簡単に言うと、A級戦犯の処刑日は12月23日。
これは偶然とかではなく、軍国日本の復活への牽制、脅しとして、意図的に当時の皇太子=今上天皇(戦後、彼には外国人の家庭教師が付けられ、彼女から「ジミー」と呼ばれた)の誕生日を処刑日としたのではないか?というのが主題。

過去リンク集。
■昨日は天皇誕生日…すなわち「ジミーの誕生日」であり、A級戦犯処刑の日
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111224/p3
■本日は”ジミーの誕生日”…すなわち天皇誕生日であり、A級戦犯の命日。(猪瀬直樹本より)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091223#p2
■今日は昭和天皇の誕生日。すなわちGHQによるA級戦犯の起訴日。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100429#p2
(※基礎的な説明は、これ↓が一番まとまっているかな?)
■今日は天皇誕生日。つまり「ジミーの誕生日」(猪瀬直樹原作「ラストニュース」)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101223/p4
天皇誕生日…即ち「ジミーの誕生日」=A級戦犯処刑の日 - 見えない道場本舗
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121223/p2
 
この本でも、確証をつかんでいるわけではない。ただ結局、そういうものが3回、4回と続く(例えば起訴日は昭和天皇の誕生日である4/29)中で、それが「偶然」か「偶然ではない」かをどう判断するか、という話になる。

ちなみにマッカーサーは、最初GHQ側のスタッフに憲法草案を出させたときの要求が「リンカーンの誕生日までに提出せよ」だったそうな。そういう日付を意識する人、らしい。

あ、あと226事件のときに、麻布の交番にかかってきた勅令…じゃないな「勅電話」の話や、降伏の際に日光似疎開していた皇太子を掲げて徹底抗戦しようとしていたクーデター派への警戒・・・などの小ネタも面白かった。


天皇の影法師 (中公文庫)

天皇の影法師 (中公文庫)

天皇崩御そして代替わり。その時何が起こるのか。天皇という日本独自のシステムを〈元号〉を突破口に徹底取材。著者の処女作、待望の復刊。
大正十五年十二月十五日未明、天皇崩御。その朝、東京日日新聞は新元号は「光文」と報じた…。世紀の誤報事件の顛末。歴代天皇の柩を担いできた八瀬童子とは?最晩年の森鴎外はなぜ「元号考」に執念を燃やしたのか?天皇というシステムに独自の切り口と徹底取材で迫る。

個人的には天皇葬儀のときに棺を担ぐ「八瀬童子衆」への取材が印象に残る。
このへんと網野善彦「異形の王権」や隆慶一郎の一連の伝奇小説との前後はよく調べてないけど、固有の武力を持たない天皇が、実行部隊としての草莽の臣ならぬ「草莽の兵」がいる、というイメージは個人的に気に入っていてこういうライトノベルに結実している(笑)。まあ「ヘルシング」入ってるけどな(笑)

ライトノベル「俺がお手紙をもらったので、もう一度親政をしなきゃならなくなった件」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131126/p2
(略)・・・ 
宮内庁特務『八咫烏』、勅命によってものどもを召集いたしました」
彼らに、御苑の主が問う。
「朕が兵力は、いかほどか?」
「はっ、八瀬童子衆、ここに!わがほうの兵力は、5000人にて」

日露戦争に勝利し、坂の上に辿り着いた日本の目の前には、次なる仮想敵国として太平洋の向こうにある大国アメリカが立ちはだかっていた…。黒船来航が与えたトラウマが戦争へと具現化していく過程を、「日米未来戦記」の書き手たちを中心に、群像劇として描いた大河ノンフィクション。戦前の日本でアメリカで、そして英国でも夥しく書かれた「日米未来戦記」。その源流となった黒船幻想。日本人の精神史をダイナミックに描いた傑作。
第一次大戦後、「一等国」となったのも束の間、金融恐慌や相次ぐテロ等、不安の中で昭和は幕を開ける。「強い日本」を求める「衆愚」の醸し出す世論は、さらなる「日米未来戦記」を生みだし、開戦やむなしの空気を作っていく…。百年にわたる日本人の精神史を描いた大河ノンフィクション、完結。

本日こういう記事が出て、反響を呼んでいる。(YAHOOニュースにも転載されているので、ブクマなどは主にそっちについている→ http://b.hatena.ne.jp/entry/bylines.news.yahoo.co.jp/dragoner/20131219-00030803/

中韓を嘲笑う前に、我が身を振り返ろうよdragoner.ねっと:
http://dragoner-jp.blogspot.jp/2013/12/blog-post_19.html

ここにこういう記述がある。

日本の週刊誌に溢れる日中軍事衝突のシミュレーション記事を見て、これと同じことが中国でも起きていたら、と考えるのはあまり気分のいいことではない。現代史家の秦郁彦氏によれば、第二次世界大戦前の長い期間、日本とアメリカ双方のメディアでは、日米もし戦えばといった日米戦シミュレーション記事が賑わっていたとされる。秦氏はそれらの報道が当時広まりつつあった地政学概念と結びつき、日米必戦の雰囲気が醸成されたのではないかと指摘している。

このことを、実例を挙げて詳しく書いたのが「黒船の世紀」。
この時までほぼ忘れられた存在ともいえた「白船」艦隊のことから始まり、ホマー・リー、池崎忠孝など米日双方で「架空戦記」が書かれる中で「相手は敵。だが、おそるるにたらず」的な威勢のいい雰囲気と敵意が高まっていく。
その中で、日露戦争日本海海戦を経験し、そのルポ『此の一戦』で評判をとった水野広徳は、架空戦記ブームを逆手にとって「次に日米戦争が起きれば、空襲によって東京は壊滅する」という予言と警告の書『次の一戦』を書いたが……

このテーマの類似書も先行していくつかあったが、ストーリーを象徴するエピソードと人物の選定、その構成などの緊張感は読み物として比類がない。佐高信氏はこの本を「今、カビの生えた古本を紹介する歴史物をやっても意味がない。現在と切り結んでいない(大意)」と評していたが、実にどうも、ご自身の「ノンフィクションを読むセンス」が無いことを証明しただけだ。それは上に紹介した、今の中韓日の対外関係が、この事例とオーバーラップすることで分かるだろう。
水野は没する数年前の昭和14年(1939年)、12月30日の日記に「反逆児知己ヲ百年ノ後ニ待ツ」と書いたそうだ。黒船の世紀は、ほぼその半分、半世紀後に出版された。
 

 

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)

流行作家の太宰治が東京・三鷹玉川上水で心中事件を起こしたのは昭和23(1948)年6月13日の深夜。懸命な遺体捜索が続けられるなか、6月17日、太宰による遺書の下書きが見つかったと新聞は報じる。そこには、文学の師・井伏鱒ニに向けた言葉が綴られていた。「みんな、いやしい慾張りばかり。井伏さんは悪人です」――。「太宰治心中事件の謎は、死後、半世紀を経たいまも封印されている。『井伏さんは悪人です』が、太宰の自殺にどう関わっているのか。死ぬ直前に溢れ出た想いが遺書に込められたとすれば自殺の動機に含めぬわけにはいかない」(本文より)。関係者から得た新事実と精緻な推理を駆使し、太宰治の自殺、遺書の謎を猪瀬直樹氏が描き切る

太宰の「自殺」は最後まで狂言に近いもので、最後に亡くなったのも「狂言自殺の失敗」だったのではないか、というメーンテーマも興味深かったのだが、井伏氏の「黒い雨」は、元ネタの文章がある、という話は結構、社会的なインパクトがあって賛否を含めた議論が出ている。ウィキペディアでは消されたりしてるみたい(笑)。

猪瀬直樹  『黒い雨』と井伏鱒二の深層
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/study/inosenaoki.html

山椒魚」「かけ」「賢明なスナムグリ」−井伏鱒二剽窃したのか 教育と社会を考える/ウェブリブログ http://wakei.at.webry.info/201107/article_1.html

日本国の研究 (文春文庫)

日本国の研究 (文春文庫)

吹きつのる霞が関批判の嵐。行革は遅々として進まない。だが、誰もこの国にある「もう一つの国」の話は書かない。そこでは、「財政投融資」の名のもと、無数の奇妙な企業の群れが国民に寄生し、税金を食い荒らしながら生きていた。官僚国家日本の暗部を鋭くえぐりとる告発ノンフィクション。文芸春秋読者賞受賞。

特殊法人の問題」、またその後、実際に猪瀬氏が政界に入ることになった「高速道路の問題」は、当時の状況を知っている人はいまさらいうまでもないけど、四捨五入していえば「猪瀬直樹の『日本国の研究』シリーズで、はじめて具体的な政治的イッシューになった」と言ってしまっても間違いではないと思う。そして政界へ。
それが彼個人にとって、幸せだったかどうかは・・・・・・・・だが。