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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ミャンマーの宗教紛争をルポした「闇の正体」が本当に戦慄的…必読(毎日新聞)

ミャンマー西部ラカイン州で昨年5月、仏教徒の女性(当時26歳)が殺された。イスラム教徒の3人の男にレイプされ、首を切断されたという事件だ。全国各地で今も頻発する仏教徒イスラム教徒の宗教暴動の引き金となった。だが、事件には不可解な点が多い。暴動の真相を求めて取材を進めるうち、私はこの国の底知れぬ闇に足を踏み入れたことを知る。民主化時代を迎えたミャンマーの闇。その正体を探りたい。【ヤンゴン・春日孝之】

としてはじまった企画。よく、こんなに日本の読者の注目度が高いとはいえない事件に関する連続企画の連載が通ったものだ。
だが、内容は本当に、本当にすごい…

※追記
2015年に「URLが変更されていました」と教えてもらいました。

2015年現在のURL
「闇の正体:ミャンマー宗教暴動/1 発端はレイプ殺人(2013年10月26日掲載)」http://mainichi.jp/feature/news/20150529mog00m030001000c.html

闇の正体:ミャンマー宗教暴動/1 発端はレイプ殺人
http://mainichi.jp/select/news/20131026ddm007030105000c.html
闇の正体:ミャンマー宗教暴動/2 呼称に乗り移る憎悪 http://mainichi.jp/select/news/20131027ddm007030193000c.html
闇の正体:ミャンマー宗教暴動/3 「人口増」統計なき脅威 http://mainichi.jp/select/news/20131028ddm007030068000c.html
闇の正体:ミャンマー宗教暴動/4 「過去に虐殺」双方主張 http://mainichi.jp/select/news/20131029ddm007030133000c.html
闇の正体:ミャンマー宗教暴動/5 「過度な擁護」遺恨生む http://mainichi.jp/select/news/20131030ddm007030184000c.html
闇の正体:ミャンマー宗教暴動/6 汚職、民族問題を複雑化 http://mainichi.jp/select/news/20131031ddm007030191000c.html

まだ連載は終わっていません。
だが、一言で言えば、この連載タイトルは大げさでも、なんでもない
適宜引用してみようか…

騒動の発端の容疑者は「自殺」したが…

レイプ殺人の背後に作為を感じたティンマウンタン氏は「(主犯の男は)口封じで殺された」とみる。「彼は事件の1週間前に結婚したばかりでした。独房に首をつる場所などあるわけがない。しかも重要事件の被告だから、監視も厳しかったはずなのに」
 報告書に大統領の所見が添えられた。「私たちはまだ民主化改革の微妙な段階にいる。(暴動などの背後に)改革プロセスを失敗に導こうとしている者がいるかもしれない」
 

デマが流れる

…師に会ったのはあるうわさの真偽を確かめるためだった。「私たち仏教徒はモスクに入れない。仏教の寺院やパゴダ(塔)は誰にでも開放しているのに」というものだ。イスラム教の閉鎖性と不寛容さを示す事例として、「不気味な宗教」のイメージを増幅させてきた。結局スーレモスクを含めヤンゴンの主要モスクはどこも「立ち入り可(女性は宗教を問わず不可)」。うわさは根も葉も……
 

板挟みのスーチー氏

国民民主連盟(NLD)」のアウンサンスーチー議長は昨年の暴動以来、ロヒンギャ問題への発言を控えてきた。国民の支持を失いかねないと判断したのかもしれない。この姿勢に国際人権団体の幹部は「人権の擁護者ではなく、二流の政治家」とまで酷評…国民民主連盟シットウェ支部長…は党幹部に電話で直言したという。「(ロヒンギャ寄りの)あの発言は困る。このままでは次の選挙は戦えない。事務所から党の看板を下ろさせるつもりですか」と。
 

国連報告書は「一方的に過ぎた」?

…だがキンタナ報告は、第三者としてどう読んでも一方的に過ぎる。州都シットウェラカイン族住民組織「長老会」は、現地視察をしたキンタナ氏に2度にわたり抗議の書簡を手渡し「私たちには人権はないのですか?」と訴えてきた。
 客観性と公平さを欠いた「過度なロヒンギャ擁護」は、むしろラカイン族の反発と憎悪を一層駆り立て、その矛先をロヒンギャ族に向けてきたかもしれない。ある部分、闇のあるじに加担してきたのではないか
 

どちらも「自分たちが歴史的被害者」と主張

1942年、太平洋戦争の開戦後まもなく英領ビルマは日本軍の侵攻を受け、英国は撤退。その時。
 「英国軍はベンガル人に武器を渡し、日本軍と戦わせようとした。ところがベンガル人は日本軍に銃口を向けることなくラカイン族の村々を襲撃し、大虐殺したのです」(ラカイン族の元弁護士タープイン氏)ベンガルイスラム教徒の元国会議員アブタヘイ氏(49)は「事実は正反対だ」と反論する。英国が残した武器を手にしたラカイン族ロヒンギャ族を大虐殺したという。日本軍がラカイン族を支援していたとの説もあるが、いずれにしろ、双方の歴史家の見解も「虐殺されたのはわが民族だ」と真っ向から対立する。

事実関係も完全に把握できないままのこの問題だが、我々にとって困る問題もある。自分は「呼称の正義学」と命名して、この種の問題にはずっと興味を持ってきたがそもそも「ロヒンギャ族」と呼んでいいかどうか、というところで簡単にいかないのだ。
第二回が中心だが、ほかの回にもこの問題は通底している。

■闇の正体:ミャンマー宗教暴動/2 呼称に乗り移る憎悪
http://mainichi.jp/select/news/20131027ddm007030193000c.html

ラカイン州はかつて仏教国ラカイン王国が栄えた土地だ。その末裔(まつえい)は「ロヒンギャ族」の大半を不法移民とみなし「ロヒンギャ」という呼称も認めない
(略)
ラカイン暴動調査委は報告書で「ロヒンギャ族」の呼称を使っていない。理由をこう説明する。「(彼らは)『ロヒンギャ族』の呼称を国内外で認知させようとしている。この動きがラカイン族の怒りを募らせ、宗教暴動を燃えあがらせている」

 呼称にも憎悪が乗り移っている。
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 ◇ミャンマーの民族構成
 多数派ビルマ族と134の少数民族で構成。全体の9割が仏教徒ラカイン州(推定300万人)では多数派の仏教徒ラカイン族に対し、ベンガルイスラム教徒(ロヒンギャ族)100万人が居住する。だが、政府は「ロヒンギャ族」を自国の構成民族として認めていない。大半をバングラデシュベンガル地方からの不法移民とみなす。仏教徒の反イスラム感情を反映し、民主化勢力を含め国民の大半も政府の措置を支持している

事実として「不法移民」なのか「民族」なのかといえば、またこれもアレで…しかも、イギリス得意の「民族分断統治」のひとつとして、少数民族をあえて優遇し、中間管理職的な立場を与えて英国への直接の敵意をそらす、というあの政策も関係してくる。
第3回のほうから。

http://mainichi.jp/select/news/20131028ddm007030068000c.html
「でも、私たちのグループ(※ミャンマー民主化闘争を戦ったグループ)はロヒンギャ族』を自国の民族とは絶対に認めない。『侵略者』とまでは言いませんが……
 「ロヒンギャ族」は西部ラカイン州国境を挟んだバングラデシュ側にも数十万人いる。民族として認めれば彼らも受け入れざるを得ないという。出生率が極端に高く、州内の多数派になればイスラム国家としての独立を求めるに違いない、そんな懸念も口にした。
 だが、国連や国際人権団体はロヒンギャを「世界で最も迫害されてきた民族」と位置づける

第6回のほうから。

http://mainichi.jp/select/news/20131031ddm007030191000c.html
ロヒンギャ族は1948年に当時のビルマが英国から独立して以降、事実上「民族」扱いされていた。……ラカイン族のフラテイン検事正(56)は「当時の政権は人気取りのために(不法移民の)ベンガル人に選挙権を与えたのです。政治ゲームの結果、イスラム教徒の人口を増やしてしまった」…今の市民権法は旧軍政が82年に制定。これに伴う新たな国民登録証(身分証)の切り替えに際し、ロヒンギャ族への再発行を認めず「国民」から排除した。今は国連の要請もあり、ロヒンギャ族には「ホワイトカード」と称される一時滞在許可証が発給されるが、カードには「市民権の証しにあらず」のただし書きがある

つまり「呼称の正義学」的にいえば「ロヒンギャ族」という言葉を使うだけで、一方の側に加担していくことになるのだ…実に、なんとも。



今まで紹介しただけで、この連載「闇の正体」の重苦しい迫力は十分伝えられたと思う。フィクションに喩えるのはよくないが、なにか社会派ミステリーの中でも、特に重苦しいテーマの、傑作を読んだ時の様な…

繰り返すが、まだ連載途中です。どうなっていくのか、ほんのちょっとでも注目を。

付記 11月9日、連載14回を持って完結した。

http://mainichi.jp/shimen/news/20131109ddm007030096000c.html