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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

最近の新聞書評欄から

朝日新聞

SUNDAY LIBRARY:松田 友泉・評『さよなら、レバ刺し』谷口菜津子・著
http://mainichi.jp/feature/news/20130910org00m040009000c.html

実録マンガ誌『本当にあった女の波瀾万丈人生』で、“最高のレバ刺し”を探索するコミックエッセイ「レバミシュラン」の連載を開始した。

 例の「ユッケ集団食中毒事件」発生後の余韻があるなかでのスタートだったが、生肉の提供は自粛され、開始早々に「レバ刺しも食べられなくなるのではないか」という危機感を抱く。そして、本作一本しか連載がなかった谷口は、レバ刺しと命運を共にすることになる……



今週の本棚:白石隆・評 『国家はなぜ衰退するのか 上・下』=D・アセモグルほか著
http://mainichi.jp/feature/news/20130915ddm015070007000c.html

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源

なぜ豊かな国と貧しい国があるのか。本書はこれを二つのステップで説明する。まず、政治・経済制度を「収奪的」か「包括的」かで区別し、世界の国々の歴史的軌跡を制度の観点から解釈する。次に、世界のある地域で包括的制度が生まれ、ほかの地域では生まれていないのはなぜか、を説明する。
 包括的な政治・経済制度と繁栄はつながっている…



今週の本棚:若島正・評 『カッパ・ブックスの時代』=新海均・著
http://mainichi.jp/feature/news/20130908ddm015070009000c.html

カッパ・ブックスの時代 (河出ブックス)

カッパ・ブックスの時代 (河出ブックス)

とりわけ印象的なのは、カッパ生みの親である、「戦後最大の出版プロデューサー」と称された神吉晴夫で、「本でも雑誌でも、いや人間でも、実用性、物語性、扇動性の三つをそなえていないと、売りものにならない」、「カッパの本は、冷たいロゴスを底にひめた温かいパトス、つまり、知性をふまえた感性、感覚、感情にうったえる」ものであるべきだという信念を持ち、岩波新書教養主義に対抗して、著者と編集者と読者が同じ平面に並ぶような本作りを目指した。その結果として陸続と生み出されたカッパのベストセラー本は、戦後民主主義の一つの結実だと言ってもけっして大袈裟(げさ)な評価ではない。



今週の本棚:伊東光晴・評 『里山資本主義』=藻谷浩介、NHK広島取材班・著
http://mainichi.jp/feature/news/20130901ddm015070002000c.html

バイオマス燃料の先進国オーストリアにとぶ。中島氏もしばしば訪れた先進バイオマス国である。そこで見たものは、大きな製材会社がつくる生産量年間6万トンのペレット工場で、驚いたのは、ペレット需要者宅に運ぶ大型タンクローリー車である。車からの一本のホースが各家庭の貯蔵庫にペレットを送り、もう一本で燃えかすを吸い上げる。スイッチひとつでペレットに触れることのない、全自動ボイラーが整備されている。

 注目しなければならないのは、経済面で石油に対抗できることである。同じ熱量当たりにして灯油の2分の1の値段であり、これがバイオマスボイラー等の設備費の高さを補っている。この経済性がオーストリアのエネルギー生産量の28・5%を再生可能エネルギーにし、その比率を高めている。

朝日新聞

書評:ライス回顧録ホワイトハウス 激動の2920日 [著]コンドリーザ・ライス - 渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/201309080000

ライス回顧録 ホワイトハウス 激動の2920日

ライス回顧録 ホワイトハウス 激動の2920日

日本に対する評価は辛口だ。曰(いわ)く「日本は、停滞し老化しているだけでなく、周辺諸国からの憎悪で呪縛されているように思えた」「日本人は過敏で不安なのだ」等々。
 本書には、各国首脳との駆け引きや応酬を含め、息をのむような外交の舞台裏が生々しく綴(つづ)られている。回顧録ゆえの恣意(しい)性は否めないが、あまりの臨場感に700頁(ページ)近い大著を一気に読破した。



書評:首里城への坂道―鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像 [著]与那原恵 - 鷲田清一(大谷大学教授・哲学) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013090800005.html

もし彼がいなかったら、そして彼が撮りためた乾板写真と手書きで複写された史料がなかったら、首里城の取り壊しの阻止も後の復元も、紅型(びんがた)染織の技法の再生もありえなかった。が、その縁の下ともいうべき仕事は、死後30年ほとんど忘れ去られている。


書評:微生物ハンター、深海を行く [著]高井研/ぼくは「しんかい6500」のパイロット [著]吉梅剛 - 川端裕人(作家) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013090100006.html

微生物ハンター、深海を行く

微生物ハンター、深海を行く

微生物研究者の青春物語。一人の「ナニモノでもない」(しかし威勢の良い)学生が、いかに道を見つけ「青春を深海に捧げよう」と誓うに至ったか。情熱と挫折、偶然と必然、障害と突破を赤裸々に述べる。表紙は青い海に潜行するしんかい6500で、涼感溢(あふ)れる造りだが、騙(だま)されてはいけない。中身はこれでもか!というほど暑苦しく、猛烈な筆圧を感じさせる。インド洋での潜行の様子を描く章では、新種の生き物を発見して「キタァァァァァァー!!…ボクは無意識に叫んでいた。興奮して…ガンガン唾(つば)を飛ばしながら、コックピットの床をドンドン足で蹴飛ばし、自分の太ももを手でバシバシ鳴らしながら、叫びまくった」とくる。そして、このテンションがずっと落ちない。


書評:特派員ルポ―サンダルで歩いたアフリカ大陸 [著]高尾具成 - 小野正嗣(作家・明治学院大学准教授) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013090100005.html

特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸

特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸

ジンバブエでは報道規制と年率10万%(!)のハイパーインフレに悩まされながら取材を続ける記者魂。マンデラ元大統領を語る言葉はまっすぐな敬意に満ち温かい。
 それにしても著者の〈つながる力〉はすごい。来日したジンバブエ首相に故郷の村に住むその母親の写真を渡し、「お前、いつ行ったんだ!」と感動させる。リビアで内戦を取材中に「3・11」を迎えた著者は、反カダフィ派の義勇兵たちから「日本は必ず立ち上がる」と励まされる。


書評:世界が認めたニッポンの居眠り 通勤電車のウトウトにも意味があった! [著]ブリギッテ・シテーガ - 萱野稔人(津田塾大学准教授・哲学) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013090100010.html

世界が認めたニッポンの居眠り 通勤電車のウトウトにも意味があった!

世界が認めたニッポンの居眠り 通勤電車のウトウトにも意味があった!

要は、他人がみている環境のなかで眠るという発想そのものがないのである。
 そうした常識をもつ多くの欧米人にとって、電車内でも授業中でも喫茶店でも会議中でも居眠りをする日本人の姿は驚きの対象にちがいない。本書はその居眠りを、表題から予想されるものとは異なり、社会人類学的にまじめに考察した本である。



書評:相撲部屋ちゃんこ百景 [著]佐藤祥子 | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013082500004.html

相撲部屋ちゃんこ百景 ---とっておきの話15

相撲部屋ちゃんこ百景 ---とっておきの話15

春日野部屋では代々伝わる豚みそちゃんこ、錣山部屋では角界入りした元パティシエがつくる担々ちゃんこ、貴乃花部屋ではオリジナルのイタリアントマト鍋ができるまでをみる。…調理担当者に各部屋のちゃんこ鍋のレシピ本を買って渡したという力士も。朝青龍がこだわって毎食食べていたもの、佐渡ケ嶽部屋に鎮座している琴欧洲ブルガリアヨーグルト専用冷蔵庫など興味深いエピソードも。



書評:日本のタコ学 [編著]奥谷喬司 - 荒俣宏(作家) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013081100007.html

日本のタコ学

日本のタコ学

ここ20年で大飛躍をとげた日本の「タコ学」。その成果を集めた論文集となれば一読せずにいられない。たとえば「タコの体」は、どこが頭でどこが背中なのか? 最新の理解によれば、一般に坊主頭と思われている部分は、内臓が入っているので「腹」。眼(め)と口と脳がある場所は8本足の股座(またぐら)に収まっているが、「頭」に当たる。
 その頭に8本足がくっ付いているから、彼らは「頭足類」と呼ばれる。一方、口がある部分を「体の尖端(せんたん)(前)」とすると、坊主頭の先っぽは



書評:消費税日記―検証 増税786日の攻防 [著]伊藤裕香子 - 水野和夫(日本大学教授・経済学) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013081100012.html

消費税日記〜検証 増税786日の攻防〜

消費税日記〜検証 増税786日の攻防〜

2010年6月17日、菅直人総理(当時)の参院選での消費税10%発言から法案成立までの786日間を追った迫真のドキュメンタリーである。そして、行間に様々な歴史の教訓が隠されており、とても奥深い。
 本書を読んですぐに浮かんだのは、ビスマルクの「政治は可能性の芸術」である。1年1カ月だけ重なって民主、自民両党のトップだった野田と谷垣禎一が、多くの人の「増税の前にやることがある」との反対意見を押さえて成立させたのは、政治的現実のなかでまさに限界ギリギリまで可能性を追求したからだ。
 しかし、第4章の初め、いつから野田前総理が「政治生命を懸けて」増税を決意するようになったかというあたりから・・・



書評:グローブトロッター―世界漫遊家が歩いた明治ニッポン [著]中野明 - 内澤旬子(文筆家・イラストレーター) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013081100014.html

グローブトロッター 世界漫遊家が歩いた明治ニッポン

グローブトロッター 世界漫遊家が歩いた明治ニッポン

19世紀末の欧米にグローブトロッター(世界漫遊家)と呼ばれる人々が出現する。交通機関の進展と低廉化にともない、旅が消費の一形態として、貴族だけでなく、多くの民間人に開放されたのだ。
 鉄道や汽船を乗り継ぎ、世界各都市から辺境まで、どこでも行ってみたい、見てみたいという欲求に突き動かされて歩き回る彼らにとって、開国されたばかりの日本は、いわばレアアイテム。多くの旅の記録が残されている。
 本書はそれらの旅の記録から、開国から数年刻みで刻々と発展してゆく明治期の日本の様子を・・・



書評:「少女小説」の生成―ジェンダー・ポリティクスの世紀 [著] 久米依子 - 水無田気流(詩人・社会学者) | BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013081100006.html

近代日本の「少女小説」。このジャンルの独自性は、日本の近代化と文化表象の特異性を裏書きしている。少女小説が登場したのは、明治30年代のこと。その系譜は近年のコバルト文庫に至るまで、百年にもわたる歴史をもつ。だがその内容や領域に一貫性はなく、ときに相反する特性をも包摂する。これは、いわゆる欧米の「家庭小説」などとも一線を画すと・・・