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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

十字軍を率いたルイ9世は”聖王”、カソリックの正式な「聖者」でもある件。(〜宗教における見なしの自由)

塩野七生が2010〜2011年にかけて一気に書き上げた「十字軍物語」3部作。

十字軍物語〈1〉

十字軍物語〈1〉

十字軍物語2

十字軍物語2

十字軍物語〈3〉

十字軍物語〈3〉

ハードカバー版では15巻だっけ?の「ローマ人の物語」より、格段に短かったのには「やれやれ、助かった」感は否めない(笑)。
これを読んだのは少し前で、本格的な書評を書きたいと思いながらできなかったシリーズの一つなんだが…ちょっとだけ書くと、上杉謙信のスケールをさらに拡大したような”無敵のサラディン”という漠然としたイメージがあったのだが、それに詳細な肉付けができたことや、それゆえに、彼を敵に回して軍事的には一歩もひかなかった癩(らい)王ボードワンや、善悪は別にまさに信玄・謙信的な”名勝負”を演じたリチャード獅子心王など、またそれより少し前、十字軍との戦いより大地震に見舞われたダマスカスの再建を優先したヌラディン…などが印象に残った。また当時の外国での「攻城戦」のディテールがよく分かったことは、たとえば「進撃の巨人」理解のうえでも役立つのではないだろうか。

さて、
ここまでは
前ふりでした(笑)。
そして、本題はこの塩野七生の「十字軍物語」とは関係ない…それより後の話なんだからタチが悪い(笑)。

ただ、上の本を読んでいた前後、ネットなどでも合わせて十字軍について調べていたら、こんな人物が目に付いた。

ルイ9世 (フランス王、聖王ルイ)
ルイ9世(Louis IX, 1214年4月25日 - 1270年8月25日、在位:1226年 - 1270年)は、フランス王国カペー朝第9代の国王でルイ8世とカスティーリャ王アルフォンソ8世の娘ブランシュの子。死後、カトリック教会より列聖されSaintが称され、ここから、Saint-Louis(サン=ルイ)と呼ばれるようになった。これは日本語では聖ルイあるいは聖王ルイと訳される。米国の都市、セントルイスミズーリ州)の地名の由来ともなった。ブルボン家の先祖でもあり、同家の王の多くがルイを名乗るのも彼に由来すると思われる。同じく聖王と称されたカスティーリャ王フェルナンド3世は従兄。
内政に力を入れ長期の平和を保ったため、彼の治世の間、フランス王国は繁栄した。国内外を問わず、争いを収めるよう努力したためヨーロッパの調停者と呼ばれ、高潔で敬虔な人格から理想のキリスト教王と評価されている。ただ、宗教的情熱から2回の十字軍を行ったが、莫大な費用を費やし、自身も捕虜となるなど散々な負け戦を喫し、失敗に終わっている。

列聖です。
セイントです。
ヨハネ・パウロ2世やサンタクロース(セイント・ニコラウス)と同格です。
街にやってきたり、抱きしめた心の小宇宙を熱く燃やし奇蹟を起こしたりします。(実際、殉教者をのぞき奇蹟を起こさないと聖者にはなれない)


いま…中世や近世のころの征服者や簒奪者、領土や王朝、国を取った取られた・奪った奪われた、をどこまで道徳的な意味で批判や善悪の認定をするかはある意味ナンセンスな部分もあるが、それでも「十字軍」が宗教を異とするものへの偏見に満ちた、名分なき戦であり、その軍隊の略奪暴行もかなり激しかった、ということは常識になっている部分もあると思う。
「フランク人は踝までを血に浸してイエルサレムを奪った」、という…



少なくともアメリカの大統領が、中東での多国間による軍事行動の比喩として「クルセイド」を持ち出すと、騒ぎになる程の評価を受けてはいる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%8D%81%E6%AC%A1%E5%8D%81%E5%AD%97%E8%BB%8D
2001年9月11日の同時多発テロに関してブッシュ大統領が国家哀悼日に[1]「this crusade, this war on terrorism」(この十字軍、この対テロ戦争は―)と述べた[2] 。この言葉は欧州、アラビアから批判された。発言を擁護する層はcrusadeというのは単なる討伐という意味であって宗教上の差別はないとしたが、(例えば第二次大戦時にドワイト・D・アイゼンハワーが欧州に上陸・侵攻する日、D-デイの言明に際してThe Great Crusadeという言葉を使っている。[3] )中東では不満は残った。
 
US President George W. Bush, from a press conference upon arrival at the South Lawn of the White House, September 16, 2001.
"We need to go back to work tomorrow and we will. But we need to be alert to the fact that these evil-doers still exist. We haven't seen this kind of barbarism in a long period of time. No one could have conceivably imagined suicide bombers burrowing into our society and then emerging all in the same day to fly their aircraft ― fly U.S. aircraft into buildings full of innocent people ― and show no remorse. This is a new kind of ― a new kind of evil. And we understand. And the American people are beginning to understand. This crusade,

第7回十字軍の直接の発端はイスラム側がエルサレムを奪い、数千人を虐殺したことだ、とかいろいろ理由や弁明はつけられなくもないが、やはり十字軍の主導者であった、というのは今の常識ではやや自慢に値する経歴でもない。

しかし。
世界12億人の信者を擁するカトリックは、自らの信仰観、歴史観の発露として「ルイ9世は聖者である」と認定している。
8月25日は 聖王ルイ9世の「聖名祝日」であり、各地で祝われる(ただし日曜とかぶるときは日曜を祝うのだとか。今年はそれだな)。


「フランスのルイ9世は聖者である」は、十字軍を凶悪な侵略者と見なす人々の史観的には受け入れがたいものだろうとは思う。
しかしそれは、要は「宗教における見なしの自由」に類するものなのである。

■宗教における「見なしの自由」を擁護する…彼の為でなく、我が為でもなく。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111109/p3

 (※「見なしの自由」は当ブログの造語みたいなもので、この単語で検索すると関連記事がいろいろ出てきます


だって、何度も繰り返すが
実際にルイが神にその敬虔な信仰を愛でられ、天国の重要な位置に座っているのか、それとも十字軍などという蛮行は神の愛からほど遠い曲解や独善じゃと、硫黄と炎の地獄に投げ込まれているか、これは実際に逝って見ないとわからないんだから(笑)
上で紹介した、安重根列福もいま進んでいるのか停滞、中止されたかは不明だけど…なったら彼が福者かどうかは以下同文。
それはカソリックの中の「見なしの自由」でありましょう。
  
イスラム教徒がこぞって崇める預言者ムハンマドと後継者「正統カリフ」も、その時代の戦いと領土拡張がいわゆる”正義”だったかは、異なる立場から見れば疑問もあろう。

http://www.geocities.jp/timeway/kougi-45.html
正統カリフ時代はアラブ人の大発展が始まります。それまで、部族対立でバラバラだったアラブ人がイスラムによって一つにまとまる。これは非常に大きな政治的勢力になって、アラブ人のエネルギーがアラビア半島の外に向かって爆発する。
 アラビア半島の北、メソポタミア地方からシリア方面はどういう情勢だったかというと、長く東ローマ帝国ササン朝ペルシアが対立抗争して両者とも疲弊していた。そこにイスラム=アラブ人がなだれ込んでくる。
 642年、ニハーヴァンドの戦いでイスラムササン朝ペルシアを破る。この後、ササン朝は急速に衰えて651年には滅亡してその領土はイスラム支配下に入ります。
 また、イスラム勢力は東ローマ帝国とも争い、シリア、エジプトを奪いました。

逆方向からいうと…これも以前かいたが、宗教的な位置付けや認定はどこまでいっても
「○○○は俺の嫁

「お前がそう思うんならそうなんだろう お前の中ではな」
というのと本質的にはかわらんのだ。さっき紹介した記事の後半に出てきます。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20111109/p3



カソリックはまた組織として「中絶反対」「同性婚反対」を政治的に主張している団体でもある。

 ↑これはたぶん、公式には主張していない(笑)
ただ、カソリック信者やカソリックの行事に出席した人間がすべて、「ルイ9世は聖者である」という歴史認識や「中絶とは、人を殺すことである」という認識を認めたとはしないでいいだろう、という話。


8月16日、記す。(笑。1日遅い)

さらに付記

「見なしの自由」理解に役立つ非常に適切な一例であるので、2013年のこの記事にTBを張らせていただく。

靖国神社という霊言機関
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20131024/1382626838