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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ボクシングの名トレーナー、「蹴りもあるほうが、普通のボクシングよりパンチが当たる」…え?

再びゴン格。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130805/p2でも紹介した、所英男をはさんだトレーナー2人との鼎談記事だ。このトレーナー、一人は元修斗世界王者の勝村周一朗、一人は内藤大助などもサポートした現白井・具志堅ジムトレーナーの野木丈司。つまり一人は総合の、一人はボクシングのトレーナーなのだ。
そして、そのボクシングのトレーナーが変わっていて…ボクシングはルール上、やっぱり総合ではごく一部分となる。ボクシングに傾倒しすぎて、トレーナーにボクシングの専門
家がいて、バランスが崩れないか?というと、野木氏はこう言う…

「今まで僕がボクシングを指導してて、パンチに傾倒していく選手が多かったんですね。でも僕が彼らに言っていたのは
「もし自分がキックや総合をやるんだったら、絶対にパンチだけでは戦わない。もっと蹴りを使う」
と。どう考えても、いろんなことをやったほうがパンチは当たりますから。
なんでボクシングはパンチを当てるのが難しいかというと、パンチしか使っちゃいけない、攻撃していい部分が限られているからなんです。だからもしローキックを蹴っていいのなら、絶対に蹴るべきです。
  
 ーー野木さんが選手に「蹴ったほうがいい」というのは面白いですね。
 
それがパンチの原理ですからね。蹴れば蹴るほどパンチが当たるようになる…(後略)

えーーー・・・驚いたな。
ただ、「え?初耳だ!!!!」じゃなくて「ああ、これもか!」という驚きだった。
同じくゴン格の、過去の対談で…

当然の真理か”不都合な真実”か−「柔道は普通にやると寝技勝負になる」「投げは”不自然”。でも敢えて保護してる」(ゴン格)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121013/p1


「防御を教えたら簡単には投げられなくなる」…
「指導の最初は攻撃だけを教えて、お互い投げられたほうが面白いだろう」…
「「組み合う」という、柔道という競技を成立させる暗黙の掟」…
「投げは柔道において歴史的に保護されて洗練」…
「戦いとしては不自然なんですけど「投げなければダメだ」という思考」…
「勝負論だけを考えれば組み手と寝技に収斂していくのが当然」…

東国原ですね。
違った、そのまんまですね。というかここで、例示としてボクシングのことも出てたよ。
それをボクシングの専門家もみとめたと。

もとより、20年の歴史を重ねたMMAで、それまでの各種格闘技が参戦した結果分かったのは、

「XXX(というジャンル)最強!!XXXを学んでその頂点に立った人間は、その技術だけでMMAの頂点にも立てる!」というものは存在しない

ということだった。唯一、そう名乗れそうな実績を挙げたのが最初期のグレイシー柔術だったのだが、彼らが徐々に「柔術だけ」では勝てなくなっていくさまが、逆に上の命題の正しさの証明となったのだ。まあ違う競技なんだから当然なんだけど。
(ただ八極拳はまだ未参戦?なので分からない。ひょっとしたら二の拳いらずかもしれないが、極めた人の心は宇宙と一体化して争いをしなくなるのでね(拳児脳)。)
 
だからバキの初期トーナメントに出てきた、ボクシング世界チャンピオンの亡霊のいう「ボクシングの世界チャンプってのは、世界で一番喧嘩が強い男のことを言うんだぜ」というのは、やはり古きよき幻想なのだろう。

というより…逆にすごいなと思うのは、柔道もそうだが「あえて技術を限定し、それ専門で競う」という限定的なやり方で学んだ技術が、逆にかみくだいて応用するという意識さえあれば、限定されないMMAの場面でも通用するというパラドックスだ。
おそらくは、練習の中でずっと「蹴りやタックルをを交えつつパンチを当てる」という、本当にMMA想定だけの練習をやっている選手よりも。


すべての技術とは、そういうものなのかもしれない。