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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

相原コージのゾンビ漫画「Z」などから「設定共有の上でのオリジナル性」を考えたりしてみる。【創作系譜論】

【創作系譜論】
相原コージの新作「Z」を読みました。

『コージ苑』『サルでも描ける漫画教室』『ムジナ』など、日本ギャグ漫画界の重鎮的存在である相原コージが、満を持して描くゾンビ・パニック・ホラー『Z~ゼット~』。
発生初期、発生中期、発生後期の3段階でストーリーは展開されるが、その構成は毎回バラバラのオムニバス。また、ゾンビ化も人間だけには止まらないし、細分化された肉体さえもゾンビとして襲ってくるという、まさに手の付けようのない状態。
一筋縄ではいかないゾンビ・ホラーの傑作誕生!!

ゾンビ映画鑑賞数ゼロでも、なぜか知ってたゾンビの予備知識

まず初めに言っておくと、自分はまったくのゾンビ初心者、白帯のホワイトベルト。だってゾンビ作品には怖いという欠陥がある。
でもなんでか知らないが、ゾンビという概念はけっこう知っている。

というのは、かつて読んだ朝日ソノラマの雑誌「宇宙船」にて一度、ゾンビの大特集がされたことがあったんですよ。
グーグルの検索でわかるかな・・・わかんねえだろうな・・・と思ったがさすがグーグル先生、第20号で特集されていたとわかった。

宇宙船(20) ゾンビ映画特集/70-80年代未公開ホラービデオ/シルバー仮面/追悼・平田昭彦
http://homepage3.nifty.com/bananacrepe/AUTHOR92-EHONuchusen.htm

まあ、それは余談でして・・・とにかくそんなわけで、あとはちょこちょこと、断片的に知識が入ってくる。「ジョジョの奇妙な冒険」、パロディ系の漫画、町山智浩の評論、そして最近・・・・・・「今ゾンビのゲームが人気だよ」「ロメオ監督(宇宙船のおかげで知ってる)が自作をリメイクしたよ」「探偵!ナイトスクープで、子供がマジにゾンビと戦う話が世界的に評判になったよ」、云々かんぬん。


http://wthjapan.blog.fc2.com/blog-entry-21.html
■[探偵ナイトスクープ] ゾンビと戦う子供たちを見た海外の方たちの反応
以下は次の動画に対するコメント
http://www.youtube.com/watch?v=i7LKm5Vdius

オーストラリア
“そんなん言わんといて。俺たち頑張ってんねん”……最高だろ、この子は。 
アメリ
勇気のある子どもたちだ。
オーストラリア
俺が彼らの父なら、彼らを誇りに思うよ。……あの男の子、間違いなく将来モテるね。 
アメリ
むしろゾンビに対して申し訳なさを感じるのは俺だけか?

「オムニバス形式」の面白さ

・・・本題に戻る。
そんなこんなで、ゾンビ映画の鑑賞経験ゼロなのに、なんか結構予備知識を得ていた自分はこの作品を楽しめました。
 

あとからこの文章の中心テーマに関連して述べるけど、この漫画にはゾンビ映画に詳しい伊藤美和氏の解説文が載っていて、「オムニバス・スタイルが新しい」と評価していた。
そう、ゾンビといえば伝染病や内乱・暴動などのメタファーで、世界的な異変として描かれることが多い。ならば一人の主人公、ひとつの舞台に限定するより「世界のA地点でこんなことが」「その一方、世界のB地点でこんな事態が」とやると、それぞれのドラマ自体は卑小というか「神は細部にやどる」的ディティールを描きながら、それに広がりが感じられる。
人間の卑怯も、愛も、恐怖も、また巨視的に見ればそれがぜんぜんゾンビという存在に関しては通じないことも。

実際にそういう試みをやっているこの漫画を最初に読むと「なんで皆、これをしなかったのかね。一番ピッタリのスタイルじゃん」なんてコロンブスをゆで卵の前で皮肉る夕食会の貴族みたいな感想を持ってしまうのだが。
まあ、ゾンビの主戦場たる映画は、オムニバスってやはり少数派だものね。ロケ地だって増えるし、やはり漫画ならではか。
自分の引き出しはごく狭くて、とある一時期のごく限られたSFしか中に入ってないけど、思い出したのは・・・

霊長類 南へ (角川文庫)

霊長類 南へ (角川文庫)

毎読新聞の記者澱口は、恋人の珠子をベッドに押し倒していた。珠子が笑った。「どうしたのよ、世界の終りがくるわけでもあるまいし」その頃、合衆国大統領は青くなっていた。日本と韓国の基地に原爆が落ちたのだ。大統領はホットラインに手を伸ばした。だが遅かった。原爆はソ連にも落ち、それをアメリカの攻撃と思ったソ連はすでにミサイルを。ホテルを出た澱口と珠子は、凄じい混乱を第三京浜に見た。破滅を知った人類のとめどもない暴走が始ったのだ。

うわ、まさかこれ絶版じゃないだろうな??
この作品を筆頭にして・・・ほか、オムニバスというか視点をいろんなところに変えて「世界中を襲う災害、異世界の同時発生的脅威」を描くという点では、自分が思いだしたのは

火星人ゴーホーム (ハヤカワ文庫 SF 213)

火星人ゴーホーム (ハヤカワ文庫 SF 213)

鳥人大系 (手塚治虫文庫全集)

鳥人大系 (手塚治虫文庫全集)

でした。

ゾンビvs人間のパワーバランス・・・弱点の設定、強みの設定

あとひとつ解説、および作者本人のコメントから。

本作の「知能が低く、動きの鈍いゾンビ」は登場人物がゾンビを認識してから行動を起こすまでに若干の時間的な猶予を与える。…登場人物が考え、対策を立てることができるわけだ。
(伊東氏解説)

走るゾンビは好きじゃない。死後硬直を起こし腐敗が始まっているであろう死体が全速力で走るのに納得がいかないからだ。・・・(略)ギクシャク歩くほうが蘇った死体としてのリアリティを感じる
(作者あとがき)


こういう超自然の敵とのバランスって・・・もちろん作者不明のおとぎ話、民話の時代からあるものだけど(「穴の開いたひしゃくを渡す」「見上げ入道、見上げたぞ!」から「ポマード!」まで)、自分がこういうバランスのことで最近一番印象深いのは、やはり「進撃の巨人」だ。
以前かきましたね。

■「進撃の巨人諫山創…この人のブログが基本、格闘技ブログな件
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110227/p1
今の段階で、自分が感じているこの作品の魅力を「怪獣映画」の流れから位置づけると、一番面白いのは
「攻めて来る怪獣は強くて怖い。人間はめちゃくちゃにやられるが、ものすごく頑張ると倒せる、防げる」というバランス・オブ・パワーがあり、それを前提にした社会体制を人間側が構築している、というところなんですね・・・(後略)


あと、ゾンビの怪力やスピードをいろいろ設定した上で、野良犬駆除やスズメバチ駆除のようにゾンビを職人技で捕獲拘束する、砂川しげゆきの「ゾンビ取りガール」もそれに近いかもしれない。「あの作者が、こんなアクションシーンも描けるのか!絵がアレだけど(笑)」と思ったものだ。モーニングというメジャー雑誌に連載だったこともあって、自分のゾンビ知識の一部はこれだったか。
今回の「Z」では、ゾンビを歩けなくするために、足をなぎ払える薙刀が一番いい、と描かれ、最強伝説黒沢から「あさひなぐ」にまで広がる薙刀最強論を後押ししている。

就職難!! ゾンビ取りガール(1) (モーニング KC)

就職難!! ゾンビ取りガール(1) (モーニング KC)

本題。作者談「今まで『他人が描いているか』というこだわりがあった。だけどそれを捨てたので『Z』が描けた」

さてようやく本題。いままで長く描いてきたことがほんの前ふりであるという、豪華というか無駄というかの構成だが、ときどき出てくるうちの芸風なので気にしないように。
さて作者のあとがきから・・・と思ったら、もっと詳しいことが書いてあるインタビュー記事がありました。そっちを引用します。

http://natalie.mu/comic/pp/z
大根仁 たまたま別冊漫画ゴラクを読んでいたら「Z〜ゼット〜」の第1話に遭遇しまして、ちょっと驚いたんです。というのは、世代的に(相原さんの)デビューからずっと読んできまして、相原さんってジャンルを壊すというか、既存のものにちょっと違う視点を入れてみるような傾向があったと思うんです。
 
相原コージ ああ、そうですね。
 
大根 けどゾンビものって、ここ数年のマンガ界では乱発と言っていいほどよくあるジャンルじゃないですか。そこにあえて挑んでいった心づもりをお聞きしたいなと。
 
相原 やっぱりいままでは、基本的に人の描いてないものを描きたいなと思ってたんです。けどもう50(歳)になるし、いつ死ぬかわからないんで、どうせ死ぬんだしっていう感じです。
 
大根 来ましたねー、DS問題が(編注:DS=どうせ死ぬんだし)。
 
相原 確かにヒットタイトルも多いジャンルで、ちょっと抵抗はあったんです。けどもう、好きなことやろうっていう感じで描いちゃってるんで。(誰も)描いたことないものを描くぞっていう、いままでのこだわりはかなぐり捨てて

うん、今回のメインテーマはここなんだ。
いろいろとほかの作品や議論も含めて紹介していく・・・あるいは著作権だ、コピーライトだレフトだの話にもつながるのかもしれない。
だがとにかく、自分のいいたいことを整理する。

相原コージの新作「Z」という面白い漫画が、世に生み出された。
・しかしこの作品は、かつて作者がもっていた「他人が描いていないものを描く」というこだわりを続けていたら生まれなかった。
・「ゾンビは痛みを感じずに襲ってくる、ゾンビが人を噛むとその人もゾンビになる、知性は衰え、動きはにぶくなる」・・・といった”共通フォーマット(By ジョージ・A・ロメオ?)”を基にして、そこに細かい修正・個性を加えて、「Z」も・・・おそらく他の「ゾンビブーム」の作品も生まれた。
細かい修正・個性というのは、たとえば


大根 それで言うと、「Z〜ゼット〜」は頭を破壊しても動き続けるのが目新しいのでは。


相原 そうですね(略)「頭撃ったら何で死ぬんだろう」ってのはずっと疑問・・・(略)納得できなくて。脳みそ吹っ飛ばしたら死ぬっていうのは生き物っぽい感じがして、やや抵抗があったんですよね。だからもう何をやっても死なないほうが自然なんじゃないかなと・・・

自分はその、スタンダードとしての「頭をやられたら死ぬ」というのを知らなかったので、逆にこっちをスタンダードと思うところでした。「波紋を流し込まれると溶ける」というのはどれぐらいスタンダードなのかな(笑)

さて、そしてつい最近の朝日新聞に・・・これうっかり切抜きをなくしてしまったと思ったが、八方手を尽くしてネット上に発見した。
http://trivianews.doorblog.jp/archives/24944965.html

http://www.asahi.com/culture/articles/TKY201305180198.html (と、プラスアルファ)
弓弦(ゆみづる)イズル「IS〈インフィニット・ストラトス〉8」は・・・(略) 女性にしか扱えない超兵器、パワードスーツ「IS」の発明が、これまでの常識を一変させた世界。男性なのに、なぜかこの女性専用兵器を起動できた織斑一夏(おりむらいちか)は、IS操縦者を育成する学園に、唯一の男子として入学することに。
女の子ばかりの学園生活を謳歌しつつ、超兵器を操って格好良く戦うという、 ラブコメとSFロボットものをいいとこ取りした、男の子の欲望に大変忠実な作品・・・(略)
そんな人気絶頂の中、新刊が途絶えたことで、ファンをやきもきさせたが、その間に、「学戦年アスタリスク」「ハンドレッド」「落ちこぼれの竜殺し」など、本作と同じメカ美少女で学園ものという題材の新シリーズが 次々と登場、いわば「ISもの」という1個のジャンルが確立された感がある・・・(略)

ここに出てくる作品はひとつも個人的には知らないけど、最後の結論がこのテーマとつながるので採録したっす。
これを読む限りは、
相原氏が持っていたような「ためらい」ってのは、どうも少数派なのかもしれないと(笑)。
 
だが!!、しかしながら!!! 設定的な、世界観的な”類似作品”が次々登場することで、それが<ジャンル>となり、そしてかえってそれゆえに、最初のオリジナル作品を含めて末永く愛される・・・そんなパラドックスが、どうもあるようなのだ。

だいたい、類似作を集めて『「○○もの」ができた』、と見立てるこの朝日記事は、おそらくはこの金字塔的な指摘から直接的であれ、間接的であれ影響を受けていると思う。

■漫画の「ジャンル」と「類似作」をいろいろ考える(+「百姓貴族」「銀の匙」について)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110601/p1

ゆうきまさみ氏のエッセイ漫画「はてしない物語」で、盟友とり・みき氏の言葉として紹介されている。
当時物議をかもした「ディズニーのライオン・キングは、手塚治虫ジャングル大帝』のパクリじゃないか?」という話題に関し…(中略)…とり氏は盗作であることは認めつつ、こう言ったらしい。
『あれは2作目だから盗作だけど、だれか3作目、4作目をつくれば「ジャングル大帝もの」というジャンルが確立するのだ』

このリンクでは、やまむらはじめが「天にひびき」を描くとき、クラシック漫画というだけで「あの先行大ヒット作品(某カンタービレ?)があるじゃないですか」と躊躇した、という話を載せていたな。


実際のところ、「その世界観さえ使わせてもらえば、俺だったらああしてこうして・・・こんな面白い話が描けるのに」というのは、アマチュアのいわゆる”二次創作”が展開だけど、プロがプロ同士の作品やジャンルを見ても、そう思うことは稀ではないんだろうな。


そして、ある程度の共通な世界観みたいなものを軸にしつつ、そこから生まれたものは盗作やパクリとは別のものになっていく。

これがどういうふうなメカニズムなのか、どこに境界線があるのかというと結局分からないけど(笑)、だいたい自然に収まるところに収まってる気がするんだよね。

そういうものに、あまりパクリ云々のめくじらは立てる必要ないかもしれないと思う。(実際そんなにそういう騒ぎはないし)ただし、類似とか、ああ、この世界観をいただいてるな、この基本アイデアはXXが元祖かな?というのを探す、推測する、検証するのはめちゃ面白い。

それを考えつつ、体系をあきらかにしつつ、派生したものも批判ではなく愛する、というのができないかなあと。

そういう点で思うのは、さまざまな人が世界観をいただくよーな「中核アイデア」(仮称)を考えた人は、特別なリスペクトを表してもいいんじゃねーかなと。
上やリンク先でいえば
ジョージ・A・ロメロ ゾンビものの中核を固めた
手塚治虫 ジャングル大帝もの ブラックジャックものなどを固めた
・弓弦(ゆみづる)イズル 「ISもの」などを固めた
と。
・コカコーラ社 「サンタは赤い服に赤い帽子」ものを固めた
・名前忘れちゃった氏 「エルフ族の耳はとんがっている」ものを固めた
なんてのも入る(笑)。あれ神話にある話じゃなく、どっかのだれか、個人が考えたらしいよ?
大佛次郎もとあるジャンルを固めた人らしい。 つまり「第三の悪役」。

(この前いただいたコメント欄から)
木村 2013/05/18 13:28
第3悪役のルーツですが、シェーンより前に日本で大人気になった作品で、ハカイダーたちの直接的な先祖となった人物がいますよ。
大正13年1924年)に連載が開始された「鞍馬天狗」の近藤勇です。

鞍馬天狗が討幕のために戦う勤皇の志士なのに対して、近藤勇は幕府を助けるためにそれを取り締まる新選組の局長ということで絶対に相いれない宿敵なわけですが、作中では高潔な鞍馬天狗に対する下衆な悪役ではなくむしろ天狗に匹敵する高潔な剣豪として描かれています。
「角兵衛獅子」では天狗を罠にはめて殺そうとする幕府の大阪城代を押しとどめて一対一の決闘で決着をつけようとし、「山岳党奇談」では天狗と協力して暗殺集団山岳党を倒してしまいます。
これらの作品はすぐに映画化され大ヒットとなり、日本のあちこちで子供たちが鞍馬天狗役と近藤勇役にふんしてチャンバラごっこにあけくれていたとか。
鞍馬天狗が後の月光仮面仮面ライダーといった覆面ヒーローのルーツであり、近藤勇ハカイダーやシャアといった第三悪役のルーツであることは間違いありません


さて、ほんとはもう2つ、3つばかり例示をしたかったところだけど、書くほうもしんどくなってきたのでここでまず終わりにしよう。
続きはいつか書くことにして。

追記 コメント欄より

シス 2013/05/23 01:05
あれだけ「皇国の守護者」を引用しておいて原作者同じの「学園黙示録」に言及しないグリフォン氏の不誠実さに絶望した!
ま、あれはロメロ正当後継作品なのでゾンビ物としての特色は強いて言うなら国家レベルの対応と銃器による対ロメロ系ゾンビ戦術を書込んだぐらいなので語ることがないんですがw


gryphon 2013/05/23 02:00
いやあ。それ知らないやあ。
漫画化されたの?今から検索しよう。ふむ
http://www.geneonuniversal.jp/rondorobe/anime/hotd/