ゴン格から引用シリーズ。本日はこれ。
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昨年末、大沢はVTJで快勝(判定だが)。個人的にはVTJで一番面白い試合だったし、その後の大晦日、猪木祭りとDREAMと比較しても一番いい試合だったと思う。
で、ゴン格のインタビューでも精神論的な話や、今後どこが主戦場なのか、DREAMの不払いはあるか(笑)・・・などの政治的な話はなくて、技術論中心の、・・・VTJの試合の、自作自演ならぬ自作自解説となりました。
「自分の打撃は、フォームが同じ複数の打ち分けがある」
踏み込みも全部同じように見せるために練習しています。ぼく、フォームをすごく大事にするんですよ。相手からどう見えるか、「これとこれが同じように見えるか」とすごくチェック…右ハイが右ハイにしか見えない出し方はしていない・・・すべての攻撃で少なくとも2種類に見えるように・・・できることならそれを3種類にしていきたい・・・そのために打撃の威力が落ちることは気にしていません
この話はよく、投手のピッチングでは聞くんだけど・・・あるピッチャーがどんなにすごいカーブとすごい直球を持っていても、それがフォームで投げる前にバレバレじゃ意味が無い。それより球威が断然落ちる投手でも、まったくその2種類フォームが同じで分からない投手のほうが好成績だと。
細野不二彦の野球漫画「いとしのバットマン」では、異様に視力のいいバッターが、ピッチャーの手首に浮く筋まで見切って、投球を予測する、というエピソードがありました。
それにもともと菊野克紀の三日月蹴りも、他の蹴りと途中まで軌道が同じなので脅威が増す、といわれます。
しかし、実際の選手は、それをどれぐらい意識しているだろうかね。シンプルなぶんだけ、とても難しいことかもしれない。それにその2種類・3種類を「どの技とどの技のチョイス」にするかによって、組み合わせは無限になっていく。
今回の新たな武器が「ステップワーク」だった
これは箇条書きふうに。
・リオン戦を想定したのでなく、欠場中に新しい技術を意識的に導入した。
・ケガのせいで身体のバランスが崩れた。そこで「以前のやり方を取り戻そう」ではなく「どうせなら新しい技術にしよう」と。
・参考にしたのは元ZST王者の内村洋次郎。
・アメリカ型=パンチで前に出る相手に下がる弱点が以前の自分にあった。だから足を止めて蹴る以前の自分より、ステップでの出入りがいい。
試合前半を振り返る
・リオンのカウンターはやっぱり強くて怖い。
・だからカウンターを避けるための左勝負。
・右のパンチはボディ主体。
・1R、2Rはこちらがびびって顔への打撃は少なかった。なぜなら1Rの最初、まったく見えないリオンの右が来たから。
・その「1Rの右」は、こんなこともあろうかと顔の横に置いていた右手にぱしっとハマッて難を逃れた。でもそれでびびらされた。
・しかし、3Rになって「ボクシングでも自分が勝てそうだ」と判断した。
構え
・左の蹴りはもともと得意なのでサウスポーからの左ハイを多用した。
・しかし基本の構えはリオン対策でオーソドックスの深い構え。
・それは、練習で右がとても当てづらかった、鈴木悟のまねをした。
「全力では」行くな!!
アメリカの選手って打撃と同じ感覚でタックル・・・それも全力で行っていない。倒せたら倒すし、倒せなかったらそれでもいいや、という感じ…日本の大半の選手はタックルって「絶対倒してやる!」と…息を止めて突進…でもアメリカの選手はそれを途中でやめることができる・・・
・自身も今回のVTJで、本気でやればテイクダウンできるかも?と思いつつ、体力温存を考えて7、8割程度の力で押し込んでいた由。
実際の打ち分け
・・・全般的に相手と向かいあっているとき”意識の薄いほう”で勝負する・・・例えば10の意識を・・・3・3・3と全体的にバランスよく振り分けていたり、相手を見て『下は打ってこないな』と思ったら上の割合を増やしたり。そういうイメージの中で自分が攻撃で上下に振り分けていると、相手は・・・数字を振り分けていかないといけないからグチャグチャにすることができる・・・
うーん、まるでノムさんだな。別に『たしかに「ひまわり」というよりは月見草のイメージが無いでもない(笑)』と言いたいわけじゃないが。ID野球ならぬIDMMA。
ID格闘技、のほうが語呂がいいかな?
あとは「勝ちに不思議の勝ちあり・・・」など漢文崩れの格言をちりばめれば、企業講演会などにも呼ばれる(笑)。
技術解説も、ひとつの「伝説」「神話」である。
こういう技術解説によって試合を面白くするのも専門誌ならではであるし、たとえば「オールラウンダー廻」がこういう部分での格闘技の魅力を語っているのも皆さん、よくご存知だろう。
作者本人が「オールラウンダー廻は『格闘技漫画』というより『スポーツ漫画』の範疇」と語った。
■「オールラウンダー廻は『格闘技漫画』でなく『スポーツ漫画』の流れにある」(作者:遠藤浩輝)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120818/p1
他ジャンルのスポーツなら「おおきく振りかぶって」や「ベイビーステップ」とも似たものだ。
実はスポーツ・ノンフィクションの系譜で、レジェンドだった山際淳司氏や沢木耕太郎氏を越えたいと思った新世代はしばしば「スポーツの人間ドラマ(主体)ではなく、スポーツそれ自体を俺たちは描く!」と、差別化するアイデンティティとしてかつて打ち出していた。その一人がたとえば二宮清純氏だったと記憶しているな。
そういう世代の…誰だったかも忘れたほどあいまいな記憶なので内容も大意だが・・・こんな主張を覚えている。
「『江夏の21球』は、それはそれでいい。
しかし彼が最後にスクイズをはずしたボールはどんな軌道を描き、どう回転したかを突き詰めるべきだ・・・あるいはあの球は、ただの偶然じゃなかったか?それをも突き詰めるほうが、江夏の人生や孤高さより重要だ」
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たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。競技だけに邁進し、限界を超えようとするアスリートたちを活写した、不朽のスポーツ・ノンフィクション。
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・・・ところが。
これは私の意見なんだけど、上の大沢ケンジや、高阪剛、あるいは新世代ジャーナリストがたしかに詳しく書くようになった技術論・・・って、実は一回転して人間ドラマというか、「伝説」「神話」になってるんだよね。
だって、その解説が最終的には正しいかどうか、俺レベルではわかんないもの(笑)。
上で語られたステップワークだって
「むう、中国拳法奥義 巣徹布輪悪(すてっぷわあく)・・・まさか実在しているとは・・・」
「し、知っているのか、雷電ーーーっ!!」
とか言われても納得し・・・いやこれは喩えがさすがに悪かった。
梶原一騎の「空手バカ一代」も連載冒頭、マフィアに絡まれたとき手首の硬い部分をぶつける狐拳を使ったのは、拳を握って警戒されるのをふせぐため・・・云々という説明をしているでしょう。
そこに求められるリアリティの度合いは時代につれて変わっていくけど(基本、増加する)、しかしこういう細かい技術が人間ドラマ、伝説や神話、言い換えるなら「キャラクター」とも言っていい・・・・・
「ロード・ウォリアーズはシカゴのスラムでネズミを食って育った。強くなければ生き残れなかった」
「アンドレ・ザ・ジャイアントは一人で10人分の仕事をこなす木こりだった」
と、最終的には同じジャンルとして
「大沢ケンジはすべての攻撃で、一つのフォームから3種類の技を出せる!相手はそのどれかがわからない!」
というのも、収斂していくと思うのであります。
つまり・・・結論は、「技術論には、すこしハッタリを入れていい」(笑)。