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「繰り返される時間」は悪夢か、ユートピアか?・・・浅羽通明「時間ループ物語論」【創作系譜論】

【創作系譜論】

時間ループ物語論

時間ループ物語論

涼宮ハルヒの憂鬱』から『ファウスト』、浦島太郎伝説、夏目漱石『それから』まで。絶望の国を生き抜くための白熱講義全12講。

をこの前読み終えました。
少し先走って、ごく部分的に・・・浅羽通明氏が一例として紹介した作品が面白かったので「孫引き」の形でその作品を紹介した記事を書きました。

浅羽通明「時間ループ物語論」から、孫引きで「秋の牢獄」(恒川光太郎)を紹介
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121121/p3

さて、もう一度「時間ループもの」がかなり一般的であることを、有名な例を挙げて再紹介しよう(自分が見る見てないは関係なく)

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)

リプレイ (新潮文庫)

リプレイ (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)

遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)


未来の想い出」など、映画、アニメ化された作品もありますね。
今回の「物語論」の前半は、こういう作品の起源、進化、バリエーション、矛盾やそれへの解決アイデア・・・などを縦横に論じていく。基本的に、それが好きな人だから、マイナーなものメジャーなものを含めていろいろと、というか怒涛のごとく紹介していく。

純粋な、楽しいSF小説・漫画ガイドとしても読める。同じテーマといっても、視点のあて方で違ってくる、という話も指摘している。

時間ループ現象を主人公が苦しみと捉える物語と、チャンスと捉える物語・・・主人公が基本的に時間ループ、繰り返す毎日とか一定時間とかを厭うていて、なんとか新しい未来へ向けて脱出したがっている・・・(略)・・・ところがです。明日とか未来なんていっそ来ないほうがいい。幸せな充実した時間がループしていたほうがいい。主人公がそう思う物語りもあります(略)・・・現在の日本を生きる私たちを考えるためのメタファーとして、もっとも考える意味があるのはこのパターンなのかもしれません。

むろん、彼はそもそも「漫画などのサブカルを例にして社会論を語る」「社会を例にしてサブカルを語る」というのが一般的になっていく、その黎明期(を、どこにするかは色々ありましょうが)の論客だから、それでは終わらないだろうな、と思って読んではいたが・・・


第6講(この本は講義を元にしていて、文章も語り形式)で「あまり厳密なSFの中の『ループもの』だけを語っても仕方がない。もっと広く、それ以前にも遡ろう」と宣言。

そして、7、8講では、
ファウスト」「さまよえるユダヤ人」「落語『芝浜』」「中国説話『邯鄲夢の枕』」にまで射程をひろげていく。

ややとっぴな気もするが、たしかに落語「芝浜」で「小判の入った財布を拾った!これで当分遊んで暮らせらあ、宴会だ!」というのを「酔った上での夢」と思い込み(※奥さんから、そういう嘘をつかれるのです)、反省してマジメに働き、まっとうな幸せをつかむ・・・というのは時間ループのモチーフの変形、と言われればなるほどだ。・・・まだやっぱり、だまされてる感もあるが(笑)。
以下の動画は1時間以上の大作なので、あとで見るように(笑)


ま、でも、ここまでだったら「楽しいSFブックガイド」の範疇に入る話。10講で「浦島太郎」を論じた浅羽氏は
11講、12講で「高等遊民ニート高学歴ワーキングプア」というところにまで話を広げていくのである。
だから夏目漱石三四郎」「それから」・・・。そして永井荷風の実人生の生き方、さらに現在の「けいおん!」などにつながる日常系漫画などが題材となっていく。

夏目漱石が『三四郎』の次に執筆した長編小説は、学生時代を卒え、三十歳を過ぎても、学生同様の気楽でなんともいえない時間の流れを楽しんでいる主人公とその破滅を描いたものだったのです。1909年刊行の『それから』ですね。

『それから』という小説、普通、恋愛小説だとされてきました。・・・しかし、それがこの小説の中心テーマなのかは実は疑問です。(略)呉智英先生は『バカにつける薬』

バカにつける薬 (双葉文庫)

バカにつける薬 (双葉文庫)

収録の『読書日録』で・・・「(略)一編には、発表当時から今次の映画化にいたるまで、不倫の愛を描いた小説だとされている。しかし、本来のテーマはモラトリアム人間なのである」
この感想にはまったく異存がありませんね。(略)・・・『それから』はそういう小説だし、だからこそ…新鮮であり続けているのです

(主人公の代助に憧れた読者が多いという例から)これを「うる星やるつら2 ビューティフル・ドリーマー」の終わらない文化祭前日も、「エンドレスエイト」の終わらない夏休みも、作者は何も物語で肯定しているわけではないのだが、視聴者は「いいなあ」と憧れて観てしまうのと並べてみたいのです。

そして、時間ループを破るきっかけが「恋愛」であることに、「それから」との類似を見る・・・と、なります。
面白い方向に引っ張っていくもんだ。

「日常系漫画」についての論考は、いま読み直したら、これで独立エントリを作ったほうがいい気がするので、今回はこのへんにしておきましょう。
【追記】その「独立エントリ」がこちらです

■「『日常系漫画』というが、反対語は『非日常系漫画』?いや、それは『生活系』だ」(浅羽通明
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20121206/p1

関連ニュース。谷口ジロー原作・海外で映画化の「遥かな町へ」、DVDが来年日本で発売!!

【追記】コメント欄より

某出版関係者 2012/12/05 11:26
ループものなら「All You Need Is Kill」にも触れておくれよ。
日本よりも海外で評価高いやつだけど。アメリカで映画化だよ?(悪い予感しかしない)
gryphon 2012/12/05 11:49
ああ、自分は未読だけどこの本では紹介されているよ!!

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)

「これは戦闘SFものですね。宇宙からの無敵の侵略者と必死に闘っている地球軍の兵士キリヤ・ケイジが主人公。彼は同じ30時間をループしている。その間、蛙みたいな宇宙知性ギタイと戦うのですが、敗れて殺されても記憶はそのままに・・・(略)実戦による試行錯誤を繰り返し、鍛錬も積みに積んで・・・」

ほげ 2012/12/05 13:10
某所で議論したことがあるんですが、日本で一番有名なループものは、多分JOJOの吉良編じゃないかと。

あと、ビル・マーレーの「恋はデジャブ」も評価高いですね。タイトルで損してますが。
 
gryphon 2012/12/05 15:47
おっと、その「恋はデジャ・ヴ」は第三講のメイン題材ですよ!

恋はデジャ・ブ [DVD]

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「主人公フィルは、アメリカ地方テレビ局のキャスター…ナンパは圧勝できます。あるループの回にターゲットの娘に話しかけて…次のループでは予備知識十分で再挑戦…泥棒だって完璧にできる・・・(しかし)リタの優しさに触れ、本気で惚れたフィルは、次のループから変わります…」

再掲載 ちなみに浅羽氏のメルマガ(※本当の紙です)「流行神」の申し込み先について

氏本人が住居を引っ越した(とそのメルマガに書いてた)ので申し込み先が変わったかな?と思っていたのだが、最新刊が出たので確認できるようになった。

申し込み先(同書「あとがきに代えて」287Pより)
郵便番号170-0002
東京都豊島区巣鴨1-19-7-1304
浅羽方 見えない大学本舗