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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「おおかみこどもの雨と雪」…の”アナザーストーリー”。あの時の児童相談所職員が・・・

昨日、おとといとブログを休みましたが、ちょっと出歩いたり、1日の映画の日を利用して映画を見たり。
評判のこれを見た。午前10時台の初回上映なのにほぼ満員。同じ日にその後見た「ダークナイトライジング」より入っていたです。
http://www.ookamikodomo.jp/

おおかみこどもの雨と雪」ストーリー
http://www.ookamikodomo.jp/story/index.html

大学生の花(宮粼あおい)は、彼(大沢たかお)と出会ってすぐに恋に落ちた。やがて彼が人間の姿で暮らす"おおかみおとこ"だと知ることになったが、花の気持ちが変わることはなかった。そして一緒に暮らし始めた2人の間に、新たな命が生まれる。雪の日に生まれた姉は≪雪≫、雨の日に生まれた弟は≪雨≫と名づけられた。
雪は活発で好奇心旺盛。雨はひ弱で臆病。一見ごく普通の家族だが、生まれてきた子供たちは、「人間とおおかみ」のふたつの顔を持つ、≪おおかみこども≫だった。そのことを隠しながら、家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らし始める。つつましくも幸せな毎日。しかし永遠に続くと思われた日々は、父である"おおかみおとこ"の死によって突然奪われてしまった―――
取り残された花は、打ちひしがれながらも「2人をちゃんと育てる」と心に誓う。そして子供たちが将来「人間か、おおかみか」どちらでも選べるように、都会の人の目を離れて、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住むことを決意した

とまあ、そんな話ですけど、
以前、
尾崎豊の『15の夜』を、バイクを盗まれた側の視点から歌った、「アナザーストーリー」(マキタスポーツ)の歌を紹介しましたよね?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120331/p6


そういう意味で、この映画の前半30分ぐらいに登場した・・・主人公の女性が都会にいたときに、彼女のアパートを訪れた児童相談所の関係者の視点で描く「アナザーストーリー」を考えてみました(笑)

厳しくも、豊かな自然に囲まれた田舎町。
電車と、日に数本しかないバスを乗り継いで、見慣れない老人と、若者がこの町に降り立った。

おやっさん、こんなところにあの母親と子どもがいるんですか?」
「ああ、八方手を尽くして調べた。間違いない」
「でもおやっさん、3日後には児童相談所を定年退職するんですから・・・何もわざわざ有休を使って、過去にあやしかったってだけの家族を追わなくても」
「うるせえ!この道40年、児相に八兵衛あり、とうたわれた俺のカンが、やつらには何かあると言ってるんでい。考えてもみろ、予防接種の履歴も母子手帳をもらった記憶も出産した病院の記録も、何一つないんだぞ!そして、それが二人ともだ!」

「自然出産だ、予防接種なしの自然をありがたがる、例のナチュラル信仰系のおかあさんなんですかね?都会からこの山の中に来たのもそのためで・・・」
「分からん! だが、俺っちのカンでは、もっと何かの秘密がある・・・おれっちの部下が、あの女のところに行ったら、チェーンを絶対にはずさず、中に入れようともしなかった。そうとくりゃあ、次はドアを蹴破っても子どもたちの様子を確認するぞ!!と準備してたら、忽然と姿を消しやがった・・・」
おやっさん、ドアを蹴破るとか言ってるから、児童相談所史上最高の始末書数なんですよ」
「でえじょうぶだ、俺がその流儀を仕込んだお前が順調に増やしてるからな。お前が定年のころには俺を抜いているだろう」
「はあ・・・ほんとに僕は出世コースから順調に逸脱してきましたよ。おまけに彼女とのデートもすっぽかして、おやっさんに付き合ってこの山奥に・・・」
「なきごとは後にしな!  よし、まずは町教委に言ってみるぞ!!」


児童相談所といっても、有休で業務に関係なくやってきた人間である。町のお役人が、簡単に資料を教えてくれるわけもなかったが・・・そこは”児相の八兵衛”、おどしやすかしを交えてたくみに聞き出したのであった。
だが・・・


「畜生、やられた!!下のほうの男のガキ・・・やつ、11歳になってから学校にぷっつり通わなくなったどころか、どこにも姿が見えなくなったそうだぞ! しかも親のオカルトババア、『雨は居場所を見つけたんです・・』とか訳のわからんことを言ってるらしい」
「ひょっとして、虐待の末に殺して、床下にでも・・・」
「最悪の場合はな。しかし監禁していたりすることもあるかもしれん。すぐに警察を呼べ!!俺はこのまま、その女の家に踏み込む!」
「それは犯罪ですよ!!」
「子どもの命が掛かってるんだ!!かまうものか!!」

昭和の刑事ドラマっぽくなってしまいましたが(笑)、いやこれにも意味がある。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101103/p5
児童相談所を舞台にした漫画「ちいさいひと」を紹介したとき、「ダーティハリー的児相職員」ということを話題にした。
「違法?合法?関係ねえや。 俺は俺の正義に従って、虐待の疑いがある親の家に踏み込んで調査してやる!!」みたいな。

ちいさいひと 青葉児童相談所物語 1 (少年サンデーコミックス)

ちいさいひと 青葉児童相談所物語 1 (少年サンデーコミックス)

ちいさいひと青葉児童相談所物語 2 (少年サンデーコミックス)

ちいさいひと青葉児童相談所物語 2 (少年サンデーコミックス)

今回、「おおかみ一家」さんは、めでたく児童相談所の魔の手から逃れて、田舎へ逃亡することができたのだが、それでも「保育園に行きたい!」という子どもの向学心は抑えざるを得なかった・・・というシーンがある。


何がいいたいか、というと・・・この作品の価値とは関係ない話題ですよ。
こどもの虐待を防ぐ、暴くというような一点にしても・・・あるいは孤独死のようなことをふせぐ観点から見ても・・・それを実現するには行政が、ここの住民の生活、状況を把握し、ときには介入できる「長い手」を持たねばならない。どこにでもタッチャブル(手が届く)でなければならない。

で、そういう制度が充実していけばいくほど、今回みたいなストーリーは「いかに行政の監視を免れるか?」というサスペンスも入ってくるんだろうな、と。
今回の映画では、そのへんのことはさらりと触れた形になったが、それだけ行政の網の目・・・とくに子どもを保護する、といった観点からの子どもの管理が厳しくなっていくと、今回の映画のような話は作りづらくなる(笑)。
 
ただ、行政に「長い手」を持たせ、各住民の家庭の状況を細かく把握させ、問題があったらすぐに介入・・・こういう方向は理想なのか、逆に問題なのか?

そんな問いも控えている。

石原慎太郎孤独死の疑いがあれば合鍵で入れ。生きてたら『失礼しました』でいい」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120318/lcl12031800240000-n1.htm

孤立死防止で合鍵保有 都営住宅
2012.3.18 00:22 (1/2ページ)
 
 今年に入って孤立死が相次いだことを受け、東京都は、これまで管理していなかった都営住宅の合鍵を保有することを決めた。異変を感じても、鍵を壊して立ち入ることに慎重にならざるを得なかった面があり、「より円滑な安否確認のため」として、入室の基準の見直しも行う。公営住宅には孤立死に陥る可能性がある高齢者や低所得者が多い実態もあり、各自治体の対策にも影響を与えそうだ。

 ◆65歳以上世帯43%

 「怪しいと思えば合鍵で入ればいい。生きていれば『失礼しました。心配なので入りました』と言って帰ればいい

 東京都立川市内の都営住宅で、高齢母娘の孤立死が発覚したのを受けて今月9日、石原慎太郎都知事はこう話した。

相変わらずの極論感もあるが、極論であるがゆえに重要な部分も分かりやすい。これは石原氏にしては珍しい「ヒット性極論」。
行政が権限を持つ。どんどん「良いこと」のために個人の領域に踏み込んでいく。
これは孤独死防止でも、児童虐待防止でも共通してるところがある。

どこまでが、許されることなのか。


というわけでこのエントリ、映画自体の批評や感想とはだいぶ別の話なのであります(笑)。
それえもこんなことを、画面を見ながら漠然と思ったのは事実なので書いた次第。

参考と言うか関連というか。のちにいろいろ追記(2013年、TV放送があり、その時にネットの感想も盛り上がった)

おおかみこどもの雨と雪」での大学生の妊娠出産について思ったこと
http://ymrl.hatenablog.com/entry/2012/08/03/032022
この映画で描かれているのは「青年期の男女が恋に落ちれば子どもが生まれるし、親は子どもを想って育てて、周囲の人達が暖かくサポートして、子どもは立派に成長する」という世界で、そこに経済的なものを持ち込むことがたぶん間違っている。たしかに自然観察ガイドの仕事が軌道に乗るくらいまでの花の経済事情はかなり厳しいはずだけど、結果的にみんな幸せだからそれでいいんだ、というのがこの映画のなかの世界の話なのだ

おおかみこどもの雨と雪』のリアリティーとファンタジーのアンバランス
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20131221/1387640632

田舎に行けば障害が解決されるという嘘をつかないのは、ひとつの誠実さかもしれない。しかし物語としては、理想郷としたほうがフィクションとしての整合性はたもたれただろう。育児描写でストレスとカタルシスを描きたかっただけなら、それでも良かった。
解決する場面を描くような嘘はつけないのに、移住時においてのみ障害を念入りに描写するから、全体をふりかえると記号でしかなかったことが浮かびあがってしまう

おおかみこどもの雨と雪」の花がダメ母すぎる - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/606193
見てる時は細かいところにツッコミどころ満載でげんなりしたが、時間経ってみるとそれほど嫌いではない。ただ哀しいだけ。母親のダメさ加減がひどくて、子供達は早いうちに親離れせざるを得なくなった

アサウラが語る本当は怖い田舎の『おおかみこども』 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/605571
現実的展開で考えると、嵐を境に唐突に引き籠もりの息子が姿を消した。村の人々は母親が嵐のどさくさに殺したに違いないと噂を立て、好奇心旺盛なババアが親しげな笑顔を浮かべながら、様子を頻繁に覗いに来ては、村に情報と憶測を流す……という展開になります。