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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

フランス大統領の特性を語る名言

読売新聞2012年5月13日「ワールドビュー」(編集委員・鶴原徹也)より

「フランス国民は革命で、ルイ16世の首をはねた。なくした首を探し出し、体に乗せるのが大統領選なんだ」。
フランスの外交官がほろ酔い気分で語った。仏国民は今日でも、国王の風格を備えた大統領を潜在的に求めているという趣旨だった。

記事はこのあと、しかし!!今回の大統領選ではカリスマ性に欠けるオランド氏が当選し、ついに「フランスは偉大な国だ」という幻想が消えた大統領選になった・・・というふうにつづられている。皇帝サルコジの派手な公私の話題が基本的にマイナスに作用し、虚飾がはがれたことも大きかったという。
前回の大統領選はサルコジ氏は白馬にまたがってナポレオンをイメージさせ、対立女性候補のロワイヤル氏はジャンヌダルクを自らにダブらせたと(笑)「祝祭的な幻想に満ちた選挙戦」だったとしている。

大統領職というものに、「国父」「われらが象徴」という感覚が残り、国民から尊敬されているという点では、外野がざっと一瞥した限りでは、フランスとアメリカがやはりかなり大きな位置を占めているように思われる。
以前、朝生の討論でフランス人記者が自民党の一党支配を批判し「日本はまだ民主的じゃない」的に批判したとき「政治構造上、一番独裁国家に近い民主国家はフランスだ」と栗本振一郎が反論したことがあったな。
 
ド=ゴール、ジスカールデスタン、ミッテラン・・・と指導者の個性的にたまたま、という点もあるんだろうけど、そういう人が連続して大統領になっている時点でやはり上記のような「自分たちがギロチンに送った王家の代わりの国王」という意識もあるのかもしれない。

しばしば日本や英国のような立憲君主(日本は「象徴」)に関して「権威と権力を分離できるから効果的なんだ」という声があるが、本当かなー、と思いつつもフランスの事例とかを見るとやっぱりそうかな、と思ったりした。オランド氏が本当に「カリスマ無きフランス大統領」のまま全うできるなら、見方が変わるかもしれない。
一方で、儒教文化圏に位置する韓国の大統領、台湾の総統は、与野党拮抗のことや、まだ民選になって日が浅いこと、韓国では退任後つぎつぎと前任大統領や親族の不正が暴かれ、逮捕に至る…ことなどもあるのだろうか。フランスやイタリアほどに「国父」イメージは無いような気がする。これらもどう変わっていくのだろうか。権力と権威の関係は、完全に分離するのが良いとも一概には言えないし、むつかしいものだ。
フランス外交官の酔っての一言は、こうやってネットに残す価値がある。