最新のゴング格闘技に収録された対談からです。
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http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120304/p1
「海外と日本の柔道事故数を見れば、日本の指導者に問題があるに決まっている」(柳澤)
柳澤 フランス、欧米では柔道の練習中に重篤な事故はほとんど起こらない。でも日本では頻繁に起こる(略)…その事実が長い間見逃されていて、つい最近になって全柔連とはまったく関係のない学者が明らかにして大問題になった。欧米では起こらない柔道事故が日本でだけ起こるのであれば、日本の柔道家の指導方法やメンタリティに問題があるにきまっている。
【引用者感想】
自分は、フランスその他の「事故ないよ」報告、最初は「統計がいいかげんなんじゃないの?」「暗数があるんじゃないの?」「そもそも柔道は性質上、指導者がよければ重篤事故は無くなるなんて不可能じゃないの?」と思ってきたのだが、話題になって以降も特に疑念の声は上がってないのでやはり信じていいのだろうか。とすると逆に「指導方法次第で重大事故ゼロは可能」と言えるのなら、逆に希望が持てると言えそうな。
「中学は体格差が激しい」「思春期の繊細な子を、選択無しでフィジカルの物差しで測るのは…」(増田)
増田 …たとえば大学の部活動でしたら年齢的にも大人ですし、自分で選んだ道・・・でも今回の武道必修化はみんなに正課として必修・・・中学生は体格差が一番激しい…伝統文化を云々というなら選択権を与えて、茶道や稼動も全部入れて…フィジカルの強さというたった一つの物差しで、とくに思春期にさしかかる繊細な子供たちのアイデンティティを壊していいのかと。
増田 僕ら七帝柔道の選手も自分で選択して柔道一色でやってたわけです…それはいいんです、そういう人生を選択したんですから。でも公立の中学の授業で、本当に格闘能力で順位付けしてもいいのかと。…柔道だけがどうしても怖くて出来なくて…行きたい高校にいけなくなる子も出てくるるかもしれない……力の、なんていうんですかね、人間の根源的な尊厳の部分になってくるわけですよ、腕力というのは。(略)・・・きっと僕が今中学生であんまりスポーツが得意じゃなかったとしたら、柔道の時間があと2時間だ、1時間だと迫ったら次に柔道だと思うことがすごく怖い・・・(略)・・・ビクビクして次の柔道の日はいつだろうって、一人の子を悩ませるような、そんな授業は強制すべきじゃないんです・、
【引用者感想】
これはねー。人によっては「マラソン」がそうだろうし…(「ちびまる子ちゃん」には、小学生がいかにマラソンが嫌で嫌でたまらないかを実にリアルに描いたすばらしい一編があった)
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ただ、増田氏が柔道だけを特に危惧・懸念しているのは「腕力は人間の根源的な尊厳の部分になってくる」というミもフタもない厨二的リアリズム(笑)。しかし…逆説的だが、「だからこそ、尊厳に関わる腕力につながる基礎技術、そしてそれをスポーツとして扱うことをすべての国民は体験しておけ」とも考えられるかもしれない。
「寝技だけの授業をすれば安全ではないか?」(柳澤)
今日増田さんにお聞きしたかったんですけど、要するに僕は「寝技だけ教えればいいじゃない」と思うわけですよ、中学校の武道は1年間でたった13時間、ずっと受け身だけじゃつまらないし、怪我も困る。だったらたとえば押さえ込みだけの柔道にすればいい。抑え込みなら人は死なない。
じゃあ「絞め」も「関節」もなし。「抑え込み」だけならば、レスリングに似てくる。ちびっこレスリングはものすごく盛んですけど、ほとんど怪我しない。非常に安全なんですね。…スポーツ保険料は卓球よりも安い・・・
【引用者感想】
個人的にはすごく面白いと思う。寝技では重大な怪我をするかしないかも、柔道の怪我の問題を指摘した内田良氏も含め調査してほしいが、自分の経験からも、トーシロ同士で抑え込みしてもそんなに怪我はしないと思う。ちなみに全身運動ですごく疲れる。次の授業は全身がだるく、眠くなるはず(笑)
実は学校関係の情報を独自に、狭い範囲で聞いたかぎりでは、「ことなかれ主義」が逆にいい方向に行くようで、どうも聞いたところに限って言えば、ほぼ全部(13時間)を受け身とかをすることで落ち着きそうなのだ。
受け身の練習も、かなり細心の注意を払う必要があるが、走り高跳びとかにつかう、畳よりさらに柔らかいマットなんかもあるしね。
そして実は、もし「受け身を教えるだけ」の授業となったら…「つまらない」はともかく、体育の授業中屈指の「これからの人生で役に立つスキル」の指導時間になりかねないですヨ? 自分が経験から考えても…役立ち方では泳ぎのマスターとかに次ぐかなあ。受け身以上に、体育で、体育以外に生かせるスキルはあんまりないぞ(※もちろん、素人の13時間の付け焼刃でなにが出来る!生兵法で逆に怖い、となるかもしれないが、他の体育も同じだ)。紳士の社交術としては野球サッカーテニスなどのほうがいいのかもしれないが。
40代の柔道、70代の柔道をどうつくるか(両者)
増田 生涯で本当の人生のピークって言ったら、やはり50、60、70なんです。・・・ステージが挙がっていくべき・・・それが競技成績だけ見てたら20歳代がトップ。20代なんて人生でいえばまだ子供なわけですよ。
柳澤 柔道をずっと長くやっていた人たちが毎週一回、柔道衣をもってどこかのクラブに集まる。そういうライフスタイルこそが・・・(略)
増田 道衣を着て、正座をして、お茶をたてて飲んで、年上の80歳の柔道家との人生問答だけでもいいと思うんですね・・・(略)
柳澤 柔道を変えることができるのは、講道館の本当にトップの人たちです。僕はちょっと前までは、海を渡って実力で認めさせてきた人たちこそが偉いんだろ、理屈ばっかりの講道館は柔道の普及にあまり役立たなかったっていうふうに思っていたんです、正直なところね。
増田 二つあるんですよね。
柳澤 そう。両方大事なんですよ。やっぱり。
【引用者感想】
ほう・・・。
実をいうと、以前その柳澤氏の「思っていた」時代の記事を読んで自分は
武道の「裏歴史」を読み解け!講道館は官の力で柔術を乗っ取ったのか?(柳澤健)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090114/p2
という記事を書いた。
そこで、フィクションでもノンフィクションでもいいから「卑劣にも官の世界での地位を利用し、武の実力ではなく絡め手から、柔の世界を支配しようとする悪の講道館。それに徒手空拳、武の力だけで単身立ち向かう正義の柔術家!!というようなストーリー」…の作品を、だれでもいいから書いてほしい、と述べたんだよね。
そしたら柳澤さん「自分もぜひ書きたいと思っている。−−(だから誰かにこれを書いてほしいとあまり騒がないように)」と、とある機会に(笑)。
しかし、その後さらに取材を続けて、「講道館の礼や美しさを重視する考えも、やはり世界に柔道が広まるには必要だったのだ!」との結論に至ったとしたら・・・正、反、合ではないが、もし氏が「武道の裏歴史」書を実際に書く機会が訪れたときは、さらに深く味わいのある本が生まれるのではないか。期待が膨らむ。
両氏の今後の出版予定(ゴン格から)
柳澤健 「2012年6月、『日本レスリングの物語』を岩波書店から刊行予定。」
増田俊也 「2012年春に、続編である『鬼の木村政彦 外伝』をイースト・プレスから発刊予定」
既刊
- 作者: 増田俊也
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- 作者: 柳澤健
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- 作者: 柳澤 健
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