おなじみ「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」のはてなキーワードとかのつながりで検索してみると、これを読み逃していた。ちょうど身内の不幸でばたばたしてたころだったせいか、アンテナにも登録しているのに面目ない次第だ。
で、ここに、驚きの一節があるので紹介したい。
http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20111013
……わたくし、ワケあって某所で力道山の古い資料映像を見たことがあるのだ。それは「力道山・練習風景」とそっけなく題された白黒フィルムで、ダンベルでも上げてんのかなと思って見てみたところ、リングの上で若手選手の素早いタックルを切ってガブった力道山がそのまま4点ポジションの若手にガンガン膝をブチこんでおり、なんじゃこれはと仰天したのだ。力道山、マーク・ケアーに勝った時の藤田和之より強そうだったよ
上のエントリーでもちょろっと出てきたカール・ゴッチは力道山を評して「リキドーゼンは、片足タックルのひとつもできない」とくさしていたが、なるほど確かに自分からはできなかったかもしれない。
しかし、基本はアマレスベースのゴッチが真剣勝負をリキとやったとして、不用意にタックルにいったとしたら……まさに一寸先は闇の予想不可能の展開!!
そのゴッチのライバルだったルー・テーズは、力道山に関して、ゴッチと対照的でしかも相互に補完する「プロレス名言」を歴史に残している。
「リキドーゼンは、もちろんシューターだ。関節を知ってるとかレスリングの技術があるものはもちろんシューターと呼ばれる。だが、単純に『ケンカが強い』やつもシューターなんだよ・・・」
この時、テーズは力道山と並んでこの種のシューターとしてハーリー・レイスやジェシー・メイビアの名前を挙げていたとか。
力道山のプロパガンダ映画。「試合に勝って『物語』でも勝つ!」
もうひとつ、同ブログでは重要な資料について紹介している。
ちょっと多めの引用になるが、ご了承を。
…力道山が、道義的にはブック破りよりもひどいと思われることをその3年後にやらかしているという事実だ。
それは、力道山が出演した1957年の劇映画「純情部隊」・・・(略)岩本軍曹と力道山の試合は、日本選手権試合として行なわれる。「力道山が」「柔道家と」「日本選手権を賭けて闘う」 …賢明なるプヲタ諸兄にはお判りであろう、この試合のモデルは間違いなく1954年12月22日、蔵前国技館で行なわれた力道山対木村政彦の日本選手権試合である。(略)
軍曹の挑戦を受けてリキは言う、「八百長なんかやらん! リングに上がれば真剣勝負だ」。…(略)…力道山はあの日本選手権試合を、銀幕の中の主人公として、勝者の立場から歴史を語り直した(でっちあげた)のだ。
(略)
恐るべきプロ根性、容赦なき攻撃性に、オレは体が震えるほど感動するのだ。死者にムチ打つ力道山はナチスよりひどい。この映画を、木村政彦七段はどんな気持ちで観たのだろうか。いやまず観ちゃいないだろうが、それでも風聞に・・・(後略)
自分は連載終盤の「木村政彦は・・・」を評し
■近代柔道史の光と影。…そして最後の勝者は”物語”なのか?(ゴン格215号)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100422/p1
と書いた。つまり、究極的には「物語」によって語られていくものが勝者なのではないか、ということ。後に平野啓一郎が「司馬遷と史記」になぞらえて、これを裏付けていた。
しかし力道山は、それを百も承知だった。不慮の死により神話化は中断されたのだろうが、ここで紹介されている映画のように、ぬかりなく「物語」も支配しようとしていた・・・
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くしくも、『「物語」によって300年勝利し続けている』とみなもと太郎が評した、赤穂浪士の討ち入りの日は、(旧暦で)明日に迫っている……。