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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

DREAM.17とUFCから。「日本では”戦い”は勝敗以上に重要だ」という命題は正しいか?

今回、修斗を含め疾風怒濤の格闘技ウィークだった。
たくさん語りたい試合は多かったが、時間が無いためワンテーマだけ論じさせてほしい。


今成正和が、引き込み多用を恐れない、本当にワンアンドオンリーな戦い方で見事、一本勝ちを収めた。その一方で、TKなんかも解説席で指摘していたが、今回の今成勝利は、相手のエイブル・カラムが(結果的に)煽り映像でいうところの「今成シフト」を取らず「付き合ってくれた」ゆえにかみ合う見せ場の多い試合となったところもある。

もちろん今成シフトって誰でもできるわけじゃなく、カラムはそういう戦法を取りたくても取れなかっただけかもしれない。だが、前の所英男戦、その前の西浦ウィッキー戦を含め、エイブル・カラムの真っ向から突進してくるようなカウボーイ・スタイルはたいへん好感の持てるものだった。
 
そして「スタン」と同様に、アメリカではなく日本でキャリアを重ねることに誇りを見出し、日本人と勝ったり、負けたりの名勝負を展開するガイジン・ナンバーワンの「ヨアキム」…ヨアキム・ハンセンも今回、いい試合を見せた。実際に初期の代名詞であった「下からの強烈パウンド」も見せたし、スタンドでは川尻達也より一日の長を見せたし。


そういう「日本流ガイジン」のかつての雄たちが、こう語り合ったという。
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-1176.html

ルッテン いまのようなUFCの最盛期と、PRIDEの最盛期、どちらかを選ぶとしたらどちらを取る?
 
ランページ (略)前回は自分の入場テーマにPRIDEのテーマを使ったんだ。(略)どちらが良いとか悪いとかはないけど、どうしても選ぶなら日本の観客を選ぶね。
 
ルッテン 私もそれは分かるよ。日本の観客の前ではリラックスして戦えるんだ。それはね、「戦い」を見せている限り、勝ち負けは問われないという面があるからではないかな
 
ランページ そうそう。そのとおりだね
 
ルッテン 日本の観客は、選手としての私を変えてしまったんだよ。

そう、日本では「熱い戦い」を見せてくれれば、勝敗は問われない。
それは言い換えれば、上に出したナンバーワン・ガイジン…すでに日本で何敗だろうか…の、ヨアキム・ハンセンが、これも敗れたエディ・アルバレス戦後にマイクを渡した、いわば”加藤浩之イズム”なのである。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090503#p1
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090605/p2
そして、ランペイジは今を
振り返る。

日本に行ったとき、ある男のインタビューを受けた。PRIDE時代から僕を見てくれていたそうだけど、そいつには泣かされてしまってね、インタビューを中断しなきゃならなかった。その人が言うには、日本で戦っていた頃と今とでは違うじゃないですか、というんだ。かつてのあなたにはサムライスピリットがあった、でもUFCでのあなたにはあまり感じない、ってね。そしたらいろんなことをわっと思い出してさあ。


これだけですめば「レコードではなく戦いを重んじる、これがジャパニーズMMAだ!日本MMA万歳!!」で終わるのだが・・・もうひとり、これも日本育ちの部分が大いにある、最近隠退したクリス・ライトルへの辛らつな評価を紹介したい。これもOMASUKIより。

http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-1144.html

ライトルはボーナスハンターという役回りを生み出した。中堅選手が生計をたてる頭の良い方法だ。…観客を満足させるために星をリスクに晒す・・・スポーツと見世物との境界線を曖昧にする……ときにはケージのなかであえてスマートな動きを封印した。(略)…ライトルは殴り合いを望んだのであって、勝利を望んだのではない。このようなアプローチがメインストリームのスポーツで許容されるとは限らない


答えはなかなか出ないであろう。
ことに、日本のMMAを象徴していたはずの青木真也が「10-7で勝つのではなく、1-0で勝つのが自分の理想」と言い始め、ヒクソン・グレイシーばりに残り時間を計算にいれてフィニッシュにトライ、完勝した。



その次の日、あのUFCで、完全に現在進行形のMMAから落ちこぼれたと見られていたマーク・ハントが、絶対にトップ戦線とは差があるだろうな、という展開ながら、間違いなくエキサイティングな試合を見せ、トップのダナ・ホワイトから絶賛されたりしている。


そんな時代だから敢えて結論を出さず「闘い」と「勝敗」についての問いを、引用によって構成した。


いやまあ、結論まで持ってく時間が無いからでもあるんだけど。