INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

科学と政治(正義)…たとえば出産年齢について

科学と政治(正義)の相克、についてもっと続けてみようか。
この話題で、非常に読んでいて重苦しい気分になった記事が、1月にあった。
※現在、この企画シリーズの「アーカイブ」が出来ています
http://mainichi.jp/feature/funin/archive/

こうのとり追って:第2部・不妊治療を知る/1 「閉経まで望める」と誤解
◇30代後半妊娠率下降、卵子老化、学ぶ機会少なく
http://mainichi.jp/life/funin/archive/news/2011/20110131ddm013100046000c.html

http://mainichi.jp/feature/news/20110131ddm013100046000c.html

日本産科婦人科学会の調査によると、08年に不妊治療を受けた患者は30代後半がピークで、妊娠数は35歳を境に減少。出産率は32歳からゆるやかに下り始め、流産率は反比例して上がっていく。卵子の老化に伴い、染色体異常が起きやすいためとされている。
(略)
 主婦は「高齢での出産は難しいだろうと思っていても、40代で出産したタレントなどのニュースを見ると、自分も大丈夫だと錯覚してしまう」と話す。不妊治療歴4年の奈良県の主婦(37)は治療を受けながら、自分でも不妊について調べ、30代後半になると妊娠率が下がることを知った。「治療を始める前は、閉経まで赤ちゃんを望めると思っていた。治療を受けたことがない人が、誤解や偏見を持つのは仕方がないと思う」

正義によって、科学的(医学的)な事実が変えられるなら、「おいおい自然よ、年齢によって出産のリスクが高まるのはけしからんぞよ。それに平均寿命も延びている。両性の社会的平等、女性の社会進出を促すには、どの年齢で出産を決意してもリスクは同じようにしなさい」と言いたいところだ。本来なら、理不尽な話だ。しかし、実際にそうであると。もちろん、ならばいちばん肉体的に出産しやすい時期にいちばん簡単に出産でき、その後復帰できるような社会体制…産休・育休制度の充実や補助金などを考えるのが先決だが。

しかし新聞記事で。(略)した部分にこうあった。

…主婦は通っていた女子高の保育の授業で子育ての魅力を知った。だが「高齢になると妊娠が難しくなることは教わらなかった」。国の学習指導要領には、小中高校で妊娠しやすい年齢や不妊治療について教える規定はない。文部科学省は「早く産んだ方がいいというメッセージになりかねず、不妊についてどのように教えるかは難しい」(学校健康教育課)という。

さて。
この、国家の態度はどうであろうか。
「肩をすくめるアトラス」じゃないが、「出産できる年齢は限られ、また同じ出産でも高齢になるほどリスクは高まる」というのが科学的・医学的な「事実」として存在するとき・・・
選択肢はいくつかある。

1・それを知るも知らないままなのも自己責任。情報は巷にあふれているのだから国家がわざわざ教えることもない。
 
2・国家はこの事実を教えるべきだ。しかし価値中立的に。「だからといって、早く結婚して若いうちに産め、高齢出産はいくない!と言ってるんじゃないですよーー」ということは強調しつつね
 
3・国家は積極的に「高齢より若い時期の出産がより好ましいんですよ〜(註:個人の自由ですけどね)」という方針を打ち出し、キャンペーンするべきだ

難しいよねえ。どれを選んでも猛反発が予想される。
しかし「知らない後悔より知って後悔」というのはある程度正しい路線だし、その他の問題でも、個人的には上の「科学・医学が政治の上に立つ」という議論に好意的なスタンスをとっていたのだから、やはり(2)を選択するべきだろう、と思っている。

しかし・・・もう一度、引用して締めよう。良くも悪くも、現状はこうなっている。
 
国の学習指導要領には、小中高校で妊娠しやすい年齢や不妊治療について教える規定はない。文部科学省は「早く産んだ方がいいというメッセージになりかねず、不妊についてどのように教えるかは難しい」(学校健康教育課)

【追記】コメント欄より

肝臓白助 2011/05/14 10:23
高校学習指導要領 生活(解説書)では、17節栄養で、「妊娠可能な年齢の女性、妊娠、授乳期の生理的特徴を理解させ、それに応じた栄養と食事構成を考えさせる。」とありますので、少なくとも妊娠と加齢の問題については健康・食事と関連づけて指導されていることになります。指導要領にないといってしまうのはまずいですね。確かに不妊治療の実際については要領にも解説書にも書かれていないし、指導も難しいとは思います。