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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

地震時の交通マヒ、帰宅難民の話を描いた自転車漫画が3月30日発売の号に(アオバ自転車店)

ここから漫画の話題を。震災もあって3月中旬からの漫画雑誌などをかなり読み逃していたので、この週末にまとめて読んだ。
 
この前、ある知人が私に尋ねた。
「今回の地震を作品に反映した漫画というのは出て来ますかね?」
自分がいう
「エッセイ漫画は当然として、メタ的に現実の状況を登場人物が口にできる作品・・・実は『銀魂』とかが一番反映させやすいかもしれない。作品世界に間接的に反映されるというなら、諫山創の『進撃の巨人』などは、作者がブログで書いていたような感想が、あの世界には反映されるかもしれない。いずれにしろ、時間的にしばらく後になるでしょうが

しかし。
 
その中でだ、ヤングキングアワーズ(例の「ドリフターズ」や「それでも町は廻っている」の掲載誌)には、宮尾岳並木橋通りアオバ自転車店」という作品がある。
一言でいうと、「レモンハート」「王様の仕立て屋」「オーダーメイド」などと同じ系列といいましょうか、
「すごい知識と豊かな人間性を備えた店主がやっている専門店があり、そこでさまざまな商品の薀蓄や知識を披露しながら、顧客や常連との人情ドラマが展開される」という話、それの自転車版です。

並木橋通りアオバ自転車店 (1) (YKコミックス (945))

並木橋通りアオバ自転車店 (1) (YKコミックス (945))

(21巻目からコミックスは改題。)
アオバ自転車店 01 (ヤングキングコミックス)

アオバ自転車店 01 (ヤングキングコミックス)

自転車というのも今、安いものは一種の消耗品ですが、それでも酒やスーツに負けず劣らず、愛着や歴史を語りやすく、熱心なファンやアンティークのある商品であり、実に適切なチョイスだと申せましょう。

その作品で今回、
「すごく大きな地震があり」
「電車は全面運休、車は大渋滞」
「こういうときこそ自転車が効力を発揮」
するというシチュエーションから、「あの一日」の人間ドラマを展開します。  
 大きな悲劇をもたらした今回の大震災ですが、少なくとも首都圏においてはもっとも多くの人が直接経験した被害体験というのは「停電」「しばらく続いたガソリン・商品不足」と並び「帰宅難民」が多かったでしょう。
その時、自転車は。自転車に乗る人、売る人。…さらには「載っていたら『保育園の子供を迎えに行くのにどうしても自転車がいる。お願い貸してください』と頼み込まれた人」も。

・・・しかし、この雑誌は「3月30日」の発売だったのである。
月刊誌の漫画ってどういうスケジュールが一般的なのか知らないけど、偶然一致したとはとても思えないから、3月11日の大震災以降、あのニュースや体験に接し、あの非日常的な状況の中でストーリーを組み立て、作画して、丸々一本書いた事になる。確かにもともと、比較的描線や背景を描き込まずあっさりしたものだけど、そんなことが出来るとは。
それも突貫工事でなんとか大震災を無理やり話に入れました!というだけでなく、ストーリーの完成度も高いのだ。

しかし「自転車」をテーマにする漫画として、あの帰宅難民発生時の自転車についてはどうしても書きたかったことなののだろう(そういう時の自転車通勤の有効性は以前から言われていたし)。
とにかく、立派なプロの仕事・・・いや「プロ以上」の仕事だった。

【追記】いつ作者はこれを描いたの?などの疑問への「回答編」。
http://www.jgnn.net/ls/2011/04/post-1671.html