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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「編集手帳」子が、大震災の中で訪れた花見シーズンについて語った。

原発事故現場では大量の汚染水の問題もあり、微量のプルトニウムも検出された。

そんな中で、選抜高校野球も始まり、統一地方選挙も始まり(まつりであることは一緒)、チャリティーサッカーも行われたらしい(伝聞)。
そして「国破れて山河あり 城春にして草木深し…」ではないが、こんな季節でも春は日増しに深まり、花のつぼみは膨らむ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20110324-OYT1T01075.htm

3月25日付 編集手帳

 大正期の詩人、山村暮鳥に『桜』と題する詩がある。〈さくらだといふ/春だといふ/一寸、お待ち/どこかに/泣いてる人もあらうに〉◆詩人は伝道師として東北地方の町々を転任した経歴をもつ。今回の巨大地震で被災した福島県の地名を織り込み、雲に〈ずつと磐城平の方までゆくんか〉と呼びかけた詩(『雲』)も知られている。サクラの詩は、東北の人情と風物をこよなく愛した人が今日のためにあらかじめ書き残した挽歌のようでもある◆人を悼む心が花にもあるのか、今年はサクラの開花は遅めというが、それでも四国や九州から、ぽつりぽつりと花便りの届く季節を迎えた◆花に浮かれる心をたしなめて「泣いてる人」を思いやった暮鳥の優しさにうなずきつつ、だが――とも思う。生き残った者の誰かしらが、生かされてある者の誰かが世の中の歯車を動かしていかねばならない。音は小さくとも、季節の催事も“ガッタン”と刻む歯車の一つだろう◆この春、多くの人が愛でるのは、花ではなく、酒でもご馳走でもなく、生きてある身のありがたさに違いない。宴の筵(むしろ)で、そういう供養もある。
(2011年3月25日01時09分 読売新聞)