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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

クルーグマンが「憎悪の空気」を警告したコラム(アリゾナ銃撃事件)※再掲載

※再掲載について
昨日付のブログは、普通に見ていただくと最初に書いたエントリーのみが表示され、後から書いたエントリーは表示されないようです。理由はおそらく

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と思われます。上記のように「Crtl+F5」をやってもらうと読むことができ、そうお願いはしたのですが、ひと手間増えれば大きく読者が減るので、それも悔しいから昨日の記事を再掲載させていただきました。

■以下本文↓
 
ポール・クルーグマンの書いたこのコラムが反響を呼んだらしい。
http://www.nytimes.com/2011/01/10/opinion/10krugman.html?_r=2

2008年の大統領選を見て私は、1992年のクリントン大統領当選後に強まり、オクラホマシティ爆破事件で頂点に達した「政治的な憎しみ」の盛り上がりを思い出して胃が痛かった。マケイン - ペイリンの集会の群集が私にそう思わせたのだが、国土安全保障省も2009年4月の内部報告書で同じ結論に達し、極右の暴力性が拡大、上昇していたと警告している。
保守勢力は、そのレポートを非難したが、その脅威は土曜日に殺されたジョン・ロール判事や、重態のガブリエル・ギフォーズ議員の悲劇によって現実のものとなった。いずれかの時期に、だれかが「次の段階」に進むだろうと思われていたが、いまや現実となった。

アリゾナ州の銃撃犯が、精神面の問題を持っているように見えるのは事実だ。しかしそれは、この事件がわが国の”空気”の変化とはまったく無関係であり、彼の行為は孤立した出来事とみなすべきであるということを意味しない。

昨年、Politico.comはすでに連邦議会議員に対する脅迫、圧迫などが3倍に急増していると報告した。そういう脅迫などに携わる人間の多くは精神疾患の既往症があるという。だが、病的な人々の行動より「政治的暴力」によって揺らぐ人々によってアメリカの現状が生み出されている。この事件に対処したアリゾナクラレンス保安官の言葉を聞けば、多くの問いはいらないだろう。
 
「毎日毎日、辛辣なレトリックがラジオやテレビから流されていて、みなそれを聞いている」
 
…もちろん大半の人は、そういうものを毒のあるレトリックだと受け止めており、実際の暴力に至るような短絡的なことはしない。だが、ごく少数は…必然的に…一線を踏み越えてしまう。

 
ここで私たちの社会が抱える病について、はっきりさせておくのが大切だろう。それは「礼儀正しさ・市民性(civility)」が一般的に不足している、とかそういうことではない。学者の好きな用語だとは思うし、たしかに礼儀正しさ(Politeness)は美徳かもしれないが、「行儀が悪い」ということと明示的・暗示的な暴力の間には、非常に大きな差がある。また侮辱と煽動も、イコールではない。
 
ポイントは、民主主義というものは、われわれと意見を異にする者、そして我々が嘲り、糾弾する対象としている連中にも「居場所」を設けているということだ。
だが「邪魔者を取り除け」的なレトリックのほうはそういう場所が無い。彼らは「必要ならば討論相手は根こそぎ取り除け」、と提案しているのではないか? 暴力台頭の背後には、こういう「邪魔者は消せ」的レトリックが、政治的な言説の中に満ち満ちていることがある。特にそれが放送される電波に乗って、われわれのもとにとどいている。
 
さて、そういう有害なレトリックはどこから来るのか。
バランスをとるような欺瞞的な言い方はやめよう。それは「右」側から、圧倒的にやって来ている。
自ら武装して自衛する(“armed and dangerous” )ような民主党議員がいたら村八分になることが必至だが、共和党の新星ミッシェル・バハマンはまさにそんな感じなのだから。
 
メディアにも巨大なコントラストがある。Rachel Maddowやキース・オリバーマンの放送でも確かに、あなたは共和党への辛辣で嘲笑的なコメントを聞くことができるだろう。しかし、さすがに政府高官を撃てとか、ワシントンポストの記者を打ち首にしろ、というようなジョークは聞かないはずだ。グレン・ベックビル・オライリーからは、そういったジョークを聞くことになる。
 
もちろん、ベックやオライリー、そしてその仲間は、人気や需要が聞き手側にあるから、それに対応している。他の民主主義諸国の国民は、「アメリカ精神」に驚くかもしれない、健康保険を拡大しようという中道左派の大統領の努力が「圧制の叫び」と迎えられ、それについての武力抵抗が話し合われているのだから。
それでも、それは民主党員がホワイトハウスを支配しているときはいつも起きていることだし、そういう怒りを掻き立てるマーケットも常にある。

しかし、仮に多くの人が「憎しみ」を聞きたがっているのだとしても、その欲求に応じて与えていいものでは無い。全ての常識人は、これらを敬遠する必要がある。
残念ながら、そうはなっていない。
「憎しみの御用商人」は、共和党の幹部たちに敬意をもって遇されていた。
ブッシュ政権のスピーチライターだったDavid Frumが こう言ったように。
共和党員は皆、こう考えている。、FOXはわれわれのために、われわれはFOXのために」と。

アリゾナの惨劇は、私たちの対話から毒のあるレトリックを減らす契機となるだろうか? それは共和党のリーダー次第だ。彼らは今、アメリカに起きていることを認めて「邪魔者は消せ」的なレトリックに対して明確な態度を取れるだろうか?それとも、事件は頭のおかしな男の突発的名行為として従来と同じ路線をとるのだろうか?


アリゾナの事件がわれわれに自問自答を促すことになるなら、この事件はターニング・ポイントになったと言える。そうでないなら、「土曜日に起きたこの惨劇は始まりに過ぎなかった」といわれることになる。
 
ポール・クルーグマン

 
 

翻訳を終えて

■(1)誤訳の指摘は受け付けねえ。
空手バカ一代」の冒頭で、闇市で米軍の残飯をぞうすいにして売っていた親父が、たばこの吸殻が入ってるとクレームをつける大山倍達に「このご時勢なんだから、文句を言いなさんな」と諭す場面がある。俺だってまともな翻訳でNYタイムズクルーグマン・コラムぐらい読まさせてもらいたいところだが、どこにも無いからグーグル翻訳・エキサイト翻訳にぶっこんで作ったんだ。
はてなクルーグマン・ファンが多いことは知ってるぞ。
こういうときこそおっとり刀で、ずばっと翻訳、紹介しておくれよ。
 
というわけで自分の翻訳の正確さについて、保証はまったくするつもりはないので、疑問点は
http://www.nytimes.com/2011/01/10/opinion/10krugman.html
で各自検証のこと。
(と書いた後、なんか朝日新聞にコラム翻訳が載ってたとかなんとか…まあ、あるならそれに越したことはないが)
 
■(2)このコラムは前後がある。またコメント欄は炎上したらしい
クルーグマンNYタイムズに毎日書いてるのか、事件を受けて臨時寄稿したのか知らないけど1月8日にこれを寄稿。
http://krugman.blogs.nytimes.com/2011/01/08/assassination-attempt-in-arizona/
これも翻訳したかったが、無理。
そして翌日9日が、翻訳したコラム。
んでこの後、コメント欄の閉鎖についてのお知らせがどっかにあったような・・・検索中。(追記:見つからなかった。だが一度目にしたのは事実だから、どこかにはあzるはず)
 
■(3)左派サイト「デイリー・コス」に執筆した人も、自らの過激表現謝罪に追い込まれた
昨日の
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110113#p3
で、米国事情紹介サイト「苺畑」から「大急ぎ、自分たちのサイトから標的マークを消す左翼連中」
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2011/01/post_1159.html
というエントリを紹介したが、そこからのリンクをたどると
http://www.wnd.com/index.php?fa=PAGE.view&pageId=249273
から
http://www.dailykos.com/story/2011/1/9/934674/-My-Apologies-to-This-Site,-The-Victims,-and-Rep.-Gabrielle-Giffords
という記事があった。

My Apologies to This Site, The Victims, and Rep. Gabrielle Giffords
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by BoyBlue
Sun Jan 09, 2011 at 10:00:47 AM PST

Most of you know by now my diary bemoaning Rep. Giffords' voting against Nancy Pelosi has been taken by the far right to preemptively protect themselves when it is inevitably found out that the perps against Congresswoman Gabrielle Giffords are tied to the far right and even perhaps (not saying this definitively) to the Jesse Kelly campaign or simply some of his disgruntled sour grapes supporters.

So it is not surprising to me seeing the ugliest campaign i have EVER seen, that supporters of the fascist side would not take his loss lightly. And the gun laws here in Arizona are FAR too lax. So:
(略)
1. i fully apologize to all the victims in this shooting, including Congresswoman Gabrielle Giffords, for my poor choice of words in that diary.

2. i fully and respectfully apologize to this blog and to Markos himself for the bad publicity amongst the right wing this has caused, including the NYT.

3. i apologize to the DailyKos membership and readership for being maligned by the far right blogs.

「右翼の宣伝材料に使われるので記事を削除し、謝罪する」ということで、逆に対立の根深さを感じる。
 
■(4)「クルーグマンさん、あんたの表現も過激でっせ」という指摘
上の「苺畑」ブログのかたが、ごく最近はじめたというtwitterより
http://twitter.com/#!/ichigobatakekak/status/24684217073926145

@ichigobatakekak 苺畑カカシ
「革新派に告ぐ、ジョー・リーバーマン上院議員の藁人形を吊るし上げろ。」 ポール・クらグマン。(12/2009 NYT)誰が暴力を奨励してるって?

上のコラムの中の「行儀が悪いとか侮辱だというのと、扇動とは違う」というのは上のような指摘への予防線だったのかな?
 
 

「表現・言論」と「実際に起きる事件」との関連・責任を論じるなら「あの問題」とも地続きではないか?

この事件を論じたニューズウィーク・コラムのブックマークに書いたんだけど
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/01/post-242.php
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/01/post-242.php

ふむ、だが”表現”が”現実事件”に負う責任の有無、つー点では某国首都某条例問題とも地続きちゃう?
「(多分落選運動の意味の)標的マークが銃撃の後押しをした」との命題を正としつつ「強姦肯定漫画が強姦を生む」を偽にできるか?

「そうだ、だからそんなマンガ描くやつは、爆弾仕掛けられてあったりまえの話だ」「知事、そういう発言がまずいという話を今。」

それはともかく、はてブは何しろ文章制限が短いから意を尽くせなかったけど、今翻訳したクルーグマンコラムの固有名詞を変えると、けっこう聞く理屈ではありませんか。

「毎日毎日、性犯罪を肯定するような過激な表現が雑誌や携帯サイトから流されていて、みなそれを見ているのだから」
もちろん大半の人は、そういうのを毒のあるマンガ表現だと受け止めて、実際の性犯罪に至るような短絡的なことはしない。だが、ごく少数は…必然的に…一線を踏み越えてしまう。

ともにNOを言うか、クルーグマンオリジナルはYES、改変はNOか。その反対か。けっこう重い問いだと思うけど。
 

追記 先行エントリの紹介

クルーグマン」のはてなキーワード経由で探したら、先行して部分的にこのコラムを紹介しているサイトがありました。
■右翼的レトリックの帰結
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110111/1294690248

大きく参考になる記事
アリゾナ銃乱射事件と分裂するアメリ
http://meinesache.seesaa.net/article/180550121.html