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水説:不況の「石油の指紋」=潮田道夫
エコノミストの水野和夫さんと気鋭の哲学者、萱野稔人・津田塾大准教授の対談を収めた「超マクロ展望・世界経済の真実」(集英社新書)を面白く読んだ。
いまの大不況は単なる景気循環の問題ではない。資本主義の大潮流の変化そのものである。そういう「超マクロ」の主張である。 両氏が着目するのは、新興国の台頭で先進国が資源(とりわけ石油)を買いたたけなくなり、「交易条件の悪化」が起きた点。(略)
- 作者: 萱野稔人,水野和夫
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/11/17
- メディア: 新書
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ふたりの議論はカナダの投資銀行のエコノミスト、ジェフ・ルービンの書いた「なぜ世界は縮みつつあるのか−−石油とグローバリゼーションの終わり」に似ている。ルービンも今度の不況の根本原因は石油価格の上昇だという。疑う者は戦後の不況を検証せよ。いずれの不況にも「石油の指紋」がくっきりと遺留しており、今回もその例外ではない。米国の不動産バブル崩壊の理由は金利の上昇だが、それを起こした犯人は石油価格の上昇である。
(略)
カナダのオイルサンドなど非在来型の石油は確かに大量にある。しかしそれは「高い石油」。「安い石油」はピークを越しており、もうグローバリゼーションは維持できない。結論は「世界は縮んでいくほかない」である。
(略)
しかし、悪いことばかりではない。原油が1バレル=100ドルを超すような高値の時期、中国から米国への鉄鋼や生鮮食品の輸入が急減した。それに代わって国内鉄鋼業は増産に追われ、耕作放棄地で再び作付けが始まった。そうは言っていないが、米国は中国なしでやっていける。石油は枯渇しないが高騰する。グローバリゼーションは一夜の夢だった。
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