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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

行政が、全国民の指紋やDNAを強制登録すれば「非実在高齢者」のかなりの部分は解消される、が。

http://www.asahi.com/national/update/0804/TKY201008040083.html

所在が分からない100歳以上のお年寄りは、どこにいるのか――。行方がつかめていない人の住民登録がある自治体や警察の調査は、難航している。今の仕組みでは「死亡届」が提出されない限り、公的機関は生死をつかめない。希薄になった家族や地域のつながりが、「長寿社会」を足元から揺るがしている。
(略)
総務省などによると、自治体による住民の安否確認は「届け出」がもとになっている。自治体は、住民が適切に届け出をするとの“性善説”にたって戸籍や住民基本台帳を管理し、給付金などの行政サービスを提供する根拠にしている。「死亡届」が役所に提出されなければ、戸籍や台帳上では生きていることになり、行政サービスも提供され続けることになるのだ。

 死亡届は親族らが記入欄に必要事項を書き、(1)届け出人の住所(2)死亡者の本籍地(3)死亡地――のいずれかの自治体に提出する。親族がいない場合は、アパートの大家や管理人、病院の院長らが届け出人になるケースもある。孤独死などで死亡届が提出されない場合、近くの住民らが気づいて役所や警察に連絡が入ることもあるが、「故意に死亡届を出さない場合、確認のしようがない」という。
(略)
一方、各自治体は一定の年齢以上の高齢者にお祝いの金品を手渡す制度があり、さりげなくそれを「安否確認の代わり」としていることが多い。だが実際には、寝たきりだったりして、家族が代理で受け取る場合も少なくない。

たしか、報道の中では海外で驚きの反応が多数あり、その中には「日本と言えば事務処理・行政処理がきっちりしてるというイメージだったのに意外だ」という種類のリアクションがあったと記憶している。
まあ、そうだろうね。
つーのは、「Aさんという個人が、確かに存在している」「ここにいるAさんを名乗る人は、確かにAさんである」ということを確認する手法という点では、たしかに日本以上に進んでいる”先進国”が多数あるからだ。
それはもちろん、治安上の問題も大きいだろう。
http://www.japancorp.net/japan/article.asp?Art_ID=50146

NEC(TSE:6701)は、ボリビア多民族国(注1)において、本年12月6日に実施される次期大統領選挙で有権者二重登録を防止する大規模な指紋照合システムを構築しました。

本システムは、約400万人の有権者の指紋を、全国に約3,000台設置した指紋読み取り機器を介してサーバ上のデータベースに事前登録し、投票者の指紋と登録されている指紋を照合することで、より正確な選挙人データの作成・維持を可能とするものです。予め指紋登録をしなければ投票ができない仕組みになっており、本システムの導入は、選挙時の不正を防止し、社会の公正を実現します。(略)

昨今、不法入国者や個人IDの二重登録問題の増大を背景に、中南米・アジア・アフリカなどの新興国を中心に、国家安全保障における厳格な本人認証技術として、指紋システムの導入機運が高まっています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100528/214656/

 「内務省は、具体的な使い方をあまり教えてくれないんですよ」。そう冗談交じりで話すのは、NECの海外営業本部アフリカ担当の高木直由グループマネージャだ。NEC南アフリカ政府に、国民を管理するための指紋認証システムを納入している。データベースの規模は7000万人。紛れもなく、世界最大級の指紋認証システムである。

 当初は4500万人規模のデータベースでスタートしたが、今では南アフリカの人口をはるかに上回る規模になった。資源ブームで流入する移民を管理するのにも使われているからだ。
NEC南アフリカ政府に提供している指紋認証システム

 ほかの国でも空港や警察などで指紋認証システムが利用されている例はあり、シンガポールでは電子パスポートにも利用されている。しかし、国民を管理するためにこれほどの規模で指紋認証システムが利用されているのは、世界でも稀である。
公共サービスも携帯電話の契約もすべて指紋

 指紋が登録されているのは、16歳以上の国民に発行される「IDブックレット」という手帳。IDブックレットを政府が発行し始めたのは、アパルトヘイト終結後、国民が等しく公共サービスを利用できるようにするためでもあった。

 南アフリカでは、各種公共サービスを利用する際や、自動車購入からビデオのレンタル、携帯電話の契約まで、このIDブックレットが必要になる。
(略)

お隣韓国も、そうだっけかしら。
んで、例えばこういう国では「遺体が見つかったが、身元不明のまま」となることも稀なんではないかしら。そりゃそうだよな、指紋でわかるんだもん。
何にも連絡が取れなくなった、戸籍上は存在する高齢者のBさんと、某県の山中で見つかった身元不明の遺体がイコールであると指紋やDNAで分かれば・・・一人の「非実在高齢者」は解消される(※実際のとこ、最近は認知症ぎみの高齢者が突然いなくなるというパターンもある。近くが山だとか海だとか、そういうこともあるわけで、徘徊し、力尽きても発見できず・・・ということが推測される例は多い)


つーたってだな。
お上が国民の指紋をすべて把握して、管理に使う、というのがいやーな気持ちの人はそりゃ多いっしょ。当分日本では、実現することはあるまいと思うし、例の「指紋押捺」も在住外国人、一時入国外国人への適用がしばしば問題になっている。一方で、たしか曽野綾子氏だったと思うが「私は行政に、自主的に指紋を登録した(※そんな制度があるのか分からないけど)。私は危険な地域に行くことが多いので、万が一の時にはスムーズに身元確認をしてほしいという意思の表明だ」という一文を読んだ記憶がある。たしかに曽野綾子は、そこらへんのハードボイルド作家やジャーナリストより、危険な地域に直接出向いている(十字軍笑)ので、そういう考えを持つにいたっても不自然じゃない。

要は「あなたの、わたしの、彼の身元が十分に把握できます」ということを行政が言うときは、それは間違いなくゼロサムゲームであって、メリットもデメリットもある。どのへんまで行政が完璧に把握するべきか、というのは「どのへんまで我々が行政に把握させるか」の裏返しである。故人の年金詐取は取り締まるべきだろうが、ひょっとして「生きてるか死んでる河から無い人がある程度存在している」というのは、のみこむべき社会の「遊びの部部分」なのかもしれない。
そう、感じたりしたのでした。

行政と情報の関係を長年追う斎藤貴男氏は・・・

実は最初に紹介した朝日新聞の記事は、ネットではなく紙のほうだと「ジャーナリストの斎藤貴男さんの話」がついている。
未読の皆さんのために写してあげやう。

ジャーナリストの斎藤貴男さんの話
今回のようなケースが起きた背景に、家族の関係が希薄になり、高齢者が孤立するような社会状況がある。だが、政治は家族間のコミュニケーションが深まるような社会を作る努力をするべきで、自治体が一軒一軒、安否の確認に介入するような監視をするべきではない。完璧にやろうとすれば、国民一人ひとりにICチップを埋め込んで監視せよということになりかねない。民生委員の見回りを増やすなど、地域で支えるような形の方が望ましい。

えーーー。「政治は家族間のコミュニケーションが深まるような社会を作る努力をするべき」「民生委員の見回りを増やす」が処方箋というのは、正直がっくりだなぁ。まあそれに代わるものがあるかというと無いんだけどね。でも「・・・という社会を作る努力を」は抽象的だよなあ。