http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100724-OYT1T00088.htm?from=y10
著書で恨まれ?村崎百郎さん自宅で刺され死亡
作家の自宅に押しかけて殺害したとして、警視庁練馬署は23日、横浜市青葉区の無職の男(32)を殺人容疑で現行犯逮捕した。
発表によると、男は同日午後5時50分頃、東京都練馬区羽沢2、村崎百郎のペンネームで活動する作家の黒田一郎さん(48)方で、黒田さんの腹などを包丁で二十数回刺して殺害した疑い。
同署幹部によると、男は、黒田さんの著作を読んでいたといい、調べに「本を読んで恨みを持った」などと供述している。男は精神疾患のため通院中で、事件後、「人を刺した。捕まえて下さい」と110番していた。事件当時、同居中の女性漫画家は外出していた。
黒田さんはサブカルチャー雑誌などに執筆し、近年は評論家の唐沢俊一さんとの共著「社会派くんがゆく!」シリーズを刊行していた。
(2010年7月24日00時53分 読売新聞)
現在、報道機関が現行犯逮捕者を匿名にしたほか「警察は刑事責任能力を慎重に調べている」と報じるメディアもあるから、精神疾患がもたらすまことに不幸な、しかし犯罪とはまた別の事件の可能性もある。
ただ、かりに刑事責任能力が成立して、現在の供述に間違いないと仮定したら、書いたもの、文章が原因で殺された、少なくとも言論人が殺されたという点では「テロ」なのでしょう。
見出しに取った「約20年ぶり」とは、いまだに動機は不明だが、有力な疑いとして文学書の翻訳出版を理由にイスラーム過激派がテロを起こした、と強く推定される五十嵐一氏の殺害(1991年)のことを指している。そこからさかのぼればもちろん、1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件がある(他にも、近年の事件があるかもしれないがご容赦を)。
「村崎の本は”鬼畜本”を自ら名乗るサブカルじゃないか」「常識や良識を逆なでする低俗本じゃないか」というようなことを理由に、上の事件とは違う、と言い出すような人はいないと信じる。
しかし、本人や親しい人にとってみれば、行為者に刑事責任能力のない「不幸な事故」であっても「言論テロの犠牲」であっても、命が失われたことにはかわりがないだろう。
お悔やみを申し上げます。
- 作者: 唐沢俊一,村崎百郎
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唐沢氏の追悼文
http://www.tobunken.com/news/news20100724004748.html