本日の毎日新聞の名物コラム「発信箱」にて、電子書籍と出版物の運命を、新見南吉「おじいさんのランプ」に触れながら語っていた
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20100721ddm004070209000c.html
新美南吉の童話「おじいさんのランプ」を読んだ。先日、東京国際ブックフェアの基調講演で、ノンフィクション作家の佐野眞一さんが紹介していた。日露戦争のころ。身寄りのない13歳の巳之助が一念発起、ランプを売り始めた。当時珍しいガラス製の明かりは飛ぶように売れた。「畳の上の新聞を読める」がうたい文句。でも、巳之助は字が読めなかった。そこで区長に教えてもらう。ところが、村に電気が引かれ電灯をつける家が増えて……。
講演のタイトルは「グーテンベルクの時代は終わったのか」。佐野さんは「電子書籍元年」といわれる今年、紙の本のあり方を問うていた。この童話、アップル社の携帯端末「iPad」をさわりながらみつけて読んだという。ランプが「紙の本」、電灯は「電子書籍」に置き換えて読める…
いや、奇遇ながら拙ブログでも、この話と電子書籍(&電気自動車)について絡めて紹介していたんでね。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100210#p3
やっぱり、
しみいるよなぁ。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/635_14853.html
・・・・ランプは、その頃としてはまだ珍らしいガラスでできていた。煤けたり、破れたりしやすい紙でできている行燈より、これだけでも巳之助にはいいもののように思われた。
このランプのために、大野の町ぜんたいが竜宮城かなにかのように明かるく感じられた。もう巳之助は自分の村へ帰りたくないとさえ思った。人間は誰でも明かるいところから暗いところに帰るのを好まないのである。(略) 巳之助は今までなんども、「文明開化で世の中がひらけた」ということをきいていたが、今はじめて文明開化ということがわかったような気がした。・・・巳之助はお金も儲かったが、それとは別に、このしょうばいがたのしかった。今まで暗かった家に、だんだん巳之助の売ったランプがともってゆくのである。暗い家に、巳之助は文明開化の明かるい火を一つ一つともしてゆくような気がした。
・・・「何だやい、変なものを吊したじゃねえか。あのランプはどこか悪くでもなったかやい」
と巳之助はきいた。すると甘酒屋が、
「ありゃ、こんどひけた電気というもんだ。火事の心配がのうて、明かるうて、マッチはいらぬし、なかなか便利なもんだ」巳之助は、今になって、自分のまちがっていたことがはっきりとわかった。――ランプはもはや古い道具になったのである。電燈という新しいいっそう便利な道具の世の中になったのである。それだけ世の中がひらけたのである。文明開化が進んだのである。巳之助もまた日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。
「わしの、しょうばいのやめ方はこれだ」
それから巳之助は池のこちら側の往還(おうかん)に来た。まだランプは、向こう側の岸の上にみなともっていた。五十いくつがみなともっていた。そして水の上にも五十いくつの、さかさまのランプがともっていた。立ちどまって巳之助は、そこでもながく見つめていた。
ランプ、ランプ、なつかしいランプ。
やがて巳之助はかがんで、足もとから石ころを一つ拾った。そして、いちばん大きくともっているランプに狙(ねら)いをさだめて、力いっぱい投げた。パリーンと音がして、大きい火がひとつ消えた。
「お前たちの時世(じせい)はすぎた。世の中は進んだ」
と巳之助はいった。そしてまた一つ石ころを拾った。
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んで、この話は技術の進歩で自分の商売が立ち行かなくなりつつあるという業界への幅広い慰めになるので、どこかでドラマ化してくれないかなあと思いました。
既に著作権フリーだしさ。
主役のおじいさん、だれにしたらいいかね。おひょいさんとかかな。
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街角の写真屋さんなんて、本当にデジタルカメラが出来て以降もよくぞ踏ん張っているよ、と思うもの。