UFCを通じてアメリカの医療問題、人種問題、経済問題…などを知ることも多いのだが、これもなんともいえず大きく重い問題だ。
http://www.mmatokyo.com/archives/1388
空港について最初の日4時間、次の日2時間入国検査…ホテルにやってきていろいろな質問をしてきたんだ。入国拒否と脅されたよ。クロアチア大使館員がオタワから緊急でやってきてくれたし、UFCも入国関係が得意な最高な弁護士を雇ってくれたんだ・・・」
「彼らはユーゴスラビア時代に私が関与していた軍事、警察の仕事について注目していたんだ。彼らの多くは1993から1994にかけての私の軍事行動に対して重大な関心を寄せていたんだ。(略)
彼らは私が民間人への拷問に関与していたか、コマンドラインの名前、指揮官の名前を尋ねてきた。そして戦争後数年在籍していたPort ATJの活動内容も尋ねてきた。
ユーゴ内戦。
わたしがこのブログで何度紹介したか分からない

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
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とくにヨーロッパでは、ナチやスターリニズムの反省からもはや生まれないだろうといわれたむき出しの暴力が再び登場したとの衝撃も大きかったと聞く。
ミルコがその内戦時代を経験したことはだれもが知っているし、警察の仕事は”クロコップ”のふたつ名が示すとおりだ。
だが、「その警察の仕事が内戦時の残虐行為と関係したのではないか?」なんて発想は無かったわ。
ミルコは米国でもイギリスでもオーストラリアでも戦っている。カナダでこういう扱いを受けたのは「人道大国」を自認するカナダらしさか、と納得するが、逆に言うと、人道大国なるものは、世界の人気者のクロアチア人が入国するときに「やつはユーゴ内戦の残虐行為に関係しているんじゃないか?」と、そういう意識を働かせるという、そういう思考回路がないと務まらないということだ。それが例えば、当該国との関係悪化を生んでも。
なかなか、なまなかに出来るものではないようだ。
「戦争広告代理店」では、現地の国連平和維持活動の指揮をとったカナダ出身の将軍マッケンジーがいたことが記されているから関心が高いのかもしれない。
そしてミルコ・クロコップ・フィリポビチはこう語る。
彼らは確認したい事の人物名リストを差し出してきた。でもその要求に応える事はしなかった、それは尊厳に関わる事だからだ。もしこの事で入国拒否になったとしても仕方ないと自分に言い聞かせた
カナダ政府が、祖国クロアチアの内戦において、戦争犯罪に関わるとみなした人物の情報を聞こうとする(それに根拠があるのか無いかは知らない)。それに対して回答を拒否する。その結果、数千万円の仕事や、築いた名声が失われても仕方ない・・・
このミルコの振る舞いが正しいかどうか。
それはともかく、良くも悪くも今の日本人は、右から左までこんな形で「愛国」を試されることは無い。