http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20100427
によりますと、東京都がおもしろい…おもしろがっちゃいけないのだろうが、興味深いドキュメントを発表した。
例の「非実在青少年」問題で、東京都がFAQを発表しています。
詳細はリンク先で。
むかし
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS)
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サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 下巻 (BIG SPIRITS COMICS)
- 作者: 相原コージ,竹熊健太郎
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不健全か?」「どんなポーズが不健全か?」を深刻に議論するというネタがありまして、女性幹部の1人がいきなり「イナリズシはわいせつです」とか言い出すという・・・まあいいや、詳細は各自読破。
それはいいんだけど、当初のニュースにも出てきたときにもわからんかったが、文書にも明示してあるね。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/04/DATA/20k4q500.pdf
今回の改正は、漫画などのうち、18歳未満のキャラクターに対する強姦(レイプ)や近親相姦(親子や兄弟姉妹間のセックス)など、実社会では社会的に許されない悪質な性行為について、読者の性的好奇心を満たすため、あたかも楽しいこと、社会的に許されることであるかのように描くような漫画などは・・・
さて何度もここでは、「床屋法哲学」を語ってきたが、いまだにこのテーマわからへんのよ。「レイプは悪」、これは議論の必要も無い。では後者は?
もちろん両方が判断力ある成人で、合意があった上でさ。というか2年前に、まったく同じ趣旨のエントリーを書いているから、それを読んでもらえりゃ手っ取り早い。
■これをどう近代の法理論(他者危害原則)で裁けるのか
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080410#p3
いや、答えはルール設定次第では簡単で「伝統」とか「人倫」とか「神への畏れ」を持ち出していいということなら1秒で決着がつく。東京都の発想のようにね(※もちろん実際の行為と、それをフィクションで描くことの是非は別もの!!為念)。
でも、そういう保守主義とは距離を置く系列の思想では?? 他者危害の原則から、そうでない行為に自由を認める立場からなら? けっこう難問と違うか。
少なくとも、そういう立場から議論を組み立てようと思ったら素人の私ではおっ手あげです。
これ、アメリカのがっちがちのリバタリアンに聞いたらどう答えるのかなぁ・・・?
また、「罰しない(放置する)」と「認める(制度に加える)」の違いというのも考える。
リンク先で紹介したオーストラリアの例では「違法」「警察が監視」と書かれているからそうなのだろう。ただ、いきなりふん捕まえるということもないようだ。
いまどういう法律が、世界ではこの問題に対して規定されているかは知らないけれど、日本ではたぶんこれに類する行為の罰則は無いわな。
その一方で、たしか何親等とかの範囲では結婚という、お上が定めた”制度”ではそもそもそういう関係の人たちは除外されている。たぶん世界中でそうだと思うが、たとえばその認めない範疇だって勧告や中国と日本や中東は違う(たとえばいとこ婚)。文化ソータイ主義ってやつで、いい悪いも無い。
ただ・・・「われわれが結婚できないのは不平等だ、差別だ。すなわち憲法違反だ」という議論は可能か?だ。
もちろん同性婚も視野に入る。
日本ではベアテ・シロタ・ゴードンという偏狭な人が結婚を「両性の合意」と定義したのでそもそも憲法が同性婚を認めない(のか?)と思うのだが、むしろ憲法的には近親婚のほうを禁止する規定が無いかもしれない。
そういうわけで、シミュレーションとして「きょうだいでの結婚を役所が認めないのは憲法違反」というような訴訟があったら・・・どんな展開になりますですかね。
ベアテさんのご意向はどうだったんだろう。
最初のエントリの「占領軍」ネタとつながったところがイカス。いや偶然だ。
リベラル憲法学者もこの問題は「理屈抜きで禁じていい」説?
重要なのでここは、過去エントリから抜き出すよ
(略)…いま一番、「敢えて社会が困難やリスクを負ってでも、自由主義に基づいた近代社会を選ぶ」という姿勢をとるラディカルな思想家は樋口陽一氏だと思う。
この人が「個人と国家」という新書ではちょっとだけこの問題に触れているのだが・・・ちょっと別の文脈の中での話で
「分かりやすい例でいえば近親相姦(インセスト)タブーでしょう。なぜいけないのかという説明抜きでとにかくそれはいけないとされ、だんだんいけない理由が「いけない」ということを言う方にも理解できるようになる。言われる側もその合理的な思考を受け入れることができるようになってくると、今までタブーとされていた規範はそれなりに重大な理由があったのだということがわかるでしょう」(223p)
たんにわき道の話なので、これだけですましている。少々残念だな。
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よく考えたら、やっぱり樋口氏がこれを肯定するのは全体の思想からみるとへんだなぁ。
宮台真司もしかり。この本ね。
宮台真司これが答えだ!―新世紀を生きるための100問100答 (ライターズ・デン・ブックス)
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こんど機会があったら「おおやにき」(大屋雄裕氏のブログ)にでも質問してみるか。
まあやっぱり「伝統大明神」のお力によって正統性の根源とするしかない、というのがとりあえずの私の結論。もしくはベアテさんが憲法草案に「近親の間を除く両性の・・・もしくは同性間の・・・」と書いてくれればよかったのに。
ぼくにとってはこういうのが「SF」。
SFは、その設定を利用して日常の価値観をひっくり返し、別の視点で物事を見せるのも・・・(それが無きゃダメ!とかじゃないが)ひとつの魅力。
そこに特化した、奇妙な味のSFとして、藤子・F・不二雄の大傑作
気楽に殺ろうよ: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 2 (2) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
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今回のエントリも、この作品の主題となっている【人間社会で伝統となっている部分を「なぜ?」「どうして?」と突き詰めていくことで出てくる説明のつかなさ】を追っているという点では同じ系譜。作中で出てくる「殺人肯定」「食欲否定(羞恥)」「おおぴらな性行動の肯定」などのむちゃくちゃながらもSF的な見事さ!!だから、おこがましくも、この文章も「藤子・F・不二雄チルドレン」の産物であると宣言させてもらう。
さっきも書いたように、突き詰めていくと東京都条例はともかく(笑)、米国での同性婚のようなホット・トピックにして当事者にとっては真剣、深刻なものにもつながるような話で、それをSF扱いするのも申し訳ないが、実際にそれが興味の源泉であることを隠すのも気がとがめる。そういう興味の基に思考をめぐらせたわけだ。
でもホント、これを快刀乱麻に説明をつける理論ってあるのかね?
(※為念だが「遺伝病のリスク」云々が少なくとも現代社会において「禁じる」ことの合理的理由にはならないことはいうまでも無い。)