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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

火山をミューオンで透視して噴火を予知する?マグマ帝国の野望。

これは諸君!最終号に掲載された記事だから2か月以上前の話だが、咀嚼するのに時間がかかったのだ。(というかまだ分からないんだが)。竹内薫氏の連載していた「サイエンティスト異能列伝」で、取材対象は東大地震研究所の田中宏幸氏。ゴジラでもつくりそうな名前だな。そういえばゴジラ85は三原山を爆発させ、溶岩にゴジラを飲み込ませて封印したんだっけ。
と、さっそくわき道にそれでしまったがまずサマリーを書いておこう

・火山を予知する技術を田中は研究している
ミューオンを使う
・火山をそれで透視する
・なかの様子がわかる

以上。以下、適宜引用しながら進める。

田中の元の研究分野は
「電子と陽電子がくっついたポジトロニウムを低温、高密度でナノ物質に詰め込んでやり、そこからポジトロニウムが外に出てくる様子を見てナノ物質の構造を推測する」(ママ)。

だった。さすがに竹内氏も分かりやすく説明していて、
穴の形を調べるため、ガスをパンパンに詰め込む。それが勢いよく噴出する、その様子を計測すれば穴の形状が分かる、というものだという。
だがその後いきなり「私は2004年までミューオンの研究をやってきた」とか書いてる。ポジトロなんとかがミューオンなのか、もう一回研究分野を買えたのか分からないが、とにかくそうだ。


構成めちゃくちゃだが、このへんでミューオンについて語る(写す)。
素粒子のひとつ
・電子の200倍ほどの重さ
宇宙線(主に陽子)が大気とぶつかるときに大量に生成される
・つまり、常にわたしたちの身体に降り注ぎ、通過している
・そう、ものをすり抜けるのだ。手のひらを1秒1個のペースで通過する


で、このミューオンをうまく使うとものが透視できちゃう。「ルイ・アルバレ」という伝説の男が、これで「ピラミッドをラジオグラフィー(=レントゲン撮影のこと・・・らしい)しよう」とバカなことを言い出し、それを聞いた日本の永嶺謙忠というこれまた伝説の男が「その技術なら、火山の透視もチョーできなくね?」とか言い始めた。
だから連中を野放しにするなとあれほど。


余談ながらこのルイ・アルバレが「小惑星衝突による恐竜絶滅」の提唱者らしい。そういえば僕が本当に小さい子供のころは小惑星衝突はマイナー論だったねー。その数年後、長編ドラえもんでも扱われる有力説になったのだが。

本道に戻るが、なぜミューオンを使うのか。それはその技に由来する。


世に「レプトン六人衆」と呼ばれる影の軍団があるのはご存知の通り。

まぼろしニュートリノ
計算の電子
くずれのタウオン
そしてミューオン


のこりの2つは書いてねえ(ウィキペによると「レプトンは、電荷を持つ電子・ミュー粒子・タウ粒子、そして電荷を持たないニュートリノである電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの6種類」)


・このほかクオークも6種類あるのだが「透視に使うには『素粒子間の強い相互作用』があるためクォークは問題外」で予選落ち。査定試合からやりなおせ。


ニュートリノはなんと、貫通力がありすぎてダメ。山なんかは簡単に貫通してしまう凄腕スナイパーだった。
そういえば最初、この記事を斜め読みしたとき、私はニュートリノミューオンをごっちゃにしてしまい、某専門家に「今はニュートリノで火山の噴火を予知するらしい」と言った。そのときに「はぁ?」という反応だったのは成る程これか。


・電子は豆粒どチビなので、厚さのあるものをくぐるとエネルギーを失ってしまう。そんなモヤシにプロレスはムリ、ムリ!!


・タウオンは一番才能豊かだが、キルヒアイスのようにすぐ死んじゃう。生成すると、惜しまれながらあっという間に消滅。



その結果、ミューオンは中庸・温厚で、貫通力が強すぎず弱すぎず、普通に火山を透視できるということで選ばれた。


その後の苦闘は省略するが、理論はそれでいいとしても技術的な困難というは相当あった。
写真乾板を使うと現像時間やら感光のリスクやらがあったりとかだが、デジカメを使うことでのコストやリスク、確実性、速報性は格段に進歩した。
やはりどんな新しい試みも、理論屋・実験屋・技術屋の三位一体が無いとうまくいかない。


現状と未来

・イタリア、フランスの学者も興味津々。物理学者のコネクションと地震学者のコネクションの融合が世界中でおきつつある
・今、一山2000万円あれば相当なレベルで透視できる(補正予算付けて今年中にやっちゃえよ)
CTスキャンみたいに数箇所から透視すると、山の中が立体的に分かる。今は浅間山は、東側にしか検出器が無いが、北側におく計画がある。三次元的に浅間山が分かる(補正予算で以下略)
・原子炉の内部も透視できる
以下引用

原子炉の安全性は日本のエネルギーの安定的な供給に欠かせないが、ミューオンによる「レントゲン撮影」ができれば安全性が飛躍的に高まるに違いない

・製鉄所で稼動中の溶鉱炉の中を透視できる (既に新日鉄はそれに成功しているが、機密保持のため書けないという)
・ピラミッドも、今の機材ではまだ完全な成功はしていない。だが多結晶のソーラーパネルを使った、空間分解能が高い新検出器がまもなく登場する。これが完成した暁には、ピラミッドなど敵ではない(かつて仁徳天皇陵と呼ばれた墓を投資すればいいのに)


というわけで、ミューオンはすごいのでした。

だが・・・上で透視しすぎてしまうと言われた「まぼろしニュートリノ」だが、それを付けねらう新たな敵”アイスキューブ”の魔の手が迫っていることには、気付くよしも無かった・・・・


つづく
(ホントに後半はこのことが書いてあるんだが、それはあとで)

笑っちゃった点

素粒子論って以前からずっと「すごいけど実際には生かされないもの」の典型っぽく扱われてきたじゃないですか。
そんなことは本当はないんだけど、イメージ的に。
ノーベル賞学者が受賞記者会見で「なんの役に立つんですか?」聞かれるほどだった。
それがいきなり、応用してやろうじゃねぇか、となったら噴火予知にかかわるって、極端すぎて(笑)。

まだほんとうにドンぴしゃりの予知成功の実例があるのかどうかわかりませんが、とにかく面白いものです。