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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

本日、土方歳三没140周年【敗将列伝】(1)

http://d.hatena.ne.jp/fullkichi1964/20090510
による。
日付までは覚えていなかった。

同サイトでも紹介されているが、土方と言えば史実以上に

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)


である。
私はこれを司馬の最高傑作とは位置づけていないが、無類の面白さにはまったく疑いを挟まない。

これも上にあるが、もう少し長く紹介しているサイトから、ちょっと抜粋しよう。

歳三はもはや白兵突撃以外に手がないとみた。幸い、敵の左翼からの射撃が不活発なのをみて、兵をふりかえった.
 「おれは函館へゆく。おそらく再び五稜郭には帰るまい.世に生き倦きた者だけはついて来い」
 (略)
 ただ一騎、歳三だけがゆく。悠々と硝煙のなかを進んでいる。
 それを諸隊が追おうとしたが、官軍の壁に押しまくられて一歩も進めない。
 みな、茫然と歳三の騎馬姿を見送った。五稜郭軍だけでなく、地に伏せて射撃している官軍の将士も、自軍のなかを悠然と通過してゆく敵将の姿になにかしら気圧されるおもいがして、たれも近づかず、銃口をむけることさえ忘れた。
 歳三は、ゆく。
 ついに函館市街のはしの栄国橋まできたとき、地蔵町のほうから駈け足で駈けつけてきた増援の長州部隊が、この見なれぬ仏式軍装の将官を見とがめ、士官が進み出て、
 「いずれへ参られる」
 と、問うた。
 「参謀府へゆく」
歳三は、微笑すれば凄味があるといわれたその二重瞼の眼を細めていった。むろん、単で斬りこむつもりであった。
 「名は何と申される」
 長州部隊の士官は、あるいは薩摩の新任参謀でもあるのかと思ったのである。
 「名か」
 歳三はちょっと考えた。しかし函館政府の陸軍奉行、とはどういうわけか名乗りたくはなかった。
 「新選組副長土方歳三
 といったとき、官軍は白昼に竜が蛇行するのを見たほどに仰天した。
 歳三は、駒を進めはじめた。
 士官は兵を散開させ、射撃用意をさせた上で、なおもきいた。
「参謀府に参られるとはどういうご用件か。降伏の軍使ならば作法があるはず」
「降伏?」
 歳三は馬の歩度をゆるめない。
「いま申したはずだ。新選組副長が参謀府に用がありとすれば、斬り込みにゆくだけよ」
(後略)


数年前、この種の司馬作品の名場面がネットにあるか探したが、このときはみつからなかったな。
ネットの情報蓄積は、やはり等比級数的に拡大しているのだろう。

「ちがう」
歳三は、目をすえた。時勢などは問題ではない。勝敗も論外ある。男は、自分が考えている美しさのために殉ずべきだ、と歳三はいった。