今回のゴング格闘技は、修斗20年特集の一環として「VTJ前夜の中井祐樹。」という特集をしている。執筆者は「力道山はなぜ木村政彦を殺さなかったのか」を同誌で連載中の増田俊也氏。
なんと増田氏は北大柔道部で直接の先輩だったのみならず、そもそも彼が同部に入部するときに大きくかかわっているのだ!(詳細は同誌参考)。VTJも実際に会場観戦し、膠着状態に野次を飛ばすプロレスファン?と言い合いになったりしているという(花くまゆうさくもそんなこと書いてたね)
すぐれた体験型ノンフィクションを読むとき、たとえば「戦艦大和ノ最期」で「あの場に、あの地位で、あの人がそこにいたことが信じられない」という声が出る。ある意味、カエサルはガリア戦記を書くためにあの征服を行ったようなものかもしれない(笑)。
そんな感じで、飛びつき十字のデモンストレーションで中井に「入部します!」と言わせた人間が、現在作家になっているというのは何たる僥倖だろうか。
今回の「中井祐樹物語」だが…自分に英語力がないのがマジメに悔しくなったな。翻訳して世界のMMAファンに読ませたい。
ここだけ、紹介したいと思います。
長く北大柔道部を指導していた佐々木洋一コーチが、中井が短期間で強くなった秘密を私に教えてくれたことがある。
「夜の練習が終わると、練習熱心なやつらは居残って技の研究とか腕立て伏せ千回だとかウエイトトレーニングとかやってるだろ。ああいうことやってる連中は強くなってるよな、みんな。努力すれば当然強くなる。
だけどな、中井はそんなことしてなかったよ。だからその強くなった連中以上に飛び抜けて強くなったんだ。」「何してたんですか?」
「道場の真ん中で大の字になって一時間くらい動けないで天井仰いでたんだ」
「………?」
「それくらい乱取りで全力を尽くしてるんだよ。一本一本の乱取りでいっさい手を抜いてないんだ。だから研究とかウェイトとかやる余力が残っていなかったんだ。俺は二百人近く選手を見てきたけど、そんな選手は中井しかいなかった」
このへん、他のフィクションのキャラクターづくりなんかにも応用可能な気がします