副題・SFの旗は今も翻っているか? てな感じで。
まず、前月号から「ラブロマ」作者のとよ田みのるが新連載「友達100人できるかな」を開始したのだが、そのときのキャッチコピーがに「SF大作!」みたいな感じだった。
この時点で「うわっ!やばっ!!」と(笑)。
いや冗談じゃなくてね、今は「SFって言ったら、売れるもんも売れなくなります!ここは黙って、ホラーだとか恋愛小説とか言ってですね、読者をだまして買わせましょう!!」と営業サイドから強烈に言われるんだそうな。パラサイト・イヴが典型。
この作者も、こんな歴史がある。
ウィキペディアの「とよ田みのる」
・・・最初はますむらひろしなどの影響を受けたSF、ファンタジーを多く描いていたが、応募しても落選し続けたので『ラブロマ』で思い切って路線変換を図った。
そんなご時世に、みずから「SFである」とカミングアウトして始まったのが「友達100人できるかな」。
宇宙とか天界とかに、地球の生殺与奪権を握る存在があり、地球を滅ぼす(征服する)べきかどうかを、とある人間をサンプルにして決定。それに偶然、平凡な主人公が選ばれ・・・・
という設定、けっこういろんなところで見るんですが元ネタは何なんでしょう?フレドリック・ブラウンかな?
日本で広く知られたのが手塚治虫の「W3」だというのは間違いないのだろうが。
私が知っているのは藤子・F・不二雄の「ひとりぼっちの宇宙戦争」。
- 作者: 森下一仁,加藤直之,藤子・F・不二雄
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これなんか、制作費も掛からないしよっぽどドラマ化向きだと思うけどね。主人公は「たっち」とか双子を使えばいいだろう(笑)。
そしてよく考えたら「うる星やつら」に続くわけか。
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内容はというと、(※うろ覚えです)その地球を滅ぼせるんだか支配できるんだかが可能なパワーを持つ宇宙人が「地球人のコミュニケーション力を試す」とかいう理由で、ある平凡な男性に「友達を100人つくる」ことを課題として課す。成功すれば地球は守られ、失敗すれば・・・
そしてその男性は、自分の子供時代に彼らの科学力で戻る。そこから友達をつくることになるのだが、何しろ一度は大人を経験しているのでどうも同年代のコとは歩調が合いません。はたして無事、友達ができるのでしょうか??
と、いう感じのお話。「ラブロマ」はアスペルガー症候群の症例といってもあり得るぐらい、相手の感情を察することなしで、へんな論理性に基づく自己の感想・意見を述べるキャラクターを使って「愛とは?」を問うた作者だが、今回は大人の意識と子供の意識のギャップをてこに「友情」を語ろうという趣向らしい。
これは
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とまあ、こんなことを書くために公式サイトに行ったら、その名前が。
■「NETトキワ荘(仮)」
ときた。
http://members.edogawa.home.ne.jp/poo1007/
不遜な僭称か、まさにしかり、ふさわしい名となるかは今後の作者しだい。
椎名高志の「絶対可憐チルドレン」まもなくTV終了。
たしかサンデー誌上に「テレビがラストスパート!」とかうたわれていて、なんだか調べてみたらそうみたい。不人気での打ち切りなのか、予定されていたのか、予定されていても人気があれば長くなるがそこまでの人気はなかったのか、そもそも今の時分では長かったのか短かったのかも私は比較する基準がないのでよくわからない。
ただ、視聴率はよかったのかしらね。また、SFの地域をこえる普遍性というものを信じているので、「海外での人気や反響はどうなんだろう?」ということもしりたくはある。
まあ応援していたら、まず自分で見ろよという話かもしれんが、結局見ないですまなかた。
私はこの作品が(サンデーで)始まる前から椎名高志の持つ”藤子・F・不二雄の継承”という話は何度もしていて、いまさら繰り返さないけど、題材が似ているとオマージュやパロディ的に椎名氏はそれを表明する。
だから言うまでもなく、下記二作品は共通性が色濃く出てくるということで、このエントリがこの前話題を呼んだ。。
■椎名高志『絶対可憐チルドレン』と『エスパー魔美』
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20090218
・・・椎名さんは、『絶対可憐チルドレン《解禁》ガイドブック』(2008年)のインタビューで、自分が超能力の知識を得た作品として『エスパー魔美』『幻魔大戦』『バビル2世』『地球へ…』を挙げています。作品名を見てるだけでグッときます。
『絶対可憐チルドレン』は、そうした古典的とも言えるSF設定をベースにしながら、そのうえで21世紀を迎えた現在の少年マンガとして活きのよさや面白さを備えた作品です。
そうだ、「横山光輝の系譜」というのも本来たどらないといかんな。まあ手に余るのでそれは置いておいてだ。
最近読んだ、昨年発行の椎名高志最新短編集。
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初出の際に紹介した、シャーロック・ホームズとGS美神の世界が交わる二作目の作品も収録されている。
( http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050527#p3 )
ホームズが出た作品はボーナス点を300ポイントぐらいつけてしまうので公正に判断できないが(笑)、この中の別の収録作品にも藤子スピリットを感じさせる作品がある。
「TIME SLIPPING BEAUTY」という作品で、「時をかける少女」と「エスパー魔美」と「TPぼん」を合わせて3で割ったような設定。
「3で割ってとかいうなあ!まんが家が傷つくだろうが!」(by久米田康治)
いやすまん、分かりいいので(笑)。
ただ話はシリアスで、ある意味で、上の作品をさらに発展させている。
主人公は、ある凶悪殺人事件に巻き込まれて死んだ若者の幽霊だ。
ただ、その事件の解決にかかわった霊能力と時間移動能力を併せ持つ少女とその一族から、「その事件は、私たちが未来から時間をさかのぼって男を逮捕に導いたんだ」と聞かされる。
あまりのことに驚く若者だが、さらに衝撃的な事実を聞かされる。
過去に遡って未来を変え、大事件や大事故を防ぐ彼女たちだが、そこには「犠牲者が5人から2人になる程度」「大事件は防いだが、本来起きなかった小さな事件が発生する」というような、いかんともしがたい制約がある。
若者は、その「小事件」の結果、本来は死ななかったはずなのに命を失ったのだ・・・・
ヒーローを作るとき、聖書にある「99頭の羊を捨てて、1頭のさまよえる羊を探しに行くか?」という問いに対して、いままで圧倒的に「一頭を探しに行く」タイプがヒーローだった。だが99頭を守るのもたしかに同じぐらいの正義はある。
これを扱うときはヒーローA、ヒーローBの対立点にするとか、いろんな料理法があるけど、そもそもそのテーマにに挑戦するだけで個人的には拍手だ。
そしてそれが「超能力を、だれにも頼まれてもいないのに世の中のために使う」(エスパー魔美)「過去の世界へ行って人の命を救う(TPぼん)」「全部を助けられないことに傷つき、悩むが、それでもよりよくするためにがんばり続ける」(両方)・・・などの基本設定の下で描こうとする椎名高志。
藤子・F・不二雄の魂、このまま受け継ぎ続けてくれ。たとえテレビが終わっても(笑)。
しかしこのTIME SLIPPING BEAUTY、小味なドラマとかにもできる気がするんですけどね。続編とかはかけないのかな。
彼らがいる。
SFは、滅びない。
ところで椎名高志ブログを見ていると。
http://cnanews.asablo.jp/blog/
椎名氏はいろいろと作品に対して、製作段階で意見を述べている様子だ。
実は格闘技界隈に、長年アニメーション業界で活躍した経験がある、ブロガーがございまして、以前聴いてみたことがありました。
「椎名高志のように、原作者ってやっぱりいろいろと意見をいうもんなんですか」
と聞いたら
「人による、としか言いようがないです」
とのお答えだった。もう少し詳しく個人名を聞けばよかったかな。
そういえば以前「日本オタク大賞」で
「水木しげるはいくらテレビで作品が改変されてもまったく気にしない。あれもいかがなもんか。」
「手塚治虫は手塚治虫で、ほっとくと『俺がつくる!』と言い出す(笑)」
「二人を合わせて二で割るとちょうどいいんだが(笑)」
というようなやり取りがありました。
「二で割ってとか言うなあぁ!!」
SF復権は、この春、ここが担う。
http://doraeiga.com/2009/index.html
■2009年 『映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』 公式サイト