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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

運命とは、レスリングとは、プロレスとは…認知症のバーン・ガニアが人を投げて「殺人」か。

OMASUKIFIGHTではすでに報じられていたが、共同通信までが記事にした。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/news/20090227k0000m050015000c.html

プロレス:認知症バーン・ガニア氏を捜査 殺人罪適用か


 25日の米ミネソタ州の地元紙などによると、60、70年代にプロレスの人気選手だったバーン・ガニア氏が、養護施設内のトラブルで殺人の疑いを持たれている。報道によると、1月末に施設内で97歳の男性が転倒し、腰などを骨折。合併症で2月14日に死亡した。遺族は83歳のガニア氏が男性を床に投げつけたと話しており、警察では殺人罪が適用できるか調べている。当時、男性、ガニア氏とも認知症の治療中だった。ガニア氏は、プロレス団体AWAを起こし、中心選手として活躍した。(共同)

認知症といっても症状はさまざまだから、責任能力はあるのかもしれない…だが、常識的に考えて97歳の老人と口論や何かになるとは考えにくい。推測だが、記憶と認識の混同で、レスリング・プロレスというコンタクトスポーツの記憶がフラッシュバックのようになって、こういう行動を起こした・・・というのも、可能性としてはあるのではないか。


OMASUKIFIGHTの既報にはこうある。状況が変わったのだろうか、遺族と警察の判断は別なのだろうか。
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-431.html

・・・死亡した患者の家族は、「このようなことをした人を責めることは出来ない。ガニア氏は自分のしていることをおわかりになる状態ではない。大きな問題を抱えてしまった彼の家族が気の毒だと思う」とコメント。


ガニア氏は破産したという話を以前、流智美が書いていたが、認知症に富はあまり関係ない。財産があればもちろん、看護婦とか医者とかはそれなりに充実しているだろうが、それでも周辺の苦労や悲しみは、本質的には同じだ。


あえて、不謹慎な話をさせてもらうが…もし、この投げられた人が「あの人は今」を取材しに来た無遠慮なマスコミの一人で「頭にたんこぶをこしらえました、おおイテテ」とか、かるく肋骨にヒビが入っちゃった、ぐらいだったら…ほんとに不謹慎だが、敢えてそれは「プロレス伝説」のひとつと位置付けて、「老人ボケ(※最近は使わない)した元チャンピオンが、現役時代を思い出して施設で大暴れ! This Is プロレスラー!!」なんていう文脈で位置付けることもできたかもしれない。、それでガニアも、もって瞑すべし、となり得た話だった(まあそういう年代の人を投げれるかはわからないが)。
それが、本当に不運なことに体力、回復力の極めて少ない97歳の老人が被害者なことで、ここまでの悲劇になってしまった。
それが悲しいし、くやしい。


実は中島らものエッセイの一編だったと思うが、同じようなシチュエーションで、認知症の人が「かつての合気道の達人」だったという話を紹介していた。なにしろらも噺だから本当なのかどうかを問うのもヤボなのだが(笑)、筋力を使うレスリング以上に危険?な合気道の奥義で、お弟子さんたちならともかく、街に出ては本当に当たるを幸い手当たり次第に誰でも投げ飛ばして、しかも本人はよう状況が分からんという・・・・
私はその時、その風景を思い浮かべながら『すげえなこりゃ、映画化したら「ターミネーター」みたいになるなあ…完全にボケてて、眼に入ったもの誰でも投げ飛ばす合気道の達人、こりゃスペクタクルだ』と笑い転げたものだった。
それが現実になると、こういうものだ。今回被害に遭われたご老人のご冥福をお祈りする。


くさか里樹ヘルプマン!」11巻を推薦

認知症については、最近「ヘルプマン!!」がこのテーマを扱っていて、今週発売されたイブニングでその章が完結した。
同作では何度も認知症については出ているのだが、今回は、かつて高い社会的地位があり、財産もそれなりにあって充実したセカンドライフを送っていた老人が、突然、部分的にこの認知症の症状が始まり、それが進行していく様子を多く”一人称”の形で書くという手法に挑戦している。

これが、ものすごいサスペンスと恐怖感をもたらすものになっていて、また不謹慎だが、本当に「ホラー・サスペンス」として緊張感を持って読むことができる(そういう読み方をしても、本質的なヒューマニズムへの訴えは消えないからそう言っているのだが)。
本人はボケたことを認めたくなく、何やらかにやら合理的な説明をしようとしたりごまかしたりして、それが周囲との軋轢と疑念を増幅させていき・・・と続く。

この作品を「読むとしんどいものがある」とか「漫画読むときまで重い気分になるのもねえ・・・」といって避ける人も多いのだが、知識を得る目的だけでも、また上にあるようにホラー作品を読んでみるか、という感覚でも今回完結した「認知症進行編」は読んだほうがいいと思う。自分の将来にも、家族の将来にも、ほんの少しばかりの覚悟や知識が役に立つこともある。

ヘルプマン!(11) (イブニングKC)

ヘルプマン!(11) (イブニングKC)