http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20090106-OYT1T00048.htm
1月6日付 編集手帳
8年前、アフガニスタンの旧支配勢力タリバンがバーミヤン遺跡の大仏を爆破したとき、皇后陛下の詠まれたお歌がある。
〈知らずしてわれも撃ちしや春闌(た)くるバーミアンの野にみ仏在(ま)さず〉
◆人間の心に宿る憎しみや不寛容の表れとして仏像が破壊されたのだとすれば、知らず知らずに自分もまた一つの弾を撃っていたのではないだろうか、と。「皇后陛下お言葉集 あゆみ」(海竜社刊)に収められている
◆森羅万象に痛覚を研ぎ澄まし、ともに悲しみ、ときに自身の心に責めの刃をあてる。仕事という言葉が適切かどうか分からないが、「祈り」という皇室の仕事は苛酷(かこく)なものだと、しみじみ思う
(後略)
うーーーん。
アフガニスタンの大仏破壊は、ひとつのイントレランス(不寛容)を示す、象徴的な出来事であり、2001年の「911」から続く世界の混乱のさきがけであった。
だが、そこに「われも撃ちしや」という自省、自問を見るというのは……あらゆる意味で”皇族”らしくない。
厳密に言えば政治的中立性がどうこうというような問題になってくる可能性もあるかもしれんが、そんなことを超えて、これが無名人の歌だろうと、なんとも…純粋に「すごい歌」だと、思わんかね?
これを天皇陛下在位20年の記念コラムに、多くの歌から引用する編集手帳も相変わらずすごいが。
私が大嫌いな渡部昇一(笑)の中で、それでもほうと感心した指摘はいくつかあるが、「日本には『歌の前の平等』があった」というのもそれだ。万葉集その他の話だね、無名兵士も無名女性も皇族貴族も、いい歌はすべて並び、収録されるという。
無名の、一般庶民の作品に対して、純粋に質を評価して選ぶのもすごいが、皇族貴族のお偉いさんが作る歌も、別の意味で「純粋に質だけ」評価するのは難しい。
だけど、上の歌はそういう点でも、繰り返しの陳腐な表現ですまんが、やっぱりすごい。
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【参考文献】
大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード (文春文庫)
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アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
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